攻略One:絵夢先生の魔術講座
月曜日、春休み開け校内テスト最終日。
「ダメだった。全然ダメだった・・・」
休み時間に入り、伊賀崎 優汰は開口一番にテストを解いた感触を姫里 風花に伝える。
「獣魔退治にかまけて、昨日一時間も勉強しなかったからでしょ。」
「いや、だって、つかれてたし。」
「なんでカタコトなのよ・・・戦ってたのほとんど青依さんじゃない、優汰ちょっと魔術使っただけだし、魔術を使った回数も青依さんの方が多かったし。別に疲れるほどのことないでしょ?」
「いや、別にそんなことないよ。照応魔術は魔力消費が多いし。それに・・・」
「テストどうだった?姫里さん!!!」
後ろから萱瀬 蓮人が急に大声で話しかけてきた。
「「びっくりしたー・・・」」
「二人だけでハモんないでよー!俺も混ぜて❤︎」
男が言うと控えめに言って気持ち悪いのだが、顔が良い分気持ち悪さよりイライラが勝ってしまう。
「混ぜないし、要件が無いなら席に戻って。私、あんたとあんまり話したくない」
「そんなこと言わないでよ~ねえ~テストどうだった?」
陽キャ特有のテンションは二人にはうざったく感じられる。
「別にいつも通りだけど?」
「へえー伊賀崎は?」
「ぼくはちょっとだめだったかな~」
蓮人の問いに馬鹿正直に返す優汰。
「はあ~お前、姫里さんに教えてもらってダメダメなの~?マジ~!?バ~カ~や~な~!」
「(怒)!!!」
「姫里さん、こんな奴より俺に教えてくれた方が伸びるよ?今日俺ん家で勉強しね!?」
家に連れ込みたいだけだろ!と言いたくなる気持ちをぐっとこらえる。風花の前で、そういうことは言いたくないからだ。
「あんたに教えるわけないでしょ?優汰よりは成績いいんだから自分で勉強したら?」
「釣れないね~。あれ~インナー染めたの?めっちゃ似合ってるじゃん!」
「あんたに褒められてもうれしくない。」
相変わらずの塩対応、蓮人もこれでよくめげないものだ。
学校が終わり家に帰る。
「ただいまー」
「お帰りー。優汰、青依ちゃんが呼んでたよ。」
絵夢が車椅子でお出迎えだ。絵夢は中1の時、交通事故で足が動かなくなり、左目と魔力器官がつぶれ、車いす+眼帯になった。
魔力器官が潰れたので魔術師も出来なくなり当時小5の優汰が代わりに魔術をやり始めた。
「じゃあ、その間にまた魔術のことを教えてもらってもいいですか?」
「うん、じゃリビング行こうか。」
眼帯の上から眼鏡をかけて絵夢先生が授業を始める。
「昨日、魔術の始まりと魔法使いについてまで教えたね。じゃあその続き、魔術師達の最終目的から。魔術を研究する魔術師達のほとんどは最終的に7つ全ての魔法を完成させて、それらを使いこなし『 』と変わらない力を手に入れるために魔術を研究するの。まあ要は神様になりたいってこと。」
「じゃあ、私これから神様を目指すんですね。」
「魔術師の大半がそうだけどもちろん全員じゃない。魔術をお金稼ぎに使う人もいるし、人助けに使う人もいる。それら全部を含めて魔術を使える人を魔術師っていうの。目指したいなら目指してもいい・・・魔術を学んで何をするかはその人次第だよ。」
絵夢が開いた本を風花に渡す。
「じゃ次は魔術の原理。魔術は魔力を術式に通すことで動くもの。まずは魔力、魔力は魔力器官と言う魔術的な臓器で、生命力から変換される。魔力器官の場所は心臓の右辺りちょうど胸の真ん中にあるんだ。ちょっと起こしてみようか。」
「はい、胸の中心・・・」
「このあたりかな?」
絵夢は風花の胸の中心に鍵の様なものを当てる。
「ちょっと痛いかもだけど我慢してね・・・」
「え?・・・あっっっ!!!」
鍵を当てられた箇所に激痛が走り、風花は床に倒れ伏す。
「風花ちゃん、おっぱい何カップ?」
「何聞くんですか!!!?」
「ごめんごめん、私の高2の時より大きいなって思って・・・痛かった?」
「はい・・・凄く。」
風花はちょっと涙目になっている。
「この礼装で魔力器官を起動すると痛いんだよね~。特に魔力器官を普段から使ってない人だと礼装無しでも痛いから。」
「それ無しでも、今の、出来るんですか?」
風花は鍵型の礼装を見ながら質問する。
「感覚を覚えればね?まあ自力で器官を起こせるのが一人前への第一歩かな~。あ、礼装っていうのは簡単に言えば魔術を使うときに使う道具。」
「優汰も昔はこれ使ってたんですか?」
風花は胸を押さえながら立ち上がる。
「うん、お父さんが生きてる間はお父さんがやってたけど、死んじゃった後は使ってたよ。魔力器官がつぶれた私じゃ優汰の魔力器官起こせないからね。」
絵夢は礼装をしまい話を戻す。
「さて、説明に戻ろうか。魔力は魔力器官で自分の生命力を変換して生み出される。だから魔力器官が無いとそもそも魔力を生み出せない。
「つまり魔術を使えない。」
「そういうこと!・・・次に術式、術式は魔術が稼働する理論の事ね。」
そう言いながら絵夢は、ホワイトボードにラテン語の文章の様なものを書く。
「これを頭に思い浮かべて。そして胸から湧き出るものを頭に持って行く。」
言われた通りに風花はイメージする。すると、
「なんだか足に力が湧いてきます!」
「それが強化の魔術。軽くジャンプしてみて?」
軽いジャンプで天井に触れられる程に風花の脚力は上がっていた。
「こうやって、術式に魔力を通すことで魔術は発動する。強化魔術は体全体どこでも使えるし、武器とかにも使える。基本中の基本、初歩的な魔術だね。」
楽しそうに跳ねる風花を見て、絵夢は魔術を習いたての頃の小5の優汰を思い出す。
「ついでに優汰からのメールにあった消費魔力と魔力能力についても教えるね。」
机の本のページを捲り、風花に渡す。
「それぞれの魔術には魔力をどれだけ使うかが比例的に決まっている。強化の魔術の場合は強化のした時間と、強化した物の体積、あと、どれだけ強くしたかで消費する魔力が決まる。強化は燃費もいいし術式も簡単だけど、青依ちゃんの構築は燃費最悪で、術式も複雑だからおすすめはしないかな?」
「へえ。」
「魔力を消費するってことは、その分生命力を変換したってこと。だから魔術を使うと疲れるんだよ。要は命にかかわらない程度に命を削ってるようなものだからね。」
「あの、ミラージュって言うのは?優汰が使ってたんですけど。」
「え!?優汰が使ったの!!!?・・・えっと、mirageってのは照応魔術のことね!照応は大分魔力使うね。本来なら生贄とか使うやつだし。」
あの優しい絵夢の口から生贄という言葉が当然のように出てきたので、風花はちょっとだけ驚く。
「それと、魔力能力だけど、これは生命力から魔力への変換効率。魔力量とも言うんだけど、生命力1でどれだけ魔力を作れるか。生命力1で魔力1なら魔力能力は1。優汰は魔力能力5だから、生命力1で魔力5だね。魔術師の平均値は魔力能力5~7。魔力能力は生まれつきのものだけど、小さい頃から毎日魔術の練習して魔力器官の成長を促せば1~2ぐらいは伸びるから。」
「毎日ですか?」
「そう毎日。優汰だって毎朝やってるよ?・・・22歳過ぎたら今度は衰えてくるから、維持するためにも毎日やる。魔術はその積み重ねだからね。」
「何十代もですよね?まあ勉強も一緒か。」
「魔術だって学問だからね・・・ここまでにしようか。続きは明日ね。」
少し時を遡る。優汰は青依と、話をしていた。
「昨日のRKのことなんだけど、午前中考えたら色々おかしな所があったんだ。まず第一になんだけど昨日の夜、何故RKが風花が一般人だと知ってたのか。」
優汰がこれまで『風花は一般人である』として接してきたために違和感を感じなかったことを青依から指摘されハッとする。
「それに付随して、優汰と一緒にRKと会った午前中も、優汰のことを知ってる感じだった。もしかしたらRKは優汰と風花の身近な人物じゃない?・・・例えば自殺したお父さんが実は生きていて、RKとして獣魔を町に放ってるとか?」




