終局One:儀式の始まり
「クッソ!!!正嗣、ここに来て雲隠れかよ!儀式まで時間がねえぞ!」
萱瀬 蓮人そう言うと、テーブルの天板を殴る。
現在の日付は四月二十九日。一週間前の四月二十三日、伊賀崎 正嗣は拠点にしていた工房から姿を消した。正嗣が残した資料に載っていた拠点候補の三つにも当然姿は無く、夜見川市内のどのホテルにも居ない。
「蓮人、獣魔だ!それもこんな大量に!」
伊賀崎 優汰がスマホの画面を見せる。動画投稿サイトのライブ配信には溢れんばかりの獣魔が映されている。
「行こう!」
優汰、逆凪 青依、姫里 風花、蓮人が到着する。
「何だ、この数!」
「正面より反対側の方が、獣魔の群れが薄い。優汰、風花。二手に分かれる。二人は反対側に回って。」
「わかった!」
「優汰、ちょっと待って!」
青依と蓮人が残り、大量の獣魔と対峙する。
「なぁ、四人で後ろ周った方が良かったんじゃないか?」
「こっち側の獣魔を放置できないでしょ?」
蓮人にそう言うと青依は構築で武器を作る。
「・・・元々、異形の化け物がこんな大量に出てくれると、なんだか世界の終わりみたいね・・・・・蓮人、獣魔を召喚して。」
「いいのか?魔法使い。」
「今はとにかく戦力よ。貴方、自衛すら怪しいんだし。」
「まあ否定したいが、出来ないな。」
「私が守るから私のそばを離れないで。」
「わかった。」
解き放たれよ。
空は黒く、柵が囲い、
暗き草原に小屋が一つ。
蒼炎が舞い、生気は無く、
貴方を逃さぬ死が漂う。
その世界の名は、死の箱庭。
青依の心象結界が、近くの獣魔を覆う。
「はっ!たあ!風花!大丈夫!?」
「だ、大丈夫!」
裏側に周った二人ら強化した四肢による格闘で大量の獣魔を次々と薙ぎ倒す。
「苦労してますね、成り変わる物。」
「・・・騎士?」
わかりやすい騎士の甲冑が話しかけてくる。騎士の甲冑の隙間から人骨が見えている。
「・・・もしかして悪魔?」
「ええ。私は騎士の悪魔、ナイトと申します。」
「悪魔には珍しく礼儀正しいな。」
「『貴方を追い払うように』それが、マスターからのご命令です。」
優汰は構える。
「そう構えずとも、追い払うだけなら戦闘する必要はありません。」
転移
「転移の魔術!どこだここは!」
「行けませんね、プリテンダー。ガールフレンドと手をしっかり繋いで居ないとはぐれるかも知れませんよ。」
「!!!」
「一旦のインターバルです。貴方をご自宅に送り届けなければなりませんが、人間の転移は移動距離に比例して肉体に負担がかかる。悪魔や、あの魔法使いなら関係ないですが。」
「僕達の負担なんて気にするのか?」
「ええ、殺すなとのマスターの命ですので。」
「風花、下がってて。オレが倒す!」
「お前さんが、伊賀崎 絵夢だな?」
「ハエの悪魔!?」
動くな!
絵夢が眼帯を外し、人造魔眼、拘束の魔眼を使いバエルを拘束する。
「ああ、旦那が言ってた通りだな!悪魔でも動けねえ魔眼だとは!」
「旦那?」
「正嗣の旦那だ。お前さんを魔術師に戻す儀式の準備が整った、ってよ。一緒に来い・・・」
「・・・・・・・」
「ハロー、裏切り者と魔法使い。」
露出度高めな服装に身を包んだ美女が青依と蓮人の前に現れる。
「何、あなた?」
「サキュバス、正嗣が召喚した悪魔だ。事あるごとに正嗣を誘惑するが、正嗣が愛妻家だから振り向かない。」
「ちょっと!今の説明要らなかったでしょ!」
「寒そうな服ね、振り向かれない誘惑の為だけにそんな格好してるなんて同情するわ。」
「元々こう言う服装で召喚されたの。さっきはちょっと乗っかっちゃったけど、挑発なんて手には乗らないわよ。」
「そう、じゃ正々堂々と。」
優汰はナイトと、ナイトから渡された剣で打ち合う。
「うっ、くっ、うわ!」
「どうしました?その程度ですか?」
「剣の扱いは青依の専門だよ、馬鹿野郎。」
「人格が切り替わると言葉遣いも少し荒くなる様ですね。それとも余裕がなくて化けの皮が剥がれましたか?」
「うるさい、ちょっと黙ってて。」
ナイトの首めがけて横一閃。だがナイトが一歩後ろに下がった事で躱される。
「はっ!」
すかさずナイトが縦に剣を振り下ろす。
対魂術式・・・照応
ナイトが剣を優汰の寸前で止める。
「照応魔術!正気の沙汰じゃありませんね。私を道連れにする覚悟ですか?」
「いや、あんたの腕を信頼してただけだ。」
「うっ!?」
ナイトの胸を風花のナイフが突き刺す。
「ようやく先を見せた・・・」
「悪いな、ナイト・・・オレ誇り高い騎士様じゃないんだよ。実力で勝てない相手には搦め手で行くしかない。」
「その女を下がらせたのは、巻き込まないためではなく、この奇襲のためだったのか!!!」
「そう言う事よ、優汰の作戦勝ち。」
「嫌だ!まだ、まだあの男を殺していない!」
「・・・・・は?お前は正嗣の騎士だろ!?」
「私を信頼し、信用し切ったマスターをこの手にかけることが、私の唯一の楽しみだったと言うのにぃぃぃぃぃ!!!」
そのセリフを断末魔にして、ナイトは消滅する。
「『悪魔はあくまで悪い奴』・・・どれだけ、礼儀の良さで取り繕っても、所詮お前も悪魔だってことか・・・・・」
獣魔大量発生の中心地点。バエルが、絵夢を運び込む。
「連れて来たぜ、正嗣の旦那。」
「ご苦労。久しぶりだな、絵夢。」
「お父さん・・・・・会いたかった、でも出来れば会いたくなかったわ。複雑な気持ち・・・」
「そうか。では、なるべく手短に済ませよう・・・」
「本当にやるの?そこの、2、4、6、8・・・15人が生贄?」
生贄は手錠をかけられ、その手錠で天井から吊るされている。そして全員、魔術で眠らせられている。
「そうだ。何か問題があるか?友達が紛れているとか?」
「ないわよ。そう止まらないのね、お父さん。」
「この日の為の4年間だ・・・
大魔術『ワルプルギスの夜』を、執り行う!!!」




