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婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか  作者: まさかの
4章 友達はいかがでしょうか

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29 添い寝

 お茶会も盛況で無事に終わり、腕の良い商人達と貴族の橋渡しは成功と言えるだろう。

 部屋を出ていくみんなを見送った後にシリウスへお礼を伝えた。


「今日はわざわざ来てくださってありがとう存じます」

「来たくて来たんだ。カナリアが着る衣装だからね。俺も待ち遠しいんだ」



 シリウスは私の背中に手を回して抱き寄せた。

 お互いの体温を感じるほど強く抱き締められた。


「シリウス様!? 誰かに見られたら……」

「誰もいない……最近は二人っきりになれる時間も少なかっただろ?」



 忙しい日々を互いに送っていたので、朝食以外はほとんど会うことがなかった。

 といっても数日だけなのだが。



「今日の予定は仮面舞踏会だったな」

「はい。そうです」

「最近は頑張りすぎだ。今日は休め」

「ですが、私でないと──」



 シリウスは突然私を抱き抱えた。

 戸惑う私を無視して私の部屋まで運ばれ、そのままベッドの上に寝させられた。

 これはもしや、あの時の夜の続きが始まるのだろうか。



「し、シリウス様!? まだ心の準備が──」


 入浴も済ませていないし、仕事も残っているしと多くの言い訳が浮かんでくる。


「落ち着け、カナリア。君は気付いていないのかもしれないけど、少しずつ疲れが顔に出ている。俺が時間になったら起こすから少し休んでいい」

「あっ……そうでしたか」


 早とちりしてしまい、ものすごく恥ずかしい。

 彼の手が私の頬を撫でてその手の体温がすごく心地よい。

 最近は夜遅くまで書類仕事をしていたせいで寝不足が続いている。

 どんどんウトウトしてしまい、私はいつの間にか寝てしまった。



「ん……?」



 目が覚めると部屋の中は暗くなっていた。

 シリウスもいつの間にかおらず、私一人だけ取り残されていた。

 起きたばかりで頭がボーッとしていたが、すぐに今日の予定を思い出した。


「今日は大事な会合があるのに!」


 寝坊してしまい、これでは計画が台無しになってしまう。

 慌てて部屋を出ようとしたら、タイミング良くドアが開いた。

 現れたのはシリウスだった。


「カナリア、目が覚めたのか」

「シリウス様! 大変です……わたくしが寝坊してしまって……大事な舞踏会が……」



 約束を違えたら商人達との信頼を築くのが難しくなる。

 これを失敗したら最悪全てが終わってしまう。

 だがシリウスを落ち着かせるように肩を持った。



「大丈夫だ。俺が全部やっておいた」

「えっ……」


 私は目を何度も瞬いた。

 シリウスは懐から紙を取り出し、それは私が計画していたことを記していた物だ。


「カナリアが全部まとめてくれただろ? ずっと共有はしてもらっていたから俺でも問題ない。商人達からも協力してもらえると言質も取った」

「本当ですか! よかった……」



 これで大きな関門を突破した。

 ホッと息を吐いていると、シリウスは私の頭を撫でた。


「大変な時は俺を頼れ。これでも王子なんだ、いくらでも支える」



 シリウスは私の手を引いてまたベッドへ連れていく。

 薄暗い中のせいでお互いの顔が見えづらいので自然と顔が近くなった。

 ゆっくりと彼の唇が私の唇を奪い、そしてそのままベッドに押し倒された。

 そして唇を離すと彼は囁く。


「いつも綺麗だ、カナリア」


 彼はそう言ってまた優しく唇を触れ合わせる。

 私は恥ずかしさで何も答えることが出来ず、ただ彼を受け入れようとした。

 だが彼の手が服の上から胸を触られた時に思わず、前の夜を思い出した。

 シリウスが鉛の毒で苦しんでいた時に、彼からベッドに呼ばれ、結局は夜の務めを何一つ出来なかったことを。


 もしかしたらこれからその続きを行うのなら私は絶対に失敗をしてはいけないと強く思った。

 だが急にシリウスの手が私の体から離れた。


「ごめん、我慢出来なくなって……君の気持ちを考えていなかったな。そんなに怯えさせるつもりはなかったんだ」

「えっ……」



 彼は申し訳なさそうな顔をしていた。

 思ったよりも私は顔に色々出てしまっていたらしい。


「ち、違います! ただ、前のことがあったので……もう失敗が出来ないと……」



 これではまた淑女として失格だ。

 相手に気を遣わせ過ぎている。

 だがシリウスは安心したように、表情が和らいでいた。


「そんな心配はいらないよ。もう少しゆっくりお互いに慣れていこう。ただ嫌われていないことが嬉しい」



 シリウスもベッドの上に寝転がり、私と向かい合った。


「明日は久々遊びに行こう。カナリアをもっと知りたいんだ」



 シリウスは私の身体を抱き寄せて、私は彼の温もりに包まれた。


「分かりました。シリウス様のこともいっぱい教えてください」

「ああ……それと、俺のことはシリウスと呼べ。俺はそう呼ばれたいんだ」

「ですが……」

「だめか?」



 彼は少し意地悪な顔で聞いてきた。


「シリウス……」


 彼は微笑んで、私のおでこにキスをする。

 ずっと私の心を乱すせいで今日は眠れない気がした。


 と、思ったがわりかしすぐに眠ったようだった。

 朝起きるといつもよりもすこぶる体調が良く、久々にこれほど眠ったかもしれない。

 シリウスと共に朝食を私の部屋で摂る。

 だが目の前に座るシリウスは少しだけ疲れているように見えた。


「大丈夫ですか?」

「ああ……これは俺が慣れるしかないみたいだな」



 一体どうしたのだろうか。

 もしかすると私の寝相が悪くてシリウスの眠りを邪魔したのではないだろうか。

 しかし自分の寝相の悪さをシリウスから聞きたくない。

 一応エマに聞いてみようかと考えていると、シリウスから今後も一緒に添い寝をしたいと申し出があり、私はぐっすり眠れるのでいいが、シリウスは本当に大丈夫なのだろうか。

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