episode19〜交渉〜
たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。
ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。
暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。
「却下だ」
(やっぱし… )
その言葉に、少し哀れな表情でナナ達を見るセダリア。
そこには、とてつもなく切ない表情を浮かべるナナとロディーがいた。
「ダメ… ですか?」
「ダメだ。そいつが何の役に立つ?」
「俺! 何でもします! だからっ」
「ダメだ」
「リリック様! 私がちゃんと調教しますのでっ」
「ちょ、調教だとっ!? もっとダメだ!」
(ナナ… 言葉を選ばないと… )
すると、セダリアは見た目によらぬ策士の口を開き始めた。
「リリック殿下? 現状、庭の西側の手入れが行き届いておりません」
「ん? 何だ急に? 今、その報告はいらぬ」
「失礼致しました。換言します。
もうすぐ、例の花が咲き始める頃です。王妃様のお部屋から見える西側の庭の方まで、手が回らずに困っております。時間がありません。
あと2週間… 大切な催し物まで時間が限られておりますゆえ、そちらに人員が取られてしまい… 」
「そういうことなら、都からでも急ぎ人を雇えば良いだろう?」
「はい。その通りでございます。そして今、その都からの人員が… 力もやる気も有り余っている人員が、目の前におります」
(はっ! そういうことか! さすがセダさん!)
「くっ… 」
「殿下この者を雇ってみては如何でしょうか? もちろん、使用期間を経てで構いませんので」
「… そういうことなら… 仕方ない」
(やっやったー!!)
ナナとロディーは喜びの声を抑えながら、お互いに顔を合わせた。
「しかし何かあれば、そいつの首を即切る」
(く、首を… それって… 本当に切る気じゃ… )
冷酷無比な殿下は健在であった。
「それに加え、お前の処分も下るかも知れないんだぞ?」
「構いません」
「はぁ… わかった。では猶予をやろう」
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扉が閉まり、少し部屋から離れたナナ達。
「ふぅ… 」
その緊張の解けたため息とは違い、喜びを爆発させたナナ。
「やったぁぁ!! セダさん! すごい! あの冷酷殿下を丸め込むなんて!」
「ありがとう! セダさん!」
そういいながら、ナナとロディーはセダリアに抱きついた。
「ナナ! その言葉は、口に出しちゃダメだよ! どこで刺客が、聞いているのかわからないんだから!」
「あ、ごめんなさい! 嬉しくってつい」
(本当にこれで良かったのか?)
「でも、西側の庭の手が回っていないのは本当だよ?」
「先程も言ってましたが、その庭って王妃様のお部屋から見えるんですか?」
「そうだよ。王妃様がとても愛してやまない花が、植えられているんだ。もうすぐその花が咲き始めて、満開になる頃なんだ。あと2週間か… 」
「あと2週間? それってやっぱり… 」
「うん。リリィの誕生日に、満開に咲き誇る予定なんだよ」
「素敵」
「そうだね。僕はリリィの誕生祭に向けて手が回らない。だから、そこを君達で手入れしてもらうからね! 頑張ってよ!」
「「はいっ!」」
こうして、王宮西側の庭園の手入れを任されたナナとロディーは、あと2週間という短い時間で、とある花を咲かせなければならなくなった。
それはとても短い。
間に合わないかもしれない。
しかし、出来なかったでは許されない。
ましてや、自分達から吹っ掛けた事だ。
何が何でも遂行しなければならないのである。
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それから、凄まじく忙しい2週間が過ぎた。
庭師の仕事に加え、ピアノの演奏練習、そして、西側の庭の手入れ。
(ナナ、少し痩せた?)
毎日見ているセダリアがそう思うくらい、ナナは多忙な日々を過ごしていた。
そして、本祭当日。
ついに、その時が来た。
朝から会場の準備に追われていたナナは、本日はピアノに一度も触れていなかった。
しかし、緊張はあれど仕上げは出来ていた。
夕刻近くになっても、未だ会場の準備をする為の手は足りない。
それなのにも関わらず、ナナはその場はもう良いと言われそこから追い出されていた。
そして今、ある部屋で、使用人の何人かに囲まれていた。
(え? な、何?)
ここは密室だ。
何故か、ご丁寧にカーテンまで締められている。
(嘘でしょ? もう少しで本番なのに、こんな所でやめて欲しい… 密室か… 逃げられそうにもないし、叫んで助けを呼ぶか?)
ナナは深く刻まれた嫌な思いが、込み上げてきた。
ジリジリと攻めよる使用人達。
その目は使命とも感じ取れる瞳をしていた。
その通りだった。
使用人達は、ある命を受けて、その場にいた。
とある殿下によって。
「早く済ませるから… ジッとしててね」
そう言われると、丁寧かつ素早い手つきでナナをあっという間に、別世界へと盛り立てた。
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自身が誰かもわからなかった。
藍色のドレスに、煌びやかな髪飾り。
何より化粧映えしたその顔は、まるで別人だった。
満足そうな使用人達は大きな手鏡を広げ、ナナに見せた。
そして、1人、また1人とその場を後にした。
最後に残った使用人が、ある者からの言伝を口にした。
「 ’今夜、部屋で待つ’ と、リリック殿下からです」
そう言うと、使用人はすぐに部屋を出た。
「え? 今夜?」
(今日も演奏しろって事かしら? 今夜くらい良いのかと思ってたけど… まぁ、これも渡したいし)
そう思いながら、ナナはリリックに渡すためののプレゼントを見つめた。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
(基本歌は歌っていません)
今後、作者が聞きながら執筆した楽曲をその都度、参考までに載せておきます。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。
あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)
文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。
また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。
 




