episode10〜誤解〜
たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。
ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。
暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。
それから更に数日が経ち、誕生パーティーまで1ヶ月となった。
パーティーの打ち合わせと言われ、その場に何故かナナも呼ばれた。
今回は料理の試食を兼ねてらしい。
(主役が味見とかするの? 料理に相当なこだわりでもあるのかしら?)
そう思いながら、その場に居合わせるナナ。
庭師長であるセダリアの姿ももちろんあった。
おそらく、料理に添える花飾りの打ち合わせも兼ねているのだろう。
しかし、ここで命を落としかねない事件が起きたのだ。
ナナは手伝いの為、指示された料理をリリックのもとへと運ぼうとしていた。
次の瞬間、その身体は両手のお盆と共に、宙を舞う。
(まずい… っ)
そしてそのままカランという音と共に、地面へとケーキ達がぶち撒かされた。
そのはずみで、あと数歩だったリリックの顎下と手にクリームが飛び散ったのだ。
辺りの静まりは、言わずもがな風の音ひとつしなかった。
(や、これはもう… 死)
そう思うのも無理はない。
ここ数ヶ月で、特に耳にしてきた言葉があった。
’王子の冷酷さは異常だ。
ただただ平穏に過ごす事が我々の為だ’
無礼を働いてきた者達は、即座にその姿を消してきたという。
とうとう、ナナもその一員となる日が来た。
しかし、ナナは意外にも脳内が冷静と化し、周りの景色がクリアに見えていた。
(遂にか… 早かったな… いや、むしろ長引いた方なのか?)
しかし、身体は正直だ。
(あれ?)
震えが止まらなかった。
その瞬間、目の前に影ができる。
目をギュイっと瞑るナナは、覚悟を決めた。
「ん… 」
その声は、いつもと同じく低く冷たい。
そう、いつもと同じで、変わらなかったのだ。
その目の前には、クリームの付いた左手が差し出されていた。
「え?」
(そうか… 拭き取らないとだ! これはもうやっぱりそういうことよね?)
そう思いながら、その左手にそっと触れるナナ。
(これも命令ならやるべきか。まぁ靴よりはまだマシか… まさか、ここに来てまでもやらされるとは… それにこれで、首が刎ねられないのであれば… )
そう思いながら、ナナはその手に舌を当てた。
そのまま絡め取る。
そう、舐めて拭き取ったのだ。
しかし、その行動に驚くリリック。
「… っ! んなっ、お、お前、な、何をっ」
「え?」
(あれ? 違ったかな? こっちか… )
更に本人にとって、予想だにしていなかった事が起こる。
そして、その身を立ち上がらせたナナは自身の左手をリリックの右頬に当て、そしてその左顎に首を伸ばした。
その部位についたクリームを舐めとる。
その瞬間、かつてないほどの静寂に包まれた。
従者達は言葉も出ない。
リリックはというと、今度は言葉も出ずに硬直したままだった。
その瞳と口は開いたままだ。
「… ? え? あ、あれ? リリック様?」
彼は、声にならない声を出そうと必死だった。
顔には赤がその姿を表す。
「え… ? え? え?」
(え? 間違えた? え? どういう事!?)
さすがのナナも周りの反応から、その選択を間違えた事に気が付いた。
(怒りのあまり顔が赤くなってらっしゃるーーー!)
反対に顔が青くなるナナ。
腰を最大屈指させ、無礼を詫びた。
「もももも申し訳っ、ございません! すぐにタオルをっ」
微動だに出来ないリリックのもとへ近づき、濡らした布を当てその場所を拭き取る。
ナナの経験が、その感覚を鈍らせてしまっていた。
転移前の事件の記憶が、頭の中に焼き付いていたのだ。
それと同じような行動を取ったまでだった。
(あ、あの時は確か、買ってきた飲み物を溢して靴に掛かったから… 舐めろって言われて… え? 違うの!?)
そして、すぐに他の使用人から下がれと言われたナナは、その場を後にした。
混乱の渦の中、その胴体と首が離れるまでの時間を覚悟して。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
今回は、演奏シーンがありません。
今後、作者が聞きながら執筆した楽曲をその都度、参考までに載せておきます。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。
あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)
文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。
また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。




