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銀河を翔ろ!  作者: 巻神様の下僕
序章 新米軍人編
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第6話 仕官学校

 今さら仕官学校に入学したのには訳がある。


 このまま順調に行けば俺は四十代には大佐に昇進出来るだろう。


 だが、そこが俺の軍人としてのピークになる。


 なぜなら幼年学校上がりで平民出の俺が軍で出世するには限界が有るからだ。


 平民出の軍人の最高位は『大佐』だ。


 幼年学校上がりの者で平民出の軍人は大佐までしか昇進出来ないと言う不文律が有る。

 これの例外が幼年学校上がりでもお貴族様なら将軍に成れるが、平民出は将軍には成れない。


 その事を知ったのは幼年学校を出て、軍生活に入ってからだ。


 職場の先輩や上司から昇進について、それとなく聞いたのが発端だ。

 軍の上層部は全てお貴族様が独占している。

 そして、軍の最高位現役の『元帥』は皇族しか成れないと言う。


 これが皇帝国の現実だ。


 皇帝万歳ー!お貴族様最高ー!と言ったところか。


 だが、俺は『このまま格差社会に負けてたまるか!』と言う思いを抱いた。


 このオマケの人生は『好きなように生きる』をモットーにこれまでやって来た。

 そして、どうせならとことん楽しみたいし、いつ終わっても悔いはないと全力で生きてきた。

 前世は仕事に関してはさして不満は持っていなかったのだが……


 しかし、今世はどうだ!


 これまで二度前線に立ったが、俺は軍の上層部に対して不満が溜まっていた。

 無能とは言えないが、本気を出しているようには見えなかったし、やる気を感じなかった。


 上層部だけではない。


 下に付けられた部下に関しても不満は有った。

 ぎゃあ、ぎゃあうるさく騒いで、文句だけ言って命令を聞きはしない。

 これで仕事してますなんて呆れてしまう。


 それに、転任先の職場も酷い状況だった。


 仕事内容が単純なのは認める。

 面白い仕事とは言えないし、人に寄ってはつまらない仕事かもしれない。


 しかし、仕事は仕事なのだ。


 自分に与えられた仕事をし、それを完遂することで報酬を得る。


 仕事とはそう言うものの筈だ。


 それなのに俺の所属する軍の連中は……




 皇帝国軍は腐っている。



 俺が俺として生きるには、今の皇帝国では望めないかもしれない。

 ならば、俺が望むような人生を送る為に何か行動すべきではないのか?

 好きなように生きる為にこの環境を変える為に動いても良いのではないか?


 これから先、俺が行動した事でどんな結果が待っていようとも、それは全て俺自身が招いた結果で、それに寄って明日には死んでしまう事に成ったとしても、それはそれで良いではないか。


 好きなように生きて好きなように死んでやる。


 そこに後悔がないようにな。


 それに今の人生はオマケなのだから、失敗したとしても気楽なものだ。


 ふはははー!



 おっと、その為には軍で成り上がる必要があるな!


 好きなように生きる為には、それなりの立場が必要だからな!


 俺は俺が上を目指す為に必要な事を調べる事にした。


 そしてその結果、俺が大佐以上の地位を得る為には、最低でも仕官学校を出ていなければならない事を知った。


 仕官学校を出ることで、幼年学校よりも昇進速度が速くなるからだ。

 長い時間を掛けることなく、平民出の最高位『大佐』まで昇進する。これが第一段階。


 第二段階として、何らかの功績を上げて貴族に成る。


 第三段階は軍上層部から認められて『准将』に成る。


 これが俺が目指す最低条件だ。


 仕官学校を出て、貴族に成り、そして准将に成る事で皇帝国内である程度は自由に生きる事が出来る。


 もう一つ裏技的な事だが、他国に亡命するという方法も有る。


 だがこれは、皇帝国内でこれ以上出世出来ないと分かったら決行するのが良いだろう。

 それに今は他国に亡命するよりは、皇帝国内で出世する事に全力を傾けたい。

 亡命すると言う考えが有っては、それが甘えになってしまうだろうからな。



 と言う訳で仕官学校に入学したのだが……



 ここも幼年学校とあまり変わりがなかった。


 普通だ。


 普通の学校と言う感じだ。


 お貴族様が居ると言う事を抜かせば、普通の学校だった。


 問題はお貴族様だ。


 お貴族様のボウヤ達は勉学、スポーツ、訓練等、まともにやる奴が少ない。


 授業には出てくるが、勉強しに来る訳ではない。

 出席を取ると直ぐに教室を出ていってしまうのだ。

 教室に残っているのは平民と、一部の真面目なお貴族様だけだ。


 なぜ、お貴族様達がこんな事をしているのかと言うと……


 彼らは仕官学校を卒業しさえすれば良いからだ。


 仕官学校を卒業したお貴族様はそのまま軍に入るのだが、お貴族様はまともに職場には来ない。

 職場に来ないくせに、一、二年後には昇進してしまう。

 そして、ある程度昇進すると軍を辞めて、家に戻るのだそうだ。

 軍に居たと言う実績が欲しいのだとか。


 お貴族様にとって軍に入ると言う事は、箔を付ける為の場所と言う事だ。


 その為、このスメラギ仕官学校に来るお貴族様はただ授業を受けたと言う証明が出来れば良くて、テストもまともに受けなくて良いようになっている。



 これには本当に呆れてしまった。


 このお貴族様達の行為を抜かせば、普通の学校だと思う。


 いや、普通ではないよな?


 そんな普通ではない仕官学校に八年間通わなくてはならない。


 自分で選んでおいてなんだが、俺は選択を間違ったのではないのかと思った。


 思ったが、まぁ良いか。


 真面目に授業を受ける生徒が少ないとなれば、簡単に成績上位者に成れるに違いない。

 要は考えようだな。

 ライバルは少ない方が良い。


 上位で卒業出来れば、自分の望む部署に行くことも可能だ。


 今度こそ、花形と言われる宇宙軍に行くのだ!


 そして、夢は宇宙艦隊を率いる将軍様だ!


 宇宙艦隊!! 何て夢の有る職場だろうか。


 男として産まれたからには、戦艦に乗ることはロマンだ!


 ましてや、艦隊を率いるなんて……


 想像しただけでも身震いがしてしまう。



 ふふ、待っていろよ俺の宇宙艦隊!



 ふははは、はーはっはははー!



 だが、お貴族様はあんなだが、平民連中はかなりヤル気がある。

 仕官学校をただ卒業すれば良いだけのお貴族様と違って、俺と同じように出世を目指す連中は多い。

 それに、少ないながらお貴族様の中にも、必死に成って勉学に励んでいる者も居る。


 簡単に成績上位者に成れると思っていたが、それは早計だったかもしれない。


 だが、ヤル気の有る者達と競うのは嫌いじゃない。


 連中に負けないように俺も頑張らねばな!




 仕官学校の生活は幼年学校とそう変わらない。


 変わった事と言えば専門的な事をより深く学ぶ事が増えたと言う事だ。


 俺は、将来艦隊に派遣される為に必要な技能を学ぶ為に戦略学科に居た。


 この戦略学科は、二年間の基礎学科を学んだ後に選べる選択学科の中でも特に人気の有る学科で、この戦略学科で学べる者は、一部の成績上位者だけなのだ。


 幼年学校を主席で卒業した俺は、仕官学校で成績上位者に成るのは難しい事ではなかった。


 しかし、俺はこの戦略学科の主席ではない。


 主席は別に居る。


 戦略学科の主席は、皇族様だった。


お読み頂きありがとうございます


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― 新着の感想 ―
[良い点] こんにちは新作楽しみです。 銀英伝や無責任艦長タイラーのようでニッコリです。 特に大佐役の方がフジさんみたいな感じを受けて更にニッコリです。 今後凄く楽しみです。ブワーッといっちゃいましょ…
[一言] これは… 「ぬるい」や「いいかげん」と感じたら、そうなるかなあ… 「ほどほど」の感じだと、それでいいのですが。 しかし、骨のある皇族が出てきましたか。 意外と、こういう人と「相棒」になる?
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