episode14〜協奏曲〜
たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。
ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。
暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。
そして翌日、朝の仕事をいつも通りにこなしていると、リリックが突拍子もない事を言い出した。
その声の大きさに、ビクリと身体を跳ねるナナ。
「そうだ! いきなり大舞台は緊張すると思うから、練習だと思って僕と中庭でデュエットしようよ? ヴァイオリンとピアノ協奏曲とかどう?」
「な、中庭でですか!?」
「そう! 今からっ」
「えっ!? 今から!?」
「うんっ! そうと決まれば、ほらっ、さっさと仕事片付けちゃおう!」
「え!? え? 嘘でしょ!? 心の準備がぁっ!」
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こうして、急遽行われることになったセダリアとのヴァイオリン協奏曲。
ピアノを運んだり、簡単な打ち合わせもあったため、昼頃になってしまった。
もちろん、リリックの許可も得ている。
この宮殿の使用人達には、光の如く噂は広まった。
娯楽が少ないのか、すぐに観衆は集まった。
「あの、一応聞いておきますが、リリック殿下はなんと?」
「好きにしろだってさ」
その言葉に、ほっと胸を撫で下ろすのも束の間。
「ほらっ」
セダリアのその一言で緊張が走る。
遠くの窓から、突き刺さる視線が飛んできた。
(み、見とる!!)
「ふふ、本当は間近で聴きたかったんじゃないかな?」
リリックはある高貴な一族と会食の予定があったため、直前に行われる演奏には間に合わないという。
(セダの奴… こんな時に限って… わざとか?)
しかし、その場からリリックは時間が来るまで、耳を傾けることにした。
そして、ナナとセダリアの初めてのデュエットが始まる。
緊張を掻き消そうと、大きく深呼吸をするナナ。
「大丈夫! 正式なやつじゃないから、気楽にね!」
その言葉に、ニコリと返すナナ。
2人の音が重なった。
手慣れたように、ナナが奏でる音を難なく重ねるセダリア。
この安心感を、心地良い音として放っていく。
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その夜、日課の演奏を終えたナナに、リリックが口を開いた。
「昼間は大盛況だったそうだな?」
(いやいや、バッチリ見てたくせに… )
「あ、はい。お陰様で。しかし、皆様あの短時間でどうやって聞きつけたのでしょうか?」
「さぁ?」
白々しくもリリックは、含みのある笑みを浮かべていた。
「都でのリサイタルの方は、断ったそうだな?」
「はい… パーティーでの演奏の方に、集中したいもので」
「俺の為にか?」
「え? あぁはい。そう… なりますよね? 殿下の誕生祭ですものね?」
その回答にリリックは、少しばかり肩を窄めた。
「まぁ、どっちにしろ俺はその日、大切な用事があるから見に行けないがな?」
(ん? その日? いつやるかって決まっていたのかな?)
リリックは明後日の方向を見ながら、話を続けている。
「それでも? なんだ? あー… お前がどうしても? 見に来てほしいと言うのならば、見に行っ… 」
(それにしても最近、よく話すようになったなぁ)
眠気が酷い。
ナナの耳には、その言葉のほとんどが入ってきていなかった。
昼間の疲れが、どっと身体に押し寄せてきていたのだ。
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数日後、ナナはセダリアからお使いを頼まれ、再び都へと降り立っていた。
ナナはこの都の風景が好きだった。
外国を思わせるその街並みは、ナナにとってはとても新鮮な物であった。
まさに別世界である。
頼まれた物を迷いなく購入できたナナの足取りは、とても軽い。
(ふふふんっ… 時間が少し出来たから寄り道でもしちゃお… )
「誰かぁーっ!」
その瞬間、遠くの方で叫ぶ女性の声が聞こえた。
ナナはビクリとしながらも、声のする方へと走った。
都の中心を流れる大きな川。
その至る所に橋が架かっているのだ。
そのひとつであるアーチ状の橋に、人だかりが出来ていた。
そしてその中心には、1人の少年が今にも飛び降りそうな位置に立っていた。
囲まれた人々に、何か言われている。
ナナはその見物人の1人に、事の詳細を尋ねた。
「あの少年は、親もいない家なきの子じゃ。行く当てもなければ、働き口もない。それを良い事に色んな輩から痛めつけられる毎日じゃ… 流石に嫌になったのだろう。まぁここで終わらせようって事なんじゃろうな… 」
「そうですか…… 」
(つまり、人生が嫌になったと… )
その切なくやるせない言葉を聞いたナナは、目の色が変わった。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
今回、ナナとセダリアが協奏曲で演奏した曲は
一曲目:水野あつさんの【前を向かなきゃ】
二曲目:水野あつさんの【知りたい(blackboard version)】
です。(基本歌は歌っていません)
中庭で演奏しているのを想像しながら、書きました。
今後、作者が聞きながら執筆した楽曲をその都度、参考までに載せておきます。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。
あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)
文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。
また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。




