夢みる乙女は一滴の涙を落とす。
「エリカちゃんって何でもできて凄いね!」
高校の休み時間。友達のレイカとユウナ達が周囲に群がって私を褒めちぎる。正直いって心地よかった。これが私の毎日。成績優秀で何事にも冷静沈着、臨機応変に物事に対処できる優等生。それが私、エリカ。
――いつまで夢見てるの?
(誰?)
突然声が聴こえた。それもいつもの事。
でも、今日は違った。
壁の崩れる音がする。立っていられないほどの揺れ――気がつくと、レイカとユウナ達が黙って教室のなかで弁当を食べていた。
食べ終わったレイカとユウナ達が私に背を向けて、言い放った。
「いつまで夢見てるの?」
その瞬間、「私」のことを思い出す。そうだ、私は優等生なんかじゃない。優柔不断で勉強も運動も出来ない笑顔だけが得意な高校生。
「もう私達はあんたのこと褒めないよ」
レイカとユウナ達が教室から出ていく。その先は真っ暗な闇だった。そこで私は、はじめて自分が震災で死んだんだと理解した。
「ずっと、夢見ていたかったよ……」
誰もいなくなった教室の机に一滴の涙が落ちた――