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銀河を翔ろ!  作者: 巻神様の下僕
序章 新米軍人編
3/10

第3話 幼年学校

 軍隊と言うところは素晴らしいところだ!


 上の命令を唯々諾々と従っていれば飯が食える。


 私にとって軍隊、兵士になると言うことは天職であるような気がする。


 この銀河では、人間(余所の星人からジリアンと呼ばれている)は10才(実年齢二十歳)を迎えた頃に、職業を選ぶことに成っている。

 それまでは基本教育を6才(実年齢十二歳)から小学で叩き込まれるのだ。


 私は軍人になるのだから、行く場所は決まっている。


 幼年学校だ。


 正確には『皇帝国幼年兵士育成学院』と呼ばれる皇帝国軍学校の一部だ。


 幼年学校の教育期間は十二年間。


 卒業時の成績によって階級が与えられる。


 最上位は少尉、最低は伍長だ。


 因みに、軍の階級はこう成っている。


 元帥、大将、中将、少将、准将、大佐、中佐、少佐、大尉、中尉、少尉、准尉、曹長、軍曹、十長、伍長だ。


 基本はこれだが、中には特務だとか、臨時だとか、階級の前に何かの名前が付いたりする。


 しかし、幼年学校に入ったのに伍長で卒業とは成りたくないものだ。

 だが、卒業時に伍長と言う者は若干名存在する。

 何処にいても落ちこぼれは存在すると言うことだ。


 ここでの成績上位者が仕官学校か、軍大学に進むことが出来る。

 仕官学校は職業軍人を作る場所で、軍大学は軍官僚を育成し、希望すれば民間業者に就職する事が出来る。

 ただ、残念な事に二級平民である俺は仕官学校、軍大学のどちらにも進むことが出来ない。


 格差社会は厳しいのだ。


 だが、軍に対して功績を上げると階級が上がり、二級平民から一級平民になることが出来る。

 さらにその上のお貴族様にだって……


 まぁ、取らぬ狸の皮算用と言うし、今はそんな事を考える必要はないだろう。



 そして、俺が幼年学校に行くと今の両親に言ったら、微妙な顔をされた。


 今世の両親は前世の両親と全く同じ容姿の人達だった。

 性格も全く同じ、温厚で人辺りの良い善良な二人だ。

 そんな二人は俺が軍人を目指すのを良くは思わなかったようだ。

 だが、息子が決めたことだからなのか。

 反対らしい反対はしなかったし、積極的に賛成してくれた訳でもない。


『好きに生きなさい』


 両親は俺が幼年学校に向かう最後の挨拶をした時に言った言葉だ。


 前世でも全く同じ事を言われた。


『好きに生きろ』


 就職を決めて家から出る時に言われた両親の言葉。

 ほぼ全く同じ事を言われるとは思わなかった。


 少し寂しく思って玄関を出たところで両親から抱き締められた。


「辛かったら、帰って来て良いからな」


「怪我だけはしないようにね」


「先輩の言うことはちゃんと聞くんだぞ」


「勉強ばかりして夜更かししないように、それから、それから……」


 抱き締められたまま、一時間ほどだろうか?

 それとももっと長い時間だろうか。

 別れを惜しむ言葉は尽きなかった。


 最後は両親を引き剥がすように出て行く事になった。


「長期休暇には帰るよ!」


 そう言って手を振って振り返ることなく歩き出した。


 その時は休暇になったら帰るつもりであったが、二級平民が長期休暇を取ることが出来ないと知ったのは、学校に入って直ぐのことだった。


 格差社会め!




 幼年学校の生活は規則、規則、規則の連続だ。


 家を出た10才の子供にはかなり辛い生活だ。

 実年齢は二十歳だが、中身はまだまだ子供だからな。俺とは違って……


 集団行動の徹底の為に、十人部屋に入れられての生活、一人がミスをすると連帯責任で部屋の人間も罰を受ける。

 三年生(実際は六年生)になると個室を与えられるが、それはお貴族様か、成績上位者だけの特権。

 平民は六人部屋で、卒業するまでそのままだ。


 俺にとってそんな幼年学校は…… ぬるかった。


 ぬるい、ぬるい、ぬるい、ぬるい、ぬるい、ぬるい、ぬるい、ぬるすぎる!


 誰だ!幼年学校は特別厳しいと俺を脅していた奴は!


 普段の授業は手抜きも良いところだ。


 基礎体力訓練もおざなり。


 上官がそもそもやる気がない。


 名門と言われるこの『スメラギ幼年学校』は名前だけだったのだ!


 部屋は冷暖房が効いていて、食事も贅沢な物が多い。

 カロリー計算などされてないように思える。


 そうなると学生はどうしているかと言うと……


 こんなにも、優しく暖かな部屋に入れられて、周りの奴らなんてギラギラした目で机に向かって勉強している…… フリをしていた。

 そして、少しでも相手を出し抜こうと虎視眈々と隙を伺っている奴らの多い事、多い事。

 上官(教官)に気に入って貰えるように、日夜点数稼ぎに邁進する同級生に先輩達。


 お前達は一体全体何をしているのか!!



 幼年学校は腐っていた。



 問題はお貴族様にあった。


 長年幼年学校にはお貴族様と平民が一緒になって勉強している。

 そこは問題はなかった。

 まぁ、全くなかった訳ではないが、それほど大きな問題はなかったのだ。

 それに、お貴族様も平民も普段は馴れ合わないし、馴れ合うこともしなかった。

 明確な線引きがされていたのだ。

 しかし、お貴族様の子供は我が儘なボウヤが多い。

 そして、とあるお貴族様が幼年学校の校長に就任した。


 その日から幼年学校のルールが変わった。


 お貴族様と平民を分けることはしなかったが、生徒の生活環境の改善がされたのだ。

 三年(六年間)も我慢出来ないお貴族様の子供の為に、授業内容すら変わってしまったのだ。

 そこからどんどんと歪な方向に幼年学校は変わっていった。


 表面上は名門の幼年学校。


 中身はぐちゃぐちゃに腐りきり腐敗の匂いすらしてくる。


 何で俺はこの学校を選んでしまったのか?


 両親はこの事を知っていたのだろうか?


 しかし、来てしまった以上はここで成績上位者になるしかない。


 周りは公然と賄賂まで使って成績を買っている連中だ。


 負けるわけには行かない!



 結論から言えば負けなかった。


 と言うか、負ける訳がなかったのだ。


 ぬるい授業内容とぬるい基礎訓練。


 真面目に取り組めば、成績等勝手に着いて来ていた。


 周りの白けた目線を気にすることなく、黙々と勉学や体力作りに勤しんだ結果、俺は最優秀成績者と成って卒業を迎えることに成った。


 そして、少尉任官が決まった。


 赴任地が何処になるかは知らないが、まぁ、どこだろうとやる事は変わらないさ。


 そう言えば、いつも嫌みを言っていたお貴族様達が、卒業時に珍しくお祝いの言葉をくれたな。

 やはり卒業ともなると、同じ釜の飯を食った仲だからと感慨深くなるのかも知れない。


『赴任先で頑張れよ』と言われたので『お前らもな』と言ってやった。


 その時に顔が若干ひきつって見えたが、まぁ良いか。


 では赴任先は何処かな?


 何々……


 ふぅん、陸軍か。


 宇宙軍の所属を希望したが、ダメだったか。

 まぁ何もかも希望通りに行く訳ないな。


 赴任先は…… ルスター?


 確かあそこは反帝国の気運が高まっていたところじゃなかったかな?

 軍の広報では近々反乱が有るとか無いとか。


 これはなかなか楽しめそうな場所じゃないか。


 ふふ、俺はついているかも知れないな。


 早速出世の機会が巡ってくるかも知れないぞ。


 ふふ、ふははは、はーはっはははーー!



アスカはお貴族様を敵にしてしまった事を気付いてません


感想、応援を頂けると今後の励みになります。


今後もよろしくお願いいたします

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― 新着の感想 ―
[一言] だって、ぬるかったからですよねえ… でも、そういったお貴族様は、努力ができる能力が備わっていませんからね。
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