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ワルプルギスの夜  作者: 崇詞
終局編
25/26

終局Five:断罪と救済

「これで最後だ・・・伊賀崎 正嗣(いがさき まさつぐ)!」


伊賀崎 優汰(ゆうた)は受け取った青依の記憶から構築魔術を習得し、剣を構築する。


周期機構、起動(システム・オン)


優汰の髪は色が抜け落ちて白くなり、全身が死と再生を繰り返す。

周期機構による莫大な魔力で強化した剣で正嗣に切り掛かるが、正嗣は転移で回避する。

「魔法使いの肉体を得ようと、私に攻撃を当てなければお前は勝てんぞ、プリテンダー!」


解き放たれよ




姫里 風花(ひめさと ふうか)萱瀬 蓮人(かやせ れんと)、そしてバルリア・アンラ・トシティは5階に辿り着き、伊賀崎 絵夢(えむ)を起こす。

「風花ちゃん、蓮人君・・・貴方は?」

「魔術連合執行部、一等執行官、バルリア・アンラ・トシティです。萱瀬蓮人と伊賀崎正嗣の身柄確保の任務で来ました。」

「アンラの家の・・・自分の悪性(アンラ・マンユ)と向き合うゾロアスター系の悪性魔術。」

「私の家のことは後回しに、立てますか?・・・失礼、車椅子でしたね。」

「あ、足が動く!」

絵夢が自分の足に感覚があることに気づく。

「ってことは、儀式は止められなかったんだな・・・」

全員が当たりを見回す。魔力を吸い尽くされた生贄達の自体が転がっている。

「いよいしょ・・・うわっ!」

四年半も車椅子だった絵夢には、いきなり立つのは難しいようだ。

「あーあ、青依ちゃんに怒られちゃうな・・・」

「やっぱり、あんたは協力したんだな!この儀式に・・・」

「まあ、やっぱり優汰に黒魔術を背負わせるのはね・・・」

「・・・結局あんたも黒魔術師なんだな。」

蓮人は絵夢に責める様な声ではなく憐れむ様な声でそう言った。

「うん・・・でも、優汰はそうじゃ無いから。」




解き放たれよ


空は赤く、地は山積みの白骨。

後光と紫光。

夜の群れ。

(うた)は失せ、模様は失せ、魔力も失せた魔術。


その世界の名は、地獄より産まれる物(メイド・イン・ヘル)


「心象結界か。これがお前の・・・それで?この心象でお前は何をする?」

「ここは地獄。断罪こそが、救いだ。」

優汰の脳裏に心象世界での青依の言葉が浮かぶ。


「一つだけ、約束して優汰、伊賀崎正嗣を救ってあげて。」


「救いだと?」

「青依の記憶の中にお前の心象世界の記憶があった。お前は精神的完成された黒魔術師じゃない。そのを()()しただけの


ただの人間だ。」


「何!た、戯言だ!」

「心象世界は心のありのままを写す。お前の心象世界はお前が犠牲にして来た全ての人間に責められ続ける世界だった。それがお前に残された人間性だ。生贄を殺す事に躊躇わない、でもお前が殺した全てが心の中でお前を蝕んでいる・・・もういいだろ?魔術の継承はもう済んだ。お前の目的は果たされた。それで満足しとけよ。」

優汰が正嗣の前から姿を消す。

「ど、どこだ!」

「ここだ!」

正嗣の背後から剣を突き刺す。正嗣は転移で回避するが、

「少々、掠ったか・・・」

背中から血を流す。術式の組み立てが間に合わなかった。そして、また優汰が姿を消す。

「これは・・・転移か!だが、装飾魔術じゃない!装飾魔術には詠唱が必要なはずだ。」

「ああ・・・そうだ!!!」

横から首を目掛けて振るわれる優汰の剣を、正嗣は盾を構築して防ぐ。

地獄より生まれる物(メイド・イン・ヘル)は、要はPCだ。術式の組み立てと魔力生成をこの結界自体がオレの代わりに行なっている。地獄を表すこの結界が産み出す魔術をオレはイメージするだけで使える。」

「それがお前心象結界か・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」




5階の儀式場。

「おい!これ!」

15人の生贄が次々と生き返っていく。

「これは!青依さん!?」

「いや、青依ちゃんがこの場に居ないのはおかしい。」

「ああ、そうだ。第五魔法は召喚術や治癒魔術の源流・・・この場に居ないのはおかしい!距離が離れればその分、座標情報まで術式に組み込まなきゃ行かなくなる。それも15人分だ。それが出来るならあいつの頭はP()C()()()()()()()()()()()()()()()()()()()有り得ねえ。」




正嗣を剣で切り付ける優汰。

「ふっ・・・はっ!」

「うわっ!!!」

正嗣はそれを躱しながら蹴り飛ばす。剣が手から離れてしまう。

「はあああ!」

離された距離を転移で詰めて正嗣を殴る。

「ぐうっ!!!」

殴られて仰け反る正嗣はその反動を利用して優汰を蹴り上げる。

「はあ!」

空中で剣を構築し、落下しながら切りつける。

「何!」

正嗣は強化した両腕で剣を受け止める。

「はっ!」

着地してすぐ足払いで正嗣を倒し、首に剣を突きつける。


「オレの、はあっ、はあっ、勝ちだ!」


「ああ、そうだな。私の敗北だ。」

心象結界が壊れ、髪色が元に戻る。

目の前に迫る死を前に、穏やかな顔で敗北を受け入れる。

「殺せ。それが正しい断罪だ・・・下にバルリア・アンラ・トシティが来ている。」

「バルリアさんが!?」

「連合の上層部は保身と世襲、そして利益の独占しか考えていない連中だ。お前が私をバルリアに引き渡しても、私は首だけの状態で生かされるだろう。それは正しい断罪では無い。15人、いやそれ以上の人間を殺した。余罪も多い。となれば死刑だろう。」

「この国の法律に従えばそうだな。」

「だが、そうはならない。魔術連合に渡ればな。だからお前の手で断罪しろ。」

「勝ち逃げされた気分だよ。オレに負けることさえ織り込み済みかよ。」

「そう言うな誇っていい・・・・・ではな、成り代わる者(プリテンダー)


もう1人の息子よ・・・」


ああ、オレが優汰の偽物だとしても、正嗣はオレのことも息子だと思っていたんだな。

「さよなら、父さん。」




転移で5階に降りる。

「「「優汰!」」」

「終わったよ、みんな。」

「優汰君、伊賀崎正嗣はどこだ?」

「・・・殺した。」

「そうか。」

「怒らないんですね。バルリアさん。」

「怒られた方が君の心が楽になるなら、怒ってもいい・・・絵夢さんから事情は聞いている。」

仕事中は無表情なバルリアが心配そうな顔をしている。

「だが、やっぱり君の精神状態が心配だ・・・大丈夫か?」

「ああ、そう言う風に作られてるからな・・・」

「そうか・・・」

バルリアは仕事モードに戻る。

「優汰、青依さんは?」

「・・・青依は、僕に体をくれて、それで・・・」

そう言って風花の手を握る。

「冷たい・・・本当に青依さんの体なんだ・・・」

「とりあえず、家に帰ろう。まだ立てない人も居るしな。」

蓮人が絵夢の方を見る。

「そうね。帰ろう、優汰!絵夢さんの車椅子、ここには無いから。」

「ごめん、みんな・・・」

体が消えかかっている。

「な、何で!?」

「僕の体は青依のものだから・・・青依の代わりに『死者の国』に帰らなきゃみたい。」

「待って!待ってよ優汰!約束してくれたじゃん!ずっと一緒にいるって!」

取り乱す風花を抱きしめる。

「風花、待ってて。必ず、戻ってくるから。」

「・・・約束、して。」

「ああ、約束する。」

「優汰・・・」

風花の涙が服の胸部を濡らす。

「これだけは言わなきゃ・・・


風花、好きだよ・・・」


その言葉を残して優汰は退去する。

「優汰・・・」

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