episode17〜リサイタル〜
たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。
ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。
暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。
それから、あっと言う間の1週間が過ぎた。
遂に、明日は都でのリサイタルだ。
ナナはこの日の為に、毎日都のある場所へと足を運んでいた。
そこには立派なピアノがあり、歌い手もいる。
一度この場所に来た時に、そのピアノを見かけていたのだ。
その場所は、イルリの自宅である屋敷であった。
そしてその歌い手とは、今回のリサイタルで参加してくれるイルリ本人である。
更には、もう1人その場にいた。
ロディーだ。
彼も、今回のリサイタルの参加者となっていたのだ。
もちろん彼の事も、誘ったのはナナである。
しかし、教養もなければ、楽器なども触ったことのないロディー。
今回は、簡単な楽器であるカスタネットを担当してもらう事にしたのだ。
今度は貝殻でなく本物の楽器だ。
ロディーは、とても嬉しそうにしていた。
これは、彼に音楽に触れさせる良い機会を与えたいという、ナナの考えでもあった。
(何でも良いから、生きてる事に触れて欲しい)
ナナは鍵盤を走らせながら、そう思っていた。
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そして、リサイタル当日。
ナナは、簡単におめかしをさせられていた。
その為、部屋で最後の練習を何回も繰り返していた。
慣れない格好の恥ずかしさから、中々部屋の外へと出られなかったのである。
すると、その部屋が音もなく開かれた。
音の邪魔をしないようにと、静かに腰がソファーへと降りる。
その耳は、一音も漏らさなかった。
その瞳は、外される事なくナナへと注がれた。
遂に決心をしたナナが、ピアノから目線を外し、席を立とうとした。
そこには、珍しく朝からリリックの姿があった。
「うわぁっ! リリック様っ!? いつの間に!」
「失礼なやつだな」
「え? あ、申し訳ございません! それにしても、朝からいらっしゃるなんて、如何されました?」
「お前が来ないと、外で騒いでる連中がいたぞ?」
「げ… 」
(げ?)
「そうなんです。そろそろ行かなければ… でもこのような格好… 世間に見せても良いものか… 」
「ん? 何がだ?」
「あ、いや、だってこれ… 」
「俺のセンスに問題があるのか?」
「え? リリック様のセンス? それとこれとは…… ん?」
「… それは俺が用意させたものだ。それともなんだ? 不満か?」
「えっ!? リ、リリック様が!? こ、このドレスを!?」
「… そうだ」
「い、いいいいえ! 滅相もありません! このドレスはとっても素敵です。素敵すぎて、私にはとてももったいないです。私がこのドレスをダメに… 」
「ダメなものか… その… に、にあ… 」
「?」
「それに… 」
「それに?」
「今日は、俺は見に行けないかも知れないんだぞ?」
(確か前にもそんな事言ってたな。本当だったのか)
「本当ですか!」
「む… 何だか嬉しそうだな?」
「あ、いえ! そう言うわけじゃ… えと、リリック様がいると、何だか緊張しちゃうので」
(失敗したら殺されそうで)
(俺の視線が気になるってことか!?)
その瞬間、ナナはふと窓の外を見た。
睨みを効かせているセダリアの姿が目に入り、身体中が凍った。
「ま、まずい… リリック様!! もうっ行かなきゃなりませんっ! このままだと、セダさんが鬼にっ… いやもう既にです!」
そう言うと、ナナはリリックの目の前を通り過ぎようとした。
その腕を掴まれる。
「待てっ… 」
「え? リリック… 様?」
「たの… しんでこい」
「… は、はいっ! ふふふ、ありがとうございます! ではっ!」
そう言って、ナナは慌ただしく、その場を後にした。
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こっぴどく怒られたのは、言うまでもない。
その姿に、お褒めの言葉をここでも貰えたのは、予想外であったが。
遅刻同然で、会場に着いたのはギリギリだった。
しかし、ナナは嬉しそうにしていた。
この気持ちが何かはわからない。
あの時言われた言葉が、頭にずっと残っているのは確かだった。
「っふぅ… 」
「緊張するか?」
「はい、少しだけ… でも、楽しみます!」
「そうだな」
ナナは、セダリアに笑顔で返した。
彼らと会うのは、これで3回目だった。
ほんの数回しか音合わせをしていない。
曲はナナが選んだからだ。
しかも、この世界では聴きなれないような音楽をだ。
しかし、それを最も簡単に完璧に近いものとしていた。
それもたった2回の練習でだ。
彼らは、本当の意味のプロなのである。
そのおかげもあってか、ナナはイルリとロディーとの時間を多く費やすことが出来ていた。
本番もその心配はなさそうだ。
ナナはピアノ、セダリアは本命のヴァイオリンを手にしていた。
そして、助っ人の王宮専属の奏者達2名には、木琴とギターの協力を得ていたのだ。
そして、新参者のカスタネットロディーと、歌い手イルリだ。
イルリは一曲目は歌い手、二曲目はカスタネット奏者として参加する。
もともと超お嬢様育ちのイルリは、音楽も嗜んでいた為、色んなことができた。
もちろんピアノも弾けた。
しかし、今回は歌うことの好きな彼女の要望と、ロディーの補助を兼ねてカスタネットを選んだのだ。
イルリはニコニコとしながら、今か今かと待ち構えている。
ロディーはと言うと、緊張の為、ガチガチに固まっていた。
それぞれが初めての想いを心に、今、リサイタルが始まる。
一曲目のそれは、ピアノから始まり、イルリの歌が入る。
とても澄んだ、そして優しい歌声が空へと、そして人々の心へと響き渡る。
ピアノとの相性はバッチリだ。
ナナは横目でチラリと、イルリを見た。
心配はなさそうだ。
緊張を感じさせないその歌声は、全くのブレもなく遠くの方まで轟かせていた。
そして二曲目。
軽快なピアノから入り、そしてギターと共に始まる。
途中から、ヴァイオリンと木琴の軽やかな音も入り混じる。
今度は出番のあるロディーをチラリと見たナナ。
(あ、顔が少し… 頑張れロディー)
そう思いながら、ナナは後押しするようにピアノの音色を走らせた。
今度はロディーと同じ楽器を持ち、その隣にいたイルリ。
音を奏でながら、ロディーを見ながらニコリと笑う。
その笑顔に安心したのか、ロディーも微笑み返す。
(この音色が… 思い出として2人の世界を広げてくれますように… )
ナナはそう願いながら、最後の一音まで愛を込めた。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
今回、リサイタルでナナ達が演奏した曲です。
一曲目は、MIMIさんの【静寂に咲く】です。
記載してある通り、ナナのピアノとイルリの歌のみとなっております。
二曲目も、MIMIさんの【フローレミ】です。
ピアノ:ナナ、ヴァイオリン:セダリア、
カスタネット:ロディーとイルリ
ギターと木琴は、セダリアの演奏者仲間の方々A.Bです。
あくまでも、作者の勝手な選択でのイメージ曲ですので、ご了承の上、あわせて聴いてみて下さると嬉しいです。
今後、作者が聞きながら執筆した楽曲をその都度、参考までに載せておきます。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。
あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)
文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。
また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。




