解明Five:優汰の心臓
「第五魔法Resurrectionの魔法使いとして。」
逆凪 青依は『ワルプルギスの夜』を阻止すると伊賀崎 正嗣に宣言する。
「魔法使い・・・何故私が4月30日から5月1日の夜、ワルプルギスの夜を選んだかわかるか?」
「さあ?」
「その日が私の魔力が一番高まるからだ。私なりに生贄を減らす為に最大限努力をした。なら、今度はそちらに譲歩して欲しいのだが?」
「人を殺す予告をされて無視しろ、は無理じゃない?」
「・・・警告したのだかな。仕方あるまい。」
正嗣が指を振ると伊賀崎 優汰が胸を押さえながら苦しそうに倒れる。
「優汰!」
優汰に駆け寄る風花。
「優汰!優汰!どうしたの、優汰!?」
「大丈夫だ・・・ひとまずは次期に目を覚ます。」
心配する風花に萱瀬 蓮人は声をかける。
「優汰の、お父さん、優汰に、何を、したん、ですか?」
「プリテンダーの心臓に自動で行っていた魔力補給を止めただけだ。」
「魔力、供給?」
「プリテンダーの心臓は私の魔力で動くように作ってある。魔力供給を止めたことで心臓自体に残された魔力で動くように切り替わった。今の気絶は、切り替わる時に起こる心臓の一時停止だ。」
優汰が目を覚ます。
「風、花?」
「優汰・・・」
風花の目が死んでいく。
「プリテンダーの心臓に残された魔力は二週間分、その魔力を使い切ればプリテンダーの心臓は二度と動かない・・・余命二週間だ。」
「あ、青依さん・・・」
「無駄だ。私の魔力が必要な状態が完全な状態。治癒や第五魔法では治せない。」
「そんな・・・・・なんで?なんで、こんな事を・・・優汰も、『優汰』も、あなたの、息子じゃ無いんですか?」
「私は人の親である前に、神秘を受け継ぐ魔術師だ。自分の家の魔術が途絶えようとしている時に手段を選んでは居られない。」
正嗣は震える声で、それでも冷酷に言い放つ。
「別に、優汰を殺したかったわけではないが、万が一にもプリテンダーが魔術から逃げ出した時のための脅しだ。プリテンダー自体が使えないとわかった以上、本当にこれを使うことになるとは思っていなかったが・・・」
嗚呼、やめて。これ以上、私から優汰を奪わないで・・・
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。こんなに、こんなに優汰のことが好きだったのに、こんなに優汰に依存していたのに、壊されてしまう・・・
誰かに壊されるくらいなら・・・・・いっそ、自分の手で・・・・・・・
「旦那、だいぶ無理してるな。」
「そうでしょうか?」
「かー!ナイト、お前さん、そう言うとこだぞ!いいか?胎盤動物は卵生動物と違って一度に大勢の子供を産まねえ。その分子供一体の価値が上がるんだよ!旦那は自分の息子とその偽物に対して踏ん切りをつけちゃいるが、自分の息子と同じ顔の偽物を殺すのは答えるはずだ。」
「そうよ、ナイト?子供は大事なの。」
「その辺の理解は実際に種族として世界に根付いていたサキュバスの方がいいようだな。」
「ええ、もちろん!この私は夢魔と言う、神秘と共に滅んだ種族の象徴としての存在だから、女だけど男側の気持ちも理解できるわ。インキュバスの物だけど。」
「夢魔の化身だけど女性として現界しているから便宜上サキュバスと呼んでるだけでしたね。」
「まあ、俺らがどう思おうと俺らが出来るのは旦那が決めた事に従うことだけだ。」
四人は帰宅する。
「風花、あなたは少し休んだ方がいい。客観的に優汰より風花の方が体調悪そう。」
「わかった・・・」
風花は自室に戻り、優汰達はこのことを絵夢に話し、青依は知覚の魔術で優汰の心臓を調べる。
「確かに特定の魔力で動く仕組みになってる。」
「特定の・・・お父さんのって事だよね。」
「だろうな・・・一つ優汰を死なせない方法があるかもしれない。」
「蓮人、それって?」
「正嗣は『ワルプルギスの夜』を成功させたら全ての報いを受けるつもりだ。死刑と言われれば死ぬ。だから、優汰の心臓の仕掛けを使わなくても正嗣が死んだ時点で余命二週間だ。」
「確かに、そうね。」
「だから、正嗣の計画の中に優汰の命を繋ぎ止める何かがあると思うんだが、正嗣といた頃には何も見つからなかったんだよな。」
「自動行使術式によるオートキャストを使って心臓の機能を魔術で代用出来ればいいんだけど、それはそれで優汰の魔力量じゃ、だいたい半分ぐらい持っていかれるし、そもそもオートキャストを使えるほどの能力が無い。」
「さて、どうしたものかな。」
「姉さん・・・」
「優汰、怖いの?」
「うん・・・」
「大丈夫よ・・・」
絵夢は優汰を抱き締める。
「二人とも、申し訳ないけどイチャイチャしないで。気持ちはわかるけど真面目な話をしてるの。第五魔法の魔法使いとして儀式『ワルプルギスの夜』を認められないように、私は優汰の命を諦めるわけには行かない。」
絵夢は優汰から離れる。
「青依・・・・・本当に第五魔法じゃダメなの?」
「正嗣が言ってたように、正嗣の魔力が必要な状態が完全な状態。優汰を生き返らせることは出来ても、心臓を動かせないなら生き返らせた10分後にはまた死ぬだけ・・・そうか!」
「青依?」
「この方法なら、優汰を救える。」
青依は覚悟を決めたような表情になっていた。
「でも、まずは正嗣を倒さなきゃ・・・」
「優汰、風花の様子を見に行ってあげて。」
「なんで僕?青依が見に行けばいいじゃん。」
「そうするのは簡単だけど、気まずさから逃げてたらいつまでも元の幼馴染には戻れないよ?そうなったら、その先も無いかも。」
「その先?」
「好きなんでしょう?風花のこと。」
「なっ!?」
優汰の顔が赤くなる。
「わかりやすい。」
呆れたような顔をする青依、優汰は少し俯く。
「・・・勇気が出ない。」
「勇気?」
「『偽物』って拒まれたら怖いなって。」
優汰の顔が塩らしくなる。
「優汰って変なとこで臆病だね。獣魔には突っ込んでいくのに・・・」
そう言いながら青依は優汰の左胸に手を当てる。
「優汰なら大丈夫。」
「・・・・・えっと?」
「私の母がやってたものの真似。勇気出た?」
「うん、行ってくる。」
「いってらっしゃい。」
青依の表情は優しく笑っていた。
優汰は風花の様子を見に行く。
「風花、大丈夫?」
「・・・・・・・」
「入るよ?」
風花の部屋に入ると風花は口を開く。
「優汰・・・」
「ん?」
「優汰、大好きだよ・・・・・だから、
一緒に死のう?」




