episode16〜涙の意味〜
たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。
ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。
暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。
ナナはその決意を胸に、主人であるリリックのもとへと向かっていた。
しかし、ロディーを助けた事によって、以前の事を思い出してしまったせいか、少し心にモヤがかかっていた。
いくらこの世界から遠い所で起こった事とはいえ、その記憶は頭にこびり着いて、中々消え去ることは出来ない。
いつもの時間にリリックの部屋へと赴くと、そこには少し怪訝そうな姿があった。
しかし、その時は彼の表情を読み取ることが出来なかった。
通常通り、愛想が無であったからだ。
ナナは演奏をする前に、リリックの方へと向き、その言葉を出した。
「あ、あの! 私、リサイタルに出ます! 出ないなんて言ったのに、今更かも知れないですけど、出させて下さい! お願いします!」
「そうか… 」
ナナはその言葉に、承諾を得られたと思った。
「えと… でも緊張するので少しだけにしますが… 」
「そうか… 」
(ん? 何だか様子が少し変?)
そう思いながらも、ナナはピアノの前へと足を進めようとした。
「あ、では早速弾きっ… 」
その瞬間、腕を引っ張られる感覚がした。
「都で… 」
「え?」
「今日、都で川に飛び込んだらしいな?」
(情報早っ!)
「え、あ… はい」
「少年を救おうとしたらしいが… そんな無茶をする馬鹿がここにもいたのか?」
(馬鹿… )
「もし、水深が浅かったら、どうするつもりだったんだ?」
「あ… えと」
(私もまさか、川に飛び込むとは思ってなかったからな… )
「死ぬ可能性もあったんだぞ?」
「はい。以後、気を付けます」
「はぁ… 運が良かったな」
「お、怒ってらっしゃいます? よね?」
「はぁ!? 当たり前だ! 俺がどれだけ心っ…… 」
「… 心配… なさってくれたんですか?」
「……… 」
「ん?」
「… それにしても、歌までも口ずさんだらしいな?」
(あ、話逸らした)
「え? あ、はい… 少しですが… それが何か?」
(何でもお見通しだなぁ… でも何で?)
「同じのを… 」
「ん?」
「… ここで同じのを歌え」
「同じの… ですか?」
コクンと頷くリリック。
今度はピアノと演奏しながら、昼間と同じ歌を歌った。
そして弾き終わると、リリックは何故か驚いた顔をしながら、ナナの方を見ていた。
「え? どうかしました?」
「なぜ… 泣いている?」
「へ… ?」
ナナはその言葉に、思考が追いつかないでいた。
自身の顔を手で触ると、涙で頬が濡れていたのだ。
「え? あ、あれ? どう… したんでしょう? ご、ごめんなさいっ鍵盤が濡れちゃう… っ」
(イルリと… それにロディーとの状況が色々重なって、昔の自分を思い出しちゃったからだ… )
その瞬間、リリックがナナの後頭部に手を添えると、自身の胸へと顔を埋めさせた。
冷酷なはずの殿下は、とても温かかった。
もちろん物理的にではない。
ナナは少しずつ感じ取っていた。
その心が不器用なだけ。
温かいのはリリック自身だという事を。
(もったいないなぁ)
そう思いながら、もう少しだけ涙を流した。
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こうして、ナナはリサイタルに出る事を決意した。
翌日、早速その旨をセダリアにも伝えた。
しかし、それよりも少年を助けるために、その身を川へと投げ込んだ事に対し、こっぴどく叱られた。
(リリック様もセダさんも… そんな怒る事ないのに… )
そうおもいながら、ナナは何だか嬉しく思っていた。
その感情がちょっぴり現れてしまう。
「ナナッ!? 何笑っているの!? わかってる!? あれがどんなに危険か! 一本違う橋からだったら、本当に危ない所もあるんだからね!」
「以後… 気を付けます」
「全くっ!」
ナナは反省しながらも、その笑みを抑える事は難しかった。
「それで… リサイタルに急に出るなんて言い出すから、驚いたけど… まぁ良かった! それなら早速、曲決めなきゃね! もう時間がない! こうしちゃいられないよ!」
そう言いながら、その腕を強引に引き、ナナをリサイタルの準備へと連れ出した。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
今後、作者が聞きながら執筆した楽曲をその都度、参考までに載せておきます。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。
あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)
文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。
また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。




