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episode23〜プレゼント〜



たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。

ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。

暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。




翌日から、夜の演奏は通常通り再開していた。


そう、いつもと変わらなくだ。


ナナはその変わり映えのないリリックの様子に、どうしたもんかと身をすくめた。


(昨日のアレは、一体何だったのかしら… )


そう思いながらも、今宵も音を奏でる。



一つ一つの旋律が、何故か彼へのモノとして向けられてしまう。

どうしてもそうなってしまう。

その感情が一体何なのか。

今のナナには、分かり得るものではなかった。


(そもそも… 何であんな事に… ?)


その間にも、その感情は違う形を探そうと、悶々と頭を駆け巡っていた。


(キス… キスよね。キスしたのよね? え? それともこの国ではアレはキスではなく、何かの… 儀礼?)


ナナはその指を走らせながら、昨夜の事を思い出して顔が赤くなる。


それによって、少しだがその音がわからない程度に乱れた。


速度が速くなったり遅くなったりと。


しかし、その曲を初めて聴くリリックには、到底わかるはずもなかった。


ないはずなのに、リリックはそれを挙動として、気が付いていた。


特に何の言葉をかけることもなく、聴き入る。

何よりも自身を意識してくれているのだと、大きな勘違いをして。


それに反し、ナナは居た堪れない気持ちが大きかった。


弾き終わると共に、一礼をしてその部屋から出ようとする。


リリックの前を通り過ぎようとした時、その影が立ち上がった。


そして、ガシリと肩を掴まれると耳元で囁く声が聞こえた。


「また明日な」


ナナはコクリと頷くと、その場を後にした。

その腕に気が付く事もなく。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


それから更に数日後。


最近は毎晩、伴奏後に必ず同じ行動をしてくる。


リリックは、その右手をナナの左の肩に置く。


そして、ひと言添えるのだ。


(何だろ? わかってるけどな… 毎日必ず行っ… )


「えっ!? リリック様!? そのブレスレット… 」


遂に気が付いたのだ。


その腕には、あの時、渡し損ねた誕生日プレゼントがはめてあった。


ナナは一瞬でも思い描いたその場所に、それがある事に驚いた。


0.01%の可能性が思いもよらぬ形で、叶っていたのだ。


(一体どうやってこうなった!?)


その反応にリリックは気分が良くなったのか、ニヤリと笑った。


「おや? いきなりどうした?」


「え、えと… そのブレスレットなんですが… 」


「あぁ、これか? どこぞの変わり者が、俺の為に用意してくれた物らしい」


「そ、それ… 」


「ん? 俺が何を召そうと、お前には関係ないだろう? それともなんだ? これの贈り主を知っているとでも言うのか?」


そう言いながら、その顔をナナへと近づけた。


(なんなのこの人… )


「あ… えぇとその… 」


(合ってるっちゃ合ってるんだけども… )


「ふっ… まぁ良い、そのうち名乗り出るだろう」


「…… そう… ですね」


ナナは、更に言いづらくなってしまっていた。


(一応、気に入ってくれてはいるんだ… よな?)


まさか、自身の選んだ物が、気に入られているとは思ってもいなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして翌日。

久しぶりに会ったセダリアに、朝から詰め寄られるナナ。


彼はあのパーティーの翌日から、姿を現してなかった。


庭師の同僚には、 ’王家としての公務’ があるとかなんとか。


それも、横流しに流れたものであった。


それこそ、何処ぞの御令嬢達の相手をする為に、毎日色んな屋敷へと赴いていたのである。


いや、本来なら正妃を見つけるはずのリリックの為のものだった。


しかし、素早い手が裏から回され、そのほとんどがセダリアへと押し寄せられたのだった。

半強制的に、好きでもない令嬢のご機嫌を取りに行かなくてはならなくなっていた。


断りの伝言を伝えるのは、彼にとっては苦でしかなかった。


日に日に怒りは溜まる。


その溜まりに溜まったストレスを発散しに、本来の依頼主への元へと行ったのだが、更にストレスを溜めることとなった。


(くそ! リリィの奴! 全部俺に相手させるなんてっ! し、しかもナナにあんな物までっ… )


それにより、セダリアもついさっき知ったばかりだった。


庭で仕事していたナナが、その声に驚いたあまり、地面に道具をばら撒いてしまった。


「ナナ!? リリィにプレゼント渡したの!?」


「え? え? あ、えぇと、結果渡したになるんですかね? 私からだとは言えませんでしたが… 」


「ん? どういう事!? だってあんなに… あんなにっ… 」


「あんなに?」


(あんなに嬉しそうなリリィ… 初めて見た)


「あのリリィが人からもらったものを身に付けてるなんて、そうそうないよ!?」


「ん? そうなんですか? 機嫌が取れたなら、それで良かったですけど… 」


「機嫌を取る?」


「え? だってプレゼントって、機嫌を取る為のものですよね?」


「… 違うよ。プレゼントというのは愛情の証だ。それが何であれ、その人のために選んだものは、その人への愛情を込めたものだから… 」


「えっ!? そうなの!?」


「え!? はっ! まさか! リリィに愛情なんてないよねっ!? ねぇ? ないよねっ!?」


(サラッと失礼なこと言ってる気もするけど)


「そんなのありませんよ! 私がどれだけ毎日怯えながら生きてるか知ってますよね?」


「…… うん?」


(最近のナナはそうは見えないけど… )







最後まで読んで頂き、ありがとうございます。


誕生パーティーの翌日から再開した、夜の演奏にて、ナナが居心地の無さながら弾いた曲は、

ロクデナシさんの【眼差し】

です。

切なく愛おしい曲調と感じ、とても素敵です。

併せて聴いて下さると嬉しいです。


(基本歌は歌っていません)

*あくまでも作者の主観ですので、ご了承願います。


今後、作者が聞きながら執筆した楽曲をその都度、参考までに載せておきます。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。

あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)

文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。

また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。


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