episode18〜つぶらな瞳〜
たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。
ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。
暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。
都でのリサイタルは無事、成功に終わった。
大盛況の中、ナナ達は笑顔を溢した。
何とも言えないその気持ちは、言葉に表すのにはとても難しかった。
とてもじゃないが表しきれない。
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そしてその夜。
いつものように演奏する為に、リリックの部屋へと赴いたナナ。
昼間の余韻が残ったまま、ナナは機嫌良くいつもの椅子に座った。
「うまくいったみたいだな?」
「はいっ! おかげさまで! ふふ」
「そうか」
その表情を見て、リリックは笑いはしなかったものの、感情を浮き上がらせていた。
「では、弾きますね」
「あぁ」
(ふふ、最近良く反応してくれるようになったなぁ)
そしてナナはその軽い指先で、鍵盤を走らせた。
演奏が終わり、ナナが部屋から出ようとすると、その後ろをひらりと何かが落ちた。
「何だ?」
そう言いながら、リリックはそれを拾い上げた。
「あ、これですか? 昼間、リサイタルが終わった直後に、綺麗なお姉さんにもらったんですけど… その時に確か、 ’あなた、どう?’ って言われたような… 」
その言葉に、再度その紙をまじまじと見るリリック。
(これは… )
顔を顰めながら、言葉を発する。
「あの時の女か!?」
「あ、はい… でも裏に ’男性専用’ って書いてあるので、私は行けないんじゃないかと… あ、良かったらリリック様に… 」
その言葉を遮るように、強く腕が握られる感覚がした。
「…… っ」
「ん? あの時の女? … はっ、まさかリリック様、あの場にいたんですか!? リサイタルには来れないって、言っ… 」
「チッ… 」
(聞いてないな… )
「そうだな… 手間がある」
「え? お店に行く手間ってことですか?」
「そうだ。なら… ここで、お前に相手してもらった方がよっぽど効率的だ。それに、俺はこんな所には興味はない。あるのは… 」
そう言いながら、ナナの後頭部に手を回し、ジッと見つめた。
「え… 」
しかしその瞬間、部屋にノックがする。
それに反応を示した側近が、リリックへと声をかけた。
「リリック様、またモルバード卿がいらしておられるそうで」
「またか。しかもこんな夜分にか… はぁ… 仕方ない」
少し機嫌を損ねた様子でリリックは、ナナの頭をワシワシと撫でた。
そして、名残惜しそうに、その場を後にした。
(今のは何だ?)
ナナは予期せぬ感情が多く重なった為、心の整理がつかなくなっていた。
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そしてそれから数日後。
本祭である、誕生パーティーまであと2週間を切っていた。
その間も、ナナは披露する為の練習を怠らない。
そしてもちろんあれから、イルリやロディーの事も気にかけていた。
忙しさのあまり、会いに行けてはなかったが、このパーティーが終わったら、一目散に会いに行こうと決めていた。
それほど、ナナにとってはあの2人が大きな存在になっていたのだ。
そしてその日、思いもよらない事が起こった。
セダリアのその一言から、ナナは感情が喜びに変わる。
「ナナ? 君はいつあの子を拾ってきたの?」
「え?」
そこには、ロディーの姿があった。
遠くの物陰からこちらを見ている。
ナナは思わず、その姿に飛びついた。
「ロディー! どうしたの!?」
以前とは違う温かい抱擁だ。
「元気だった!? あれからどうしてたのかと、ずっと心配してたのよ! ちゃんと食べてる!?」
ロディーも嬉しそうにナナにしがみついていた。
出会った時の、ツンケンした態度とは一変して、その姿はかなり懐いていた。
「ナナ、会いたかった!」
(あぁ可愛いっ)
「よくこの場所がわかったね?」
「うん! 臭いを辿って」
(え? 臭い?)
セダリアは、少し顔を顰めた。
その健気でキラキラな笑顔に、ナナは再び胸がキュンとなっていた
(可愛い… )
「ロディー? どうしてここに?」
そう言いながら、セダリアはロディーへと説明を促した。
「おひ… お久しぶり… です。えと… セダさん?」
ロディーは教養がないながらも、辿々しく言葉を発した。
「ロディー、寂しくなっちゃった?」
ナナがそう聞くと、コクンと頷くロディー。
ナナのその腕の力が強まる。
(がわいいっ!)
その姿を見て、更に雲行きの怪しくなる表情が目の前に現れた。
「あの… セダさん… 」
「ん?」
「この子、うちで飼っても良いですか?」
「えぇ!? ダ、ダメだよ! 今すぐに返し… 」
ナナとロディーのつぶらに光る瞳が、セダリアの心を揺さぶる。
「返し…… はぁ… 僕からの許可は出来ないよ。リリ… リリック殿下からのお許しをちゃんともらってからじゃないと… 」
(あいつが許すとは到底思えないけど… )
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
機嫌良くナナが弾いた今回の曲は、
ロクデナシさんの【知らないままで】
です。
(基本歌は歌っていません)
今後、作者が聞きながら執筆した楽曲をその都度、参考までに載せておきます。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。
あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)
文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。
また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。




