ナニカのユメ
目の前に一人、手足を拘束された人間が頭を垂れている。
その姿はさながら罪人か。
いや、彼は確かに罪人だったろう。その罪が何であるかまでは測りかねたが。
もしかしたら本来ここにいるべきであるような罪ではないのかもしれない。もしくはこんなところではまったく足りないような大罪を犯したのかもしれない。
でも、「私」にはそんなことを知る由もない。
だから、そんなことはどうでもよかった。
周囲の喧騒が高まる。
その人間の顔が恐怖にこわばる。
それまで幾分かおとなしかったそいつが、急に叫び声を上げ始める。
その叫びは悲鳴か、命乞いか、それともその両方か。
目に涙を浮かべながらも必死に何かを叫ぶそいつを尻目に、「私」が振り上げられる。
周囲がさらに騒がしくなる。
罪人への罵倒が飛ぶ。
知り合いなのだろうか、民衆の中には泣いている者もいる。
そのような者たちを背景に「私」は振り下ろされ。
そして――。
断頭台に血が飛び散った。
下方がさらに騒がしくなる。
彼らが狂っているのか、この世界が狂っているのか、それとも「私」が狂っているだけなのか。
でも「私」にとってそんなことは、すべてどうでもよかった。
「私」は確かにそこにいた。
「私」は確かに必要とされていた。
だからあの時、「私」は確かに幸せだったのだ──。