終局Four:体をあげる
「勝って、そして生きて欲しい。」
逆凪 青依の言葉を受け取り、伊賀崎 優汰は伊賀崎 正嗣に立ち向かう。
「来い!プリテンダー!」
「行くぞ!正嗣!」
優汰が先手必勝とばかりに懐に潜り込み、みぞおちに強化した拳を見舞う。
「はっ!」
正嗣は転移で回避しつつ優汰の背後をとる。
「たああああ!」
優汰は背後の正嗣に回し蹴りで首元を狙うが、魔力の壁に阻まれる。
「お仕置きだ。」
正嗣が強化した拳骨を優汰に打ち込む。
「痛ぅぅぅ!」
「遅い。」
正嗣が回し蹴りで優汰を部屋の壁に吹き飛ばす。壁に打ち付けられた優汰に正嗣が魔力弾を放つ。
「くっ!」
優汰はギリギリで回避する。優汰も魔力弾で反撃する。正嗣は転移で回避しつつ優汰の首を掴む。
「私も、もうアラフィフだ。ステゴロではお前に勝てん。だが、私の魔術を突破しない限りお前の勝ち目はないぞ?」
「うっ!」
正嗣の胸ぐらを両手で掴み、頭突きをかます。
「な、ぐっ、あああ!」
正嗣は優汰を放し、頭を抱えながら後退りする。
「はあ、はあ、はあ。初めてまともなのが入ったな。」
すかさず、優汰は殴りかかる。正嗣は優汰を転移させ、転移した優汰の拳は空振り、勢い余って壁に激突する。
「この野郎・・・」
正嗣が魔力弾で優汰の真上の天井を攻撃する。崩れた天井が優汰に向かって落下してくる。
「マジかよ!」
ギリギリで回避して優汰は魔力弾の仕返しをするが、正嗣の魔力の壁に阻まれる。
「はあ、はあ、はあ・・・」
「どうした。もう息切れか?」
「お前と違って、こっちはまあまあ動き回ってんだよ!はあ。」
「・・・ここでは、絵夢を巻き込みかねんな。」
「こんなものか・・・」
「すげえ・・・・・」
バルリア・アンラ・トシティが獣魔を殲滅し尽くす光景を目の当たりにして姫里 風花と萱瀬 蓮人は驚愕する。
「守護者の理論を応用したものと聞いていたが!・・・・・歯応えの無い。」
圧倒的な戦闘能力に獣魔達はなす術がない。
「これか。」
オートキャストの魔法陣をバルリアが破壊し、獣魔を止める。
「あ、ありがとうございました!危ないところを助けていただいて!」
「任務ですから、お気になさらず。」
「任務って、バルリア一等執行官?」
「獣魔の殲滅、そして・・・お前と正嗣の身柄の確保だ。」
「そうなんですね!どうぞ、萱瀬です、連れて行って下さい!」
「姫里!薄情が!」
「大人しくしていろ、それで怪我はしない。」
「もっと女らしくしたらどうなんだ?可愛げないな!」
「ほう、体が大人しくなったら口が悪くなってきたな。」
この後、めちゃくちゃ殴られた。
正嗣が自分と優汰を転移させ、屋上に移動する。
「はあ、はあ、はっ、はあ。」
「来い。」
「うおおおおおお!」
息を整えて、優汰は再び正嗣に殴りかかる。だが、
「あっ、うっ、胸が・・・」
「・・・終わりだ。」
「な、に?」
「お前は後1日ほど魔力が持つはずだった。だが、戦闘による激しい運動で心拍数が上昇して、本来持つはずだった心臓の魔力が尽きようとしている。」
「優汰!」
「青、依・・・」
「優汰・・・私の体をあげる。」
青依は紙を取り出す。
「それ、は?」
「青依、一応食事を持って来たよ・・・・・何これ!?」
床一面にばら撒かれた大量の紙。その紙一つ一つに魔術の術式がびっしりと書かれている。
「何って、君を救う為の魔術だよ?優汰。」
「あの、時の・・・」
優汰は意識を失う。
「待ってて、今助ける。」
大量の紙に青依は魔力を込める。込められた魔力で魔術が発動し、優汰の『魂』を『肉体』から切り離す。切り離された魂を青依の肉体に繋ぎ止め、優汰の肉体情報が青依に上書きされる。そして元の優汰の肉体が間抜けの殻になる。
「優汰。」
「青依?」
「私の体を優汰の肉体情報で上書きした。もうこの体は優汰のものだよ。」
「ま、待って!青依!」
「一つだけ、約束して優汰・・・バイバイ、優汰・・・」
「青依ーーー!!!」
優汰は目を覚ます。
「これは・・・」
優汰は自分の体の違和感に気付く。生きているとは思えないほど低い体温、全身の浮遊感、そして先程までの胸の苦しさは跡形もなく無くなっていた。
「な、何が起きた!!!?魔法使いがプリテンダーに!?」
「青依が、オレに体をくれたんだ・・・」
正嗣が紙に書かれた術式に目を通す。
「なるほど・・・『ワルプルギスの夜』の応用か。自身の肉体情報を上書きして、優汰に譲ったわけか・・・本来なら慎重に行わなければならない『人体に対する変化の魔術の行使』も、魔法使いの肉体なら関係ない・・・」
正嗣は術式から何が起きたかを分析する。
「これは・・・そうか、第五魔法!死者の蘇生は死者の魂の召喚、致命傷の治癒、そして魂と肉体を繋ぎ止めて、寿命を装填する。」
「・・・正嗣。」
「・・・なるほど、『ワルプルギスの夜』と第五魔法の合わせ技か!面白い!」
「正嗣!・・・お前を断罪する!青依との約束なんだ!」
「ほう・・・では先程の続きということか?プリテンダー。」
「これで最後だ・・・伊賀崎正嗣!」




