episode1〜日常〜
たくさんの作品から見ていただきありがとうございます。ボーカロイド系の音楽を取り入れた作品になりますが、あまり詳しくないのが現状です。暖かい心で呼んで頂けると嬉しいです。
(朝か… )
あっという間の朝だ。
憂鬱な朝。
嫌な日ほど、早く来る。
学校がある日は毎日だ。
1日の時間は決まっている。
そんなのわかりきっている事だ。
しかし、同じ時間でも嫌な時間は遅く感じ、好きな時間は早く過ぎ去ってしまう。
菜々美は、その身体を重い気力ごと、ゆっくりと起き上がらせた。
もう一度、この布団に潜りたい。
何も考えずにそれができればどんなに幸せだろうか。
しかし、そうも言ってはいられない。
出発の時間は待ってくれないのだから。
「はぁ… 」
菜々美は、日課のようなそのため息を今日も吐いた。
支度をし終えた菜々美は、リビングに足を向けた。
そこには、愛情たっぷりの朝食が並べられていた。
しかし、例によって今朝もそれが喉を通らない。
(お母さん、ごめん)
そう思いながら、目の前にある温かいミルクだけを飲み干して席を立つ。
「菜々美? 今日はほら… おばあちゃんの… 」
「うん、わかってる。学校終わったらすぐに病院に行くね」
「いってらっしゃい。気を付けてね」
明るくそう言う母の言葉は、心配の色が混じっていた。
「… 行ってきます」
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この通学路もあと、2年と3週間。
正確に考えれば、休日や長期休みを抜かせばもっと少ないだろう。
菜々美がそこまで計算してしまうようになったのには、訳があった。
(私は学校が嫌いだ)
何がきっかけかはわからなかった。
いつの間にか陽な人種の標的にされ、その身は陰となってしまったのだ。
そして1年も経たずに空気のような存在と化す。
そのせいで、伸ばしに伸ばした前髪は、更にその存在を暗くした。
教室に行くまでの廊下を歩く足は、鉛の如く重い。
廊下が歪んで見える。
教室はもっと歪んで見えた。
(ただの箱… ただの箱… )
彼女はそう思うことによって、自我を保とうとしていた。
菜々美は机の上が、昨日より汚れているのが目に入った。
そこに書かれたものは、同じ人間なのかとも疑う程であった。
(私の何を知っているの? 何なのほんと… )
そう思いながら、菜々美は今日もその歪んだ教室に身を沈ませる。
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その時は長く、やっと学校という1日が終わった。
足早に、その場から身を遠ざける菜々美。
(今日はおばあちゃんの手術の日… そうだ、お見舞いの果物買わなきゃ)
そう思いながらも、普段は行かないような少し高めの店に足を運ぶ。
果物の詰め合わせを買い、そしてそのままの足で病院へと向かう。
そして、その横断歩道を渡ろうとしたその瞬間に、彼女の人生は突然終わった。
そう、菜々美としての人生が終わったのだ。
本来の色よりも赤い色を呈したソレが、その身を転がしながら散らばる林檎の実。
そして、無惨になった他の果物も傷をつけた車体と共に、その場に横たわっていた。
しかし、その場にあるはずの姿がなかった。
そう、菜々美の姿だけがその場から忽然と消えていたのだ。
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菜々美の瞳が再び開かれた時には、見知らぬ建物の中にいた。
ひとつのリンゴを握りしめて。
「… っ!? え!? 何処!?」
菜々美は久しぶりに、大きな声を出した。
普段では、そんな事はない。
その消沈しきっている感情を浮き上がらせていたのだ。
先程までの記憶もしっかりある。
その身を、ざっと確認する菜々美。
しかし、その身には傷ひとつなかったのだ。
(血がっ… あれ? 確かに私… 車に轢かれた… はず… )
「ん? どういうこと?」
すると、その場に見慣れない姿の女性が近づいてきたのだ。
見たこともないような格好をしてると思っていたのは、菜々美だけではなかった。
相手も同じ気持ちだった。
むしろ、この世界には、菜々美のその姿の方が異様だった。
その女性は、菜々美を怪訝そうな表情をしながら見た。
「あなた… 一体何処から入ってきたの? 変な格好してるわね?」
「え? あ、え… わ、私… 」
しどろもどろな菜々美を見て、更に顔を顰める女性は、持っていた籠を菜々美の前に置いた。
「まぁいいわ、人手が足りないの。時間が惜しいわ。それ持って、こっちへ来てちょうだい」
そう言われるがまま、菜々美はその女性の後をついて行った。
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案内されたその小さな部屋には、人が1人住めるような造りになっていた。
おもむろに着替えを渡される菜々美。
「これに着替えて、この先にある洗濯場に来てちょうだい。急いでね。あと… 」
そう言いいながら女性は、菜々美の額に手を当てた。
「この前髪邪魔ね… 」
少しばかり、菜々美の目が覗かせた。
咄嗟に顔を隠す。
「まぁいいわ」
そう言うと、女性は足早にその場から去って行った。
渡された服を広げる菜々美。
先程の女性と同じような、長めのスカート丈のワンピースだった。
それと一緒に、エプロンと帽子もある。
部屋を見渡すと、古めかしいベッドに小さな机が配置されていた。
小さな窓から見えるのは、ほぼコンクリートの壁だ。
隙間から庭のような物が見える。
「本当… どこよ、ここ」
そして、この時から菜々美の使用人としての日々が始まったのだ。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
今後、作者がイメージしながら聞いていた音楽をその都度、参考までに載せておきます。もちろんお好きな曲を聴きながら、楽しんで読んで頂けるといいと思います。
あまり、ボーカロイド音楽を聴いた事がないので、何かオススメなのがあれば、メッセージ等下さると嬉しいです。(ピアノの旋律がある物だと尚、嬉しいです)
文章に乱れや疑問がある場合もメッセージ等頂けると嬉しいです。
また、心ばかりの評価なども頂ければ大いに喜びますので、宜しくお願いします。