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episode29〜仕組まれた嘘〜


たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。

ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。

暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。



翌日から王宮内は、例の話で持ちきりだった。


ナナはいつものように、朝の日課をしたかった。


しかし、その足が進まない。

気持ちが少し重い気がした。


(あれ… 何だろう?)


そう思いながら、その日は演奏する事を諦めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その手から、何かが溢れ落ちた気がした。


気持ちと共に、何処からか隙間風が通り過ぎるようだ。


「ナナッ!? 一体どうっ…… ナナ?」


セダリアは、そう言いながらナナに駆け寄った。

朝から様子がおかしい事に気が付いてはいた。

もちろんそれは、例の事であることも。


溢れ落ちた物。

実際、ナナのその手から剪定バサミを落としていたのだ。


声は届かなかったものの、揺さぶられたその肩が揺れた事で気が付く。


「え… 」


ナナは更に、その赤く染まった手を見た。


痛みは感じない。


それよりも、あれから少しだけ大きくなった何かに気が取られていたからだ。


「ナナッ! 手を切ったの!? 止血しないとっ!」


セダリアの慌てる声が耳へと到達する。


「そう… ですね」


「ナナ… 」


(まさか… 昨日の事、気にしているのか?)


セダリアは、その痛々しくも無情な傷口を押さえながら思った。


他の庭師に救急箱を持って来てもらったセダリアは、手当てをしながら、ナナに少し強めの言葉を発した。


「ナナ、今日はもう休んで」


「え? セダさん… でも、まだ仕事が… 」


「良いから… ねぇ、ほとんど寝てないでしょ?」


「そんな事は… 」


(確かに… そうだけど)


ナナはその目の下のクマには、気が付いていなかった。


「… ふぅ… ナナはさ、昨日のリリィの事が気に… 」


「違いますっ! 絶対にっ断じてっ全く!!」


「あ… ふーん… そう…… 本当に?」


「はいっ!」


「そう… でも今日は本当に休んで? ね? 傷も痛むだろうし」


「痛みなんて… 」


「え?」


「あ、いえ。ではお言葉に甘えて」


そう言うと、痛くもない傷口にそっと触れ、ナナはピアノの無い部屋へと戻った。


(もし… そうだとしたら、一体どうすれば… )


そう思いながら、セダリアは地面に落ちた冷たくなったハサミを拾い上げた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


騒めきが起こる。


リリックは不機嫌そうに、その長い廊下を颯爽と歩いていた。


足早に進むその背中を、小走りで追いかける1人の女。


使用人達は思わずその道を開けてしまう。


例の発言により、彼女を正妃候補と見做していたからだ。


「リリック様、お待ち下さい! 今夜はお父様がわたくし達の為の、お食事会を急遽用意して下さったのです。なので… 」


「随分気が早いな」


その言葉を受けながら、やっと追いついたリリックの腕にひっつく女。


彼女の名は、カレン。

モルバード卿の息女だ。


モルバード卿は王宮御用達の貿易商だった。

彼本人の性格に難はない。


しかし、甘やかされて育った子供達は大有りだった。


前々から ’その話’ は持ち上がっていた。

言うまでもなくリリックは、興味がなかった。

そう、興味がなさすぎて話題にも触れなかった。


その結果、お断りの言葉さえも加えていなかったのだ。


よって招いてしまったものが、現実となって進行しつつあったのだ。

そう、 ’その話’ とは、縁談である。


上手いように話をしたのだろう。

その美しくも意味深な笑みには、その意図が存分に表れていた。


その手を振り解きながら、リリックは冷たく放つ。


「おい、勘違いするなよ?」


「あら? どのような勘違いでしょう?」


「いつからだ? お前が全て仕組んだことだろう? あの部屋にいるはずの者がいなかったのも… それに、あれはお前に言ったわけじゃない」


「ではどなたに? その部屋にいるはずの者は実際にその場にはいなかった。あの場所には私と殿下しかおらず、愛の言葉を言われたのは、このわたくしです。これが真実。それに聞き届けた者も数名おりますでしょ?」


「…… 真実? だと?」


「それともなんです? 他に誰か意中のお方がいらっしゃるのですか?」


「あぁ。いる」


「… へ、へぇ。あの冷徹とも言われるリリック様に、そのようなお方が? 初耳ですわ」


「その耳障りな減らず口を今すぐ閉じろ。さもなければ、いくらモルバード卿の娘だからと言って、容赦はしない」


それでもめげずに続けるカレン。


「そうそう。そういえば最近、毎夜のようにリリック様へとピアノの演奏をしている方がいるとか… いないとか? … 確か庭師の… 数ヶ月前に雇われた元使用人… ? まさかとは思いますが、身分のわからない使用人を召そうとしているわけでは… 」


「… だったら何だって言うんだ? お前には関係ない」


「あらあら? そうとも限らないんじゃないんでしょうか?」


「どういうことだ?」


すると、カレンは途中に見える庭先へと目を向けた。

その横顔は何とも言えぬ、したり顔が浮かんでいる。


そして、リリックの目に入ったその光景は思いもよらぬものだった。


その後ろ姿は、遠くからでもわかる。


彼女の目の前には、屈むようにして顔を近づけている男が見える。


そう、それはまるで接吻の如く。

リリックはいつもの冷たい目を、炎のように熱く開いた。


「ふふ、お兄様ったら… あ、そうですわ! もしわたくし達が夫婦になれば、あの庭師の方とも家族になるということになりますわね?」


カレンがその言葉を放った時には、既に横にはリリックの姿がなかった。


その足はナナの方へと進み、そのままその細い腕を取ると、何処かへと連れ去ってしまったのだ。


その様子を見て、カレンは歯軋りが止まらなかった。





最後まで読んで頂き、ありがとうございます。


(基本歌は歌っていません)

今後、作者が聞きながら執筆した楽曲をその都度、参考までに載せておきます。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。

あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)

文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。

また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。

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