終局Three:私の存在
姫里 風花と萱瀬 蓮人は大量の獣魔に苦戦する。
「萱瀬!もっと獣魔出しなさいよ!あんたのこと守り切れない!」
本人に戦闘能力が皆無な召喚術師の萱瀬を守る風花は魔術初心者であるため強化魔術の効きが弱い。彼女の格闘は半分ぐらいが素の戦闘力であり人間相手ならば常人離れした強さだが、獣魔相手には少々心もとない。
「くっ!!!」
本当に、萱瀬を守り切れない!
アンサズ
迫る獣魔が詠唱に応じて発火する。
「魔術連合、執行部一等執行官、バルリア・アンラ・トシティ、現着した・・・
これより獣魔殲滅を開始する!」
ハエの悪魔、バエルを相手に伊賀崎 優汰、逆凪 青依は立ち向かう。
壁
バエルが魔術で壁を作る。
「たあああ!」
魔力の壁を維持したまま突進してくる。
「うわ!」
青依は余裕を持って、優汰はギリギリ躱す。
「ハエってより、猪かお相撲さんね。」
「余計な思考だ、魔法使い。純粋に戦いを楽しもうぜ!」
「オレもいるんだけど!」
優汰はバエルに強化した蹴りを入れる。
「いいね〜!正嗣の旦那も最後の最後にいい仕事くれたぜ!」
「戦闘狂かよ・・・」
「悪いけどあなたとの戦いを楽しんでる暇は無いわ!」
「そう言うなよ!・・・楽しもうぜぇ!」
バエルが魔力の壁を青依にぶつける。
「くっ!!!神性特攻!」
「青依!!!」
「よそ見してる暇はないぜえ!!!」
強化されたバエルの蹴りが優太を吹き飛ばす。建物の壁に打ち付けられた優汰にバエルが迫る。
「ぐっう!・・・カッア!」
い、息が・・・出来ない!
「まず!1人目だあああ!!!」
転移
「はっ!!!」
魔力の壁と建物の壁に挟まれていた青依が転移で脱出し、バエルを蹴り飛ばす。
「優汰!」
青依が優汰を治癒する。
「オレよりも青依の方が!」
「私はどれだけ傷ついても平気だから・・・」
「それなら!オレだって別に死んでも青依が居れば・・・」
「優汰!」
青依が突然怒鳴る。
「それはダメ、それは・・・」
背後からバエルが爪で
優汰の心臓を貫く。
「優汰!!!」
「隙だらけだぞ!お前たち!!!」
「優太・・・」
周期機構、起動・・・。
大鎌を構築し、莫大な魔力で強化した一撃でバエルを一刀両断する。
其れは青の詩。其れは死の詩。其れは生の詩。
第五の奇跡。その詩よ、
死者の国よりここに帰れ。
光は零れ彼の者を癒し、
その魂と朽ちゆく骸を繋ぎ留めよ。
我は火と命を注ぎ、
その理から外れ、
死の逆行は、完成する。
祈りをここに、
Resurrection。
「青依・・・」
「先を急ごう・・・優汰。」
「うん・・・」
2(人が儀式の部屋に突入する。
「遅かったな・・・今終わったところだ。」
正嗣がそう言うと2人は部屋を見回す。
魔力を奪われた15人の一般人はミイラの様になって死んでいる。
「正嗣・・・お前!」
怒る優汰を無視して正嗣は青依を煽る。
「もう蘇生しても構わないよ、魔法使い。15人の命の為に私と敵対していたのだろう?」
「私が・・・」
「どうした?蘇生しないのか?」
「私が『死者の国』管理者になった理由があなたにわかる?」
「永遠の存在が故の別れからの逃避と言ったところか?」
「正解は・・・私はこの世界にいちゃいけない存在だから・・・」
青依は鋭く正嗣を睨む。
「命は!失ったら戻らない!たった一つの命だからこそ大事なの!・・・・・私はそれを壊した。・・・私と言う存在が、命を冒涜してるの!」
涙目で青依は訴える。
「なるほど・・・理解はできる。」
「私は死者を蘇らせる道具として扱われた・・・魔術連合の魔術師達に死者蘇生の礼装として扱われ、何か小さい戦争が起これば死んだ兵士を蘇生させ、そしてまたその兵士が死にに行く・・・私が!命の価値を落とした!」
その過去を戦争の存在ごと魔術連合上層部が秘匿している為、もちろん正嗣を始めとした現代の魔術師はその情報を知らない。
「では君は、今救える15人の命を見捨てるのか?私の目的は果たされた。別に君が生贄を見捨てるのならば、私はそれでも構わない。だが私ならば・・・」
「いい加減にしろ・・・一体、どれだけの命を弄べば気が済むんだ!」
優汰が青依と正嗣の話を遮り、正嗣に怒鳴る。
「・・・それが黒魔術と言うものだ。」
「そうやって僕も殺すのか。」
「心臓のことか?」
「そうだ。」
「君が邪魔をしなければこんなことをしなくてもよかったんだがな。」
「仮に僕らが邪魔しなくても、あんたが魔術連合に捕まって死刑になったら僕は死ぬじゃないか。」
「後継者になるためのホムンクルス、それがお前だ、プリテンダー。絵夢が後継者になった。その時点でお前の役目も完全に終わる。」
3人は祭壇の魔法陣の中心で、横になる絵夢に視線を向ける。
「結局、僕は死ぬのか。」
「邪魔しなければ何も知らずに死ねた。死の恐怖に怯えることも無くいつも通りの日常の中で死ねたのにな。」
「・・・それじゃダメなんだ。オレは、約束した。風花の側に居るって。それがたとえ『伊賀崎優汰』の偽物でも、この約束だけは破れない!」
再び2人は向かい合う。
「ではどうする?」
「その心臓を貰い受ける!」
「ふっふっふ!それでいい!私から心臓を奪って見せろ!プリテンダー!」
優汰は青依と向き合う。
「・・・青依、ごめん。」
「本当ね、最後の最後に優汰に裏切られた・・・でも、誰もあなたを責める事はできないわ。あなたを責める事ができるのはあなた自身と魔術の外にあるこの国の法だけよ。」
「そっか・・・」
「でも、私は協力出来ない。『ワルプルギスの夜』を妨害したのに正嗣の心臓を奪うのを許容するのは公平じゃないもの。」
その言葉で優汰は身構える。
「警戒しないで、ただ私は手を貸せないってこと。」
「なんだよ、びびらすなよ。」
「こんなこと本当は言っちゃいけないんだけど・・・
勝って、そして生きて欲しい。」
「来い!プリテンダー!」
「行くぞ!正嗣!」




