episode15〜生きて〜
たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。
ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。
暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。
以前は決して、そのようなことはなかった。
自身のことさえも、うまく起き上がらせることが出来なかったのだから。
この世界に来て、ピアノに多く触れ、色んな人々に関わった。
それが菜々美を、この世界のナナとしてのその心を変えさせてくれたのだ。
そんなナナの目の前に今、命を自ら断とうとしている1人の少年がいた。
「それは… いけませんね」
「えっ!? ちょっ嬢ちゃん!?」
見物人の老人はそう声をかけたが、勇気となったその足は、真っ直ぐにその少年へと進み始めていた。
「イルリといい、あの男の子といいっ! この世界にもあるなんて… 何処にでもあるっ! 嫌だ!」
そう言いながら、ナナはその飛び降りようとしてる身体を、引きずり下ろそうとして飛びついた。
「… っんな、何だお前! や、やめっ! うわっ… 」
「それだけは許さないわっ!! あ… あれ?」
しかしその瞬間、すぐに地面へと到着するはずの計画は崩れた。
少年は見た目以上に力があった為、計算外の抵抗力に勝てなかったのだ。
そう、逆方向である川へとそのまま真っ逆様に、落ちてしまったのだ。
辺りに悲鳴が轟く。
目を覆うものもいた。
その声と景色がスローモーションのように、展開した気がした。
水飛沫と共に、肺への空気の流れが止まる。
しかし、すぐにそれは解放された。
幸いにもその川は、とても穏やかで深さも十分あった。
難を逃れたナナは、助けに来た人達に怒られながらも安堵の声を受け取っていた。
ナナは都の人に借りたブランケットを頭から被りながら、隣の少年の方を見て言う。
「苦しくなっちゃった?」
その言葉にムスッとしたままの少年が、ボソリと呟いた
「余計なことを… 」
その瞬間、ナナはその手のひらを思いっきし、少年の頬へと当てた。
「なんって愚かなことを! これ以上、命を粗末にするような真似はするなっ! その時はその口叩き割るからなっ!」
(あぁ、私いつからこんな説教じみた事を言うようになったんだろう… )
驚いた表情をしたまま、真っ直ぐにナナの瞳を見る少年。
その唇は少し震えながら、声を絞り出した。
「… あんたを、巻き込むつもりはなかった」
ナナはその姿に、何故が胸がきゅうっと締め付けられた。
(や、やだ… 可愛い… )
焚き火をしていた人達の行為を受け、側で暖を取っていたナナと少年。
「ねぇ? 名前なんて言うの?」
「名前なんてないよ」
「ん? 名前がない?」
「そう… だから好きに呼んでいいよ」
「えっ!」
「… 何だよ、その顔。キモい」
ナナは、表情管理が苦手であった。
今までの人生には無い、状況に遭うとこうなる。
「えっ! キ、キモい!? いや、なんか犬を拾った気分で… 好きにしていいって言うから。ハァハァ」
ナナは、そのニヤけた顔を収めることができなかった。
「好きに呼んでいいって言っただけだ」
「うーん、ポチ、こじろう、玉之助?」
「あんま聞いたことない名前だな… もっといいのないのか?」
「えぇーじゃあ何が良いかなぁ? 好きな物とかあるの?」
少し考え込むように、時を過ごす少年。
すると、声を絞り出した。
「昔、ある音をよく聞いていた気がする。もう一度聞きたい」
「え? 何の話?」
「聞きたいんだ。その音を」
(何かの楽器かしら?)
「んー、その音が何かはわからないけど、それにちなんだ名前… 音… 音色… そう例えばロディーとか?」
「ロディー?」
「その音楽を探すという意味でも、ね? どうかな? あ、やっぱ安易過ぎ… 」
「うん… うん! いいね! それにする! 今日から俺の名前はロディー。えと… 」
「私はナナって言うの。ふふよろしくね、ロディー」
「よろしくナナ」
「それで? どうして飛び降りようなんて思ったの?」
その言葉に、顔を埋める。
「嫌になったんだ。何もかも… 俺を必要としている者は誰もいない。生きているだけで、何の意味があるんだって。毎日毎日そう思いながら生きてきた。だから、辛くて… 本当に、毎日が苦しくて苦しくて辛かった」
「うん… わかるよ… 私も同じだったから。毎日が辛くて辛くてどうしようもなかった。相談する友達もいなかったから。そのどうしようもない毎日をただ耐えるしかなかった。
でもっ… でもっ、私は命を断とうなんて一度も思ったことはないわ。どんな形であろうと、この命は大切な家族からもらった物だもの。あなたにも、もういるのよ… あなたがいなくなって悲しむ者が… 」
「え… ? そ、そんな人は俺には… 」
「いるの。目の前にいる私がそうだから。言わば私はあなたの名付け親よ? だから、二度とあんな真似しないでっ! ね? 約束… 」
ロディーは、その目を潤しながら頷く。
ナナは、ニコリと微笑むと話を続けた。
「それにね、ここに来ても同じだった… 何処にでもいるんだなって思ったよ… それに家族と別れてしまった今の私は、本当の絶望に追い込まれた気がした。
でも、ひとつのきっかけで私は少しずつだけど、陽の当たる場所に出てきている。何がきっかけかはわからないわよねぇ」
「きっかけ… 」
「そう、今までの私はその一歩を踏み出すのが怖かったの。勇気を出すのが怖かった。あなたもそう? もし… そうだとしたら、その一歩を私が一緒に踏み出してあげる… どう?」
ナナその言葉に涙を溢しながら、ロディーは強く頷いた。
「あのね… 」
「え?」
そう思いながら、ナナは歌を口ずさんだ。
途中で、ナナはある物が目に入り、それを持って来た。
それは大きな桶だった。
その中に中身のない二枚貝が入っていた。
貝殻を手に取ると、リズムを取るように叩き始めた。
そんなナナを見て、ロディーは表情を更に明るくした。
同じようにと促しながら、その二枚貝をロディーへと渡した。
ロディーはぎこちなくも見よう見まねで、それを叩く。
ナナはというと、桶をひっくり返し、両手でリズムを取っていた。
その様子を見ていた都の者達も、興味を表しながらナナ達の近くへと集まってきた。
歌い終わった頃には、彼女達に向けて歓声を上げていた。
もちろんロディーの顔が綻んだのは、言うまでもない。
ナナは嬉しかった。
何よりも、ロディーがその瞬間笑って、生きてる事を感じていた事に、心が悦んでいたのだ。
その光景を肌で感じてしまったナナは、ある事を決意した。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
今回、ロディーを元気づけるために、ナナが河原で歌った曲は、
MIMIさんの【あのね(feat.可不)】
です。
初めて歌を歌ってます。
しかもアカペラという、難易度。
しかし、以前も記載したように、ナナは非常に耳が良いのです。
音程は安定しているものと思って合わせて聴いてみて下さい!
今後、作者が聞きながら執筆した楽曲をその都度、参考までに載せておきます。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。
あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)
文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。
また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。
 




