結成Four:その世界の名は、
目を覚ました姫里 風花はの視界は自分の部屋のものじゃない、でもどこか見覚えのある天井で埋め尽くされていた。
「ん?」
明らかな異常事態のに脳がこの状況を理解しようと思考を加速させる。
異常事態というのは天井が違うということではない。
そのことは、周りを見回したことで幼馴染の伊ケ崎 優汰の家だと理解した。
問題はそれよりも、
「おはよう、姫里風花さん。」
見知らぬ同年代ぐらいの女の子がベットの隣に椅子を置いて座っていることだ。
「え、何?だ、誰?今どうゆう状況?」
「私は逆凪 青依。昨日、君を助けた第五魔法の魔法使い。」
なんか凄く厨二病ぽい発言に、ますます風花の理解は追い付かない。
「おはよう、風花。足痛くない?」
優汰が部屋に入って来る。質問の意図がわからないが、とりあえず答える。
「う、うん。大丈夫だけどこれどうゆう状況?」
「そっか!じゃあ状況を説明前に一つだけ、昨日あそこで何してたの?」
優汰の質問にある『あそこ』がどこかわからない。風花は昨日のことを振り返る。
「昨日?昨日は、美容院に行ってインナーカラーしてもらって、そのあとちょっと買い物して、家に帰ってテスト勉強して、そしたらお兄ちゃんが帰ってきて、インナー入れたことでお兄ちゃんとケンカになって、家飛び出して、泊めてもらおうと思って優汰の家に向かってて・・・あれ?」
「いいよ、聞きたいことは聞けた。」
優汰が風花が昨日あの現場にいた理由を聞き出す。
つまり風花は、何の荷物も無しに家出してきたということだ。普段はダルそうな雰囲気をまとってる風花だが、兄とケンカする時はダルさと冷静さが見る影もなくなる。
まあ、兄とケンカする時以外にもそうなることはあるのだが。
「じゃあ、状況を説明するよ?非現実的だと思うだろうけど、風花昨日獣魔っていう化け物に襲われてたんだ。」
「うん・・・うん?」
昨夜、大型獣魔を撃破してすぐ。
眠れ
青依が風花を眠らせたはいいが、優汰は風花にどうごまかすか迷っている。魔術連合の規則である魔術連合規定の第一条
『どのような手段を用いても一般人には神秘を秘匿すべし。』
があるため、魔術とそれに付随するものを一般人の風花に知られるわけにはいかないのだ。これを守らないと最悪の場合、優汰も風花も粛清される。
「風花、どうしようか?」
青依に意見を求める。
「一応、記憶消去の使い捨て礼装持ってきてるけど、100個持って来てたのに残り10個しかないから、知り合いなら自力で何とかして欲しい。」
「マジかー・・・どうしよう、なんかピンクのインナー入れてるなー。めっちゃ似合ってる。」
優汰は風花の髪色の変化に目が行く。
「現実逃避してる場合じゃないでしょ?とりあえず脚の怪我、治癒するから。・・・あれ?この子『魔力器官』がある。」
「え!!!?」
魔力器官は魔力を捻出するための魔術的な臓器。これが無いと魔術師には成れない。
逆に言えば、魔術師に成るだけなら魔力器官があれば良い。
「確かに魔力器官は一般の家系の人でも持って生まれることはよくあるけど、まさか風花が持ってると思ってなかったた・・・」
魔力器官をもってるかどうかは"知覚の魔術"で検査する。知覚魔術は物体に一瞬だけ魔力を流して、対象の構造を正確に把握する魔術だ。おそらく治癒の魔術を行使したことで偶然見つけたのだろう。治癒魔術は魔力を怪我人に流すことで相手の再生力を高める。魔力を流すことは一緒なので、治癒しながらうっかり知覚も同時にやっちゃった。というのは優汰もよく聞く。優汰は治癒も知覚も使えないので実体験ではないが。
「この子も魔術師にしちゃえば?魔術をこの子に隠す必要もなくなるし。」
「ってことで魔術の勉強してもらうから!」
「はぁあああ!!!?」
優汰のあまりに非現実的な発言に風花は困惑を隠せない。
「てか、何?優汰、魔術師だったの?ずっと黙ってたの!!!?」
「ずっとじゃないよ。姉さんの事故から。」
魔術などと言う、怪しさ全開の何かをやらされようとしていることに戸惑う風花に対して、もう魔術のことを隠さないでよくなった優汰は殴りたくなるほど晴れやかな顔をしている。
「おはよう、三人共。朝ごはんできたよー。」
優汰の姉の伊賀崎 絵夢が呼びに来たので食卓に移動する。
朝食を取りながら話の続きをする。
「じゃあ姉さんに魔術を教えてもらう形で。僕は風花の家に行って風花の兄さんに家に泊めることを報告して、風花の着替えを取ってくるから。ご馳走様。」
「私も帰る。朝食ご馳走様、絵夢。」
優汰と青依は家を出る。
家の前で青依と別れ、風花の家に着く。インターホンを鳴らすと、
「やあ優汰くん。君が来たってことは風花は君の家にいるのかな?」
風花の兄、花斗が出迎える。
「お久しぶりです、花斗さん。風花をうちに泊めようと思うんですけど、いいですか?」
「もちろん、いいとも!むしろ、風花がお世話になるんだ、こっちからお願いするよ。優汰君くん家なら安心して預けられる・・・上がって待ってて、風花の荷物をまとめてくるから!」
家に上がりだされた紅茶を飲みながら待つ。アールグレイか、ダージリンか、コーヒー派の優汰にはわからないが普通にストレートで飲めたことに自身の成長を感じる。
優汰は子供舌であることを気にしている。コーヒー派といったが、コーヒーを飲み始めたのは小6の頃だ。それま全然飲めなかったにも関わらず、ある時を境に飲めるようになった。
「これが成長と言うやつか。」
優汰が独り言を言っていると、
「どうしたの?成長って。まあ確かに背は伸びたよね、優汰くん。」
「ああ、いや、そうゆうわけじゃ。」
花斗に独り言を聞かれて優汰は少し恥ずかしくなる。
「はいこれ、着替えとか、制服とか、あとお小遣いも入ってるから。」
ケンカ中でもお小遣いをちゃんとあげるあたりに、花斗のブラコンが見え隠れする。
「ありがとうございます、じゃあこれで失礼しますね!」
「うん、じゃ風花のことよろしくね!」
風花の日用品と食材を買い足して家に帰る途中、優汰は青依とばったり会った。
「あ、優汰。・・・ちょうどよかった。ちょっと付き合って?」
青依は普段通りのローテンションな口調でそう言うと、返事を待たず優汰の腕をつかみ歩き出す。
「街を歩いてたら、頭の中に『街外れの廃工場に来い。』って声が流れてきて、もしかしたら獣魔を町に放ってるやつかもしれない。"幻聴魔術"でコンタクトを取ってきた。じゃあ、相手も街中で騒ぎを起こしたくないはず。」
「幻聴魔術?」
優汰には聞きなれない魔術だ。
「幻聴魔術っていうのは、相手の脳に直接言葉を送る魔術のこと。幻術に分類され、マイナーなものが多い幻術の中では比較的有名だと思うけど?」
「僕、幻術は"暗示の魔術"しか知らなかった。」
伊賀崎家はあまり幻術に関わりがない。
そうこうしてるうちに二人は街外れの廃工場に着いた。中に入ると、黒いコートのフードを深くかぶって顔を隠した男?が、ボイスチェンジャーで変えた声で話しかけて来る。
「やあやあ、呼びかけに応じてくれて感謝するよ、抑止の使者!それと・・・なぜ君がここいる?」
「あなたが、連日獣魔を町に放ってる犯人?警察どころか抑止力のお世話になるなんて悪い子ね?」
青依は、男?に対して母親みたいなこと言いだした。
「悪い子か・・・ふっ。確かに、獣魔を放つ犯人は僕だ。まあ君のことは今はいい。さて、挨拶代わりと言っては何だけど、まずはこいつらの相手をしてもらおうか。」
犯人は、そう言うと指を鳴らす。すると小魚型の獣魔の大群が現れ、
「さあ、戦闘開始だ。」
そう言い残し、犯人は消えた。
優汰たちは苦戦していた。
「くっ、一体一体は大したことないけど、数が多い!!!」
黒魔術は儀式向きで戦闘には適さない。こういう場合、優汰は魔力をエネルギー弾として打ち出す魔力弾しか攻撃手段がない。魔力弾は魔力を塊にして打ち出すという性質上連射できず、優汰の技量では『生成した魔力弾を分割して弾数を増やす』こともできない。
「ふっ、はっ、はあああ!」
青依も武器を構築して戦うが、範囲が足りない。
「うわっ!」
小魚型獣魔の体当たりに優汰のメガネが外れる。ダメージもあるがそれよりも、獣魔の攻撃対象が優汰に集中する。
「優汰っ」
青依が優汰の前に立ち、
防御結界!!!
詠唱によって展開した防御結界で押し寄せる大群を防ぐ。
「・・・・・優汰、私より後ろに下がってて。」
「わ、わかった!」
後ろに下がったことを確認し、青依はしゃがみ込み、目を閉じ、詠唱する。
解き放たれよ。
空は黒く、柵が囲い、
暗き草原に小屋が一つ。
蒼炎が舞い、生気は無く、
貴方を逃さぬ死が漂う。
その世界の名は、死の箱庭。
詠唱に応じ、黒く暗い世界が顕現した。




