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銀河を翔ろ!  作者: 巻神様の下僕
序章 新米軍人編
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第1話 出世の機会は戦場にこそ有りにけり

初のスペースオペラ?

「うおおぉぉーー!」


「馬鹿、前に出るな!死にたいのか?」


 塹壕から飛び出そうとしたその時に、腰のベルトを捕まれて穴に引き摺り下ろされた。


「何をする?今突撃しないでどうするんだ!俺は行くぞ!皆も続けー!」


 俺は直ぐ様起き上がると再び塹壕から這い上がって走り出した。


「ああ、もう! しょうがねぇ~行くぞ野郎ども!」


「「「おおー!」」」「へいへい」


 一部間の抜けた声が聞こえた気がするが、俺は振り返る事なくただ前だけを見て走った。


「曹長、あそこの陣地に突っ込む。行くぞ!」


 目の前に広がる戦場で此方に激しくビームの雨を降らしてくれる陣地を見つけると、そこを目指して突っ走る。


「あそこはまだ味方の援護が」


「俺に続けー!」


 味方の援護?


 そんな物待ってたっていつまでも来やしないじゃないか。

 なら、自分達でどうにかするしかない。

 それに何のため対ビーム兵装だ!


「だから、何であんたが前に出るんだよ!?あんた本当に戦場が初めてか?これが初陣なのかよ?」


 失敬な、前世でも今世でもここが初めての戦場で、初めての戦いで、初めての殺し会いだ。


 まぁ、前世でこんな機会は無かったからな。




 前世、俺は平和な日本に住んでいて、それは真面目に真面目に、本当にくそ真面目に生きてきた。

 ギャンブルはおろか、酒もタバコもやらずに女性に貢ぐ事もせず、ただ社会の歯車となって働いていた。

 当然、恋人どころか女性の知り合いは皆無、潤いのない人生だと、同僚や上司に言われた。


 だが、それがなんだ?


 誰に何と言われようと、これは俺の人生だ。

 好きに生きて何が悪い。

 両親は俺が独立するとしばらくして病気で亡くなった。

 親類は近くに居らず、兄弟、姉妹もいない。


 天涯孤独と言うやつだ。


 だからと言う訳ではないが、俺は俺の人生を後悔の無いよう生きた。


 生きた筈だった。



 過労だ。


 俺の死因は過労死だ。


 ろくすっぽ休みもせずに働きまくった結果が、これだった。


 別に過労死した事を悔やんでいる訳ではない。


 だが、もう少しだけ生きたかったと言う後悔があった。


 もう少しだけ……


 そう、もう少しだけで良い。


 好きに生きたかった。




 そして、今は戦場に居る。


 皇歴2991年 6月某日


 惑星ルスターのとある戦場で、俺はブラスター(ビーム銃)を片手に走り回っている。


 こんなに楽しい事はない!


 俺はまだ生きている。


 ここで、この場所で生きている。


 そう思うと体から力が沸き上がってくる感じがする。


 実際、力が沸き上がっているのだが、これは仕様だ。

 止めたくても勝手に出てくるので止めようがない。

 まだ上手く制御出来ないんだよな。


 早く馴れよう。


「ははは、楽しいな曹長。こんなに楽しい事はないぞ!」


「あんた、頭の中どうなってんだ!?」


 俺の隣を走っていた曹長が『こいつ変人か?』と言う顔で俺を見る。

 前世でも経験した事のある視線だ。

 それは曹長だけではなく、周りの連中も同じだ。


 失敬な、俺はまともだ。


 ただ、今の人生はオマケだと思っている。


 俺的には前世の続きで有り、ボーナスのような物だと思っている。

 好きに生きてきたからこその続きだと思い、前世では出来なかった事をやろうと思って、今は生きている。


 だから、もし今この瞬間に死んでしまっても後悔はしない。


 だって今はオマケの人生なのだ。


 今この場で俺と言う存在が居る事事態、不可思議な現象なのだ。

 前世の記憶を持ってもう一度人生を送っている今の状態は異常だ。

 実は今の俺は夢を見ているのではないのかと疑っていた時期もあった。

 何せ成長するにつれて前世と全く同じ容姿に育ったからだ。


 しかし、夢を見てるのに夢を見る事が出来たり、匂いや味覚や触覚が有る夢など有る訳がない。

 それに怪我をして痛い思いし、血を流すのだ。

 これが夢だと言われれば、今時の夢は血を流すのだと感心してしまう。


 そんな訳があるか!


 これは現実だ。


 しかも前世より遥か未来の世界に生まれ変わるとは!?


 過去や、異世界に転生するよりは、俺向きだ。


 俺が見て見たかった世界が今、ここに有る!


 いや、戦場を見たかった訳ではないがな。



「ははは、一番乗りだ!」


 俺は腰にぶら下げていた手榴弾(通称ボム)を手に取ると相手陣地の壁に投げ付ける。

 するとボムは壁にくっ付くと三秒後には爆発し、壁に穴を開けた。

 その空いた穴に俺は突っ込む。


「だあー!もうこの隊長は狂ってやがる!」


 失敬な。俺は狂ってない、冷静だ。


「な、何だ? 敵? いつの間に取り付いて居たんだ!」


「撃て!撃て!撃ちまくれ!」


 おおー!凄いぞ。周りからビームの雨霰だ!


 う、美しい。


「よし、こっちも撃ち返せ!」


「死ぬ、絶対こっちが死ぬ!」


 曹長、こっちは相手の攻撃なんて効かないんだから平気だっての。

 何でそんなにへっぴり腰なんだよ?

 ほら、もっとちゃんと狙いなよ。


「ははは、こんな綺麗な花火は初めてだ!ははは」


「誰か代わってくれー!」





「ふぅ、終わりか」


 周りを見渡すと敵兵士が手を上げて投降し、味方の兵士に拘束されている。

 抵抗は結構激しかったが、ビーム兵器が主体の兵装じゃあこっちには勝てないよ。

 残念だったね。


「うわ!?やっぱりガトリングガン(実弾兵装)が有りやがった。もし、こいつが火を吹いたら……」


「ああ、死んでたかもな。ははは」


「何で笑ってるんですか!」


 いや、怒らなくても良いじゃないか。

 結局は生きてるんだから。

 怒っても良いことなんてないよ曹長。


「生きてるんだから良いじゃないか。ラッキー、ラッキー」


「そんなお気楽な……」


 そんな絶望した顔するなよ。

 それにまだ終わってないんだから、次だよ、次!


「よし、それじゃ次行ってみよう!」

 

「まだ行くんですか!?」


 何を言っているんだ。

 敵はまだまだ居るんだ。

 手柄の立て放題じゃないか。


 それにこれは仕事だよ、仕事。


「この人、おかしいよ」



 いや~楽しい職場じゃないか!





 皇歴2991年 6月某日


 皇軍陸軍第5軍による惑星ルスターにおける反乱鎮圧は成功。


 皇軍陸軍第5軍第124大隊第503中隊所属


  アスカ タチバナ少尉


 第503中隊付第3小隊を率いて敵陣地を次々に制圧。


 反乱討伐における功大なり。


 尚、タチバナ少尉は今戦場が初陣なり。


お読み頂きありがとうございます


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[良い点] 悪くない滑り出しですね。 未来転生……宇宙駆けの再現体(リビルダー)に近いっちゃ近い? とりあえず、ブクマ入れときました。 期待っ! [気になる点] 私の見る夢は、味覚以外全部再現されて…
[一言] スペースオペラですか。 なかなか面白そう。 あー、主人公。 いつか艦隊を指揮して、指揮官の席に座って、「我が艦隊に後退だのなんだの、まどろっこしい言葉は必要はない。 ただ猪突猛進するのみ」と…
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