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銀河を翔ろ!  作者: 巻神様の下僕
序章 新米軍人編
8/10

第八話 仕官学校卒業

 俺は仕官学校を卒業した。


 成績は上位五十位以内をキープしての卒業だ。


 俺より上の連中は皆、お貴族様だ。


 つまり、そう言う事だ。


 因みに卒業主席は皇族様だった。


 皇族様とは私的に話す事はなかった。


 同じ授業を受けているので、挨拶を交わす事はあったが、ただそれだけだ。

 彼の周りは取り巻き連中が居て、何も出来なかった。


 うん、縁がなかったと思う事にしよう。


 まぁ、同期と言う事で卒業後に会う可能性も……


 ないな。


 幼年学校の同期とはいままで同じ場所になった事はないし、仕官学校の同期とも同じ配置になる可能性は極めて少ない。


 なぜなら皇帝国は広い。


 数十の惑星を持っている皇帝国。

 その軍人の数も途方もないほど多い。

 同期が同じ場所に配置されるのは稀だそうだ。


 これは先輩達から教わった。


 だが、確率は低いが同じ場所になる同期も居る。


 そして、同じ配置場所になった者達の絆は深い。

 皇帝国で有名な人物もコンビや、トリオが多い。

 同期で助け合って武功を重ねたのだろう。


 麗しい逸話の数々が書物(電子書籍)に残っている。



 うん、俺には縁がないな。


 同期と同じ場所になる可能性はない。


 なぜなら俺は卒業と同時に大尉に昇進する。


 他の卒業生は少尉任官か、中尉で卒業する。

 一部例外で俺と同じように大尉任官する者もいるが、そんなやつは極々少数だ。


 卒業地点で俺は他の連中とは違っている。


 同じ場所になる事はないのだ。


 すまんな君達。


 俺は早く出世して、好きなように生きたいのだよ。


 ふふ、ふははは、はーはっはははー!



 さて、今度こそ宇宙軍配属になってくれよ。



 ※※※※※※



 惑星スメラギ


 皇軍陸軍第5軍人事部 事務局


「大佐。こちらの要望書の栽可をお願いします」


 女性型アンドロイドの秘書が持ってきた電子ファイルを見て、眉間にシワを寄せて見ているのは、人事部のある大佐だった。


「何々、転属要望書?誰だこの若造は?こんな若い大尉なんてウチに居たか?」


「アスカ タチバナです。お忘れですか?」


「アスカ タチバナ?誰だ?」


 覚えてないのかと落胆するような表情を見せる秘書。

 アンドロイドの表情は豊かなのだ。


「八年前に仕官学校入学の手続きをした者です。幼年学校を主席で卒業し、武勲を立て、大佐が認可した者です。本当に覚えてませんか?」


 秘書にそう言われて大佐は考えこむが、ピンとくる人物はいないようだ。

 何せ人事部に送られてくる要望書は山、いや山脈、いやいやとにかく大量に送られてくるのだ。

 その中の一人を覚えている余裕は、この大佐にはなかった。


「知らん」


 大佐のこの答えに秘書はため息を漏らした。

 もう一度言おう。

 アンドロイドの感情表現は豊かなのだ。


「二級平民から一級平民になった者です」


「あいつかーーー!」


 大佐は両手でデスクを叩いて立ち上がった。

 そして掌をしたたかに痛めたが、すぐにナノマシンが治してくれた。

 ナノマシンは優秀なのである。


「ええ、そのタチバナです」


『よく思い出しました』と言う表情を浮かべる秘書。


「ふん、卒業出来たのか。あの二級平民は」


「卒業したから要望書を出したのでしょう」


『何を当たり前の事を』と言う表情を作る秘書。


「はぁ、どれ。………!? 宇宙軍だと!栄光ある陸軍から転属だと!なんと言う世間知らずなやつだ!陸軍から宇宙軍に転属など有り得ん!ここまで愚かなやつだったのか!」


 顔を真っ赤にして怒る大佐。


 それに対して秘書は。


「仕官学校で上位成績者に成れなかったので、現実を知ったのでしょう。自分は陸軍には相応しくないと思っての転属願いだと思考します。宜しいのではないでしょうか?」


 因みに、陸軍と宇宙軍は非常に仲が悪い。


 どちらの上層部も自分達が皇帝国を支えているのだと自負している。

 その為に陸軍に配属になった者はよっぽどの事がない限り、ずっと陸軍のままであるし、宇宙軍もまた同じである。


「ふん!落ちこぼれか。やはり大したことがなかったな。良いだろう。望み通り宇宙軍に送ってくれるわ。宇宙軍など落ちこぼれの集まりだからな!さっさとやれ!今すぐやれ!」


「では、そのように手続き致します」


 秘書はさっさと認可手続きをしてしまった。


「はぁ~、ここらで休憩にせんか。コーヒーを頼む」


 大佐は大きな声を出したので疲れた顔をして、秘書に頼む。


「コーヒーはお出しします。でも、休憩時間はまだです。では、次の案件です」


 秘書はさっとコーヒーをデスクに出すと笑顔で次のファイルを大佐に見せた。


「は、ははは。はぁ~」


 大佐のため息は秘書に聞こえていたが、仕事を円滑に回すのが彼女の役目である。


 アンドロイドは優秀なのである。



 ※※※※※※



 遂にやったよ!


 念願の宇宙軍だよ!


 しかも駆逐艦の艦長だ!


 ははは、はーはっはははー!


 もう笑い声が止まらんよ。


 ははは、ははは、はーはっはははー!


「大丈夫かあの人?」


「優秀な人だって言われてるらしいぞ?」


「本当か?バカにしか見えないぞ?」


 おい貴様ら、聞こえてるからな。


 いや、いかんな。


 あまりの嬉しさにおかしなテンションになってしまった。


 猛省しよう。


「ごほん。艦長、よろしくでしょうか?」


「何かな副長」


 いや、良いねこのやり取り。


 顔が笑顔で綻んでしまうよ。


「何を笑ってるだあの人?」


「やっぱバカなんじゃないのか?」


「大丈夫かよ。俺、この航海が終わったら結婚するのに」


「「それは死亡フラグだ!」」


 余裕があるなこの船のクルーは。


「ごほん。今回の任務は哨戒です。艦長は実習訓練しか経験がないとの事。全体の指示は艦長が、細々とした事は私が指示すると言う事で宜しいでしょうか?」


 まぁ、仕官学校で実習は受けてるけど、実質今回が初めての宇宙での任務だからな。

 先輩達に任せるのが一番だ。

 副長の言っている事は正しい。


「じゃあ、頼むよ」


「は、お任せを」


 いや~これからが楽しみだよ!




 皇暦3003年 4月某日


 皇帝国宇宙軍第三軍 第八艦隊所属


 駆逐艦『ツバキ』艦長 アスカ タチバナ


 予定の航路を通り哨戒任務を行う事とす



 後に『不死身のタチバナ』と呼ばれるアスカの初任務であった。


これにて序章は終了です。サクサク進むぞ!



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― 新着の感想 ―
[一言] どう見てもタ◯ラー艦長ですな。 運が良すぎて周りを振り回す難儀な艦長いや提督。
[一言] ますます「アノ艦長」みたいに、なってきました!
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