【第六話 大決戦(小規模)】
【第六話 大決戦(小規模)】
今ここに3匹のワンコが揃った。
7代目ワンコと真ワンコと数合わせワンコだ。
チーム部門の勲章的なのは、
・優勝する
・同ランクのモンスターを使用して優勝する
・1度もダメージを受けずに優勝する
・全ての敵を1撃で倒して優勝する
・3匹以内で優勝する
の5つだ。
上4つに関してはシングルと同じだから割愛する。
最後の3匹以内は決して難しくない。
ただ、同ランクを同時にクリアしようとすれば一気に難しくなる。
このゲームの難易度はプレイヤーが選択出来る。
同ランクに拘れば難しくなるし無視すれば簡単になる。
レベル上げ自体も簡単だし、難易度を下げようと思えばいくらでも下げれる。
だからこそ、複数同時クリアを目指すと一気に難易度が上がる。
相性の把握、装備の質、連携の良さ、指示の的確さ。
挙げていけばどこまででも挙げれる必要な物。
それらを全て兼ね揃えて漸く、全勲章同時達成が出来る。
俺の憧れだ。
全部同時クリアが最も難しいと言われるFランク大会での達成。
β版では10人もいなかった。
参加人数が約5万人いたのに……だ。
それくらい異常な難易度なのだ。
だからこそ、俺は憧れる。
今はまだ、無理だろう。
知識や根気なんかじゃない、挑戦する為のお金やらアイテムが無い。
もっと先に進んで、足場を固めてからしか無理だ。
全3回の内の1回戦。
敵はゴブリンが2体とコボルトが1体、そしてスライムが3体の混合PTだ。
試合の度にランダムで決まる為、特定のモンスターへの対策は難しい。
今回の作戦はスライム放置だ。
あいつらは遅く、簡単に対処出来るからだ。
逆にコボルトは速く、早めに対処しないと事故が起きる。
真っ先に処理しなくてはいけない相手だ。
1匹しかいない以上、この戦いは楽だと言える。
まずは数合わせワンコにゴブリンへの牽制命令を出す。
これで時間稼ぎが出来るはずだ。
その次に7代目ワンコをコボルト相手に動かす。
こちらも牽制、本命は真ワンコによる1撃だ。
これが通れば後は一撃離脱戦法で勝利出来るから既に勝ったも同然だ。
続いて2回戦。
1回戦は運良く全て1撃で倒すことが出来たし、被弾もしていない。
現状は全ての勲章を獲得出来る可能性が残っている。
が、現実は甘くない。
今回の敵にスライムが居ない。
ゴブリン4体にコボルトが2体の混合PTだ。
スライムが居ないと放置作戦での数的不利を無くす事が出来ない。
こっちのどの個体でもゴブリン4体を同時に相手するのは不可能だ。
これはほぼ確実に被弾するし、最悪の場合はここで負ける。
気合いを入れなくては……。
一番ステータスの高い7代目ワンコにコボルト2体を相手してもらう。
ここは被弾する可能性を1%でも下げる為に攻撃禁止の回避のみだ。
次にステータスの高い数合わせワンコをアタッカーにし、ゴブリンを仕留める。
もちろん、真ワンコが牽制を行い、常に有利になる様に立ち回る。
が、NPCも馬鹿じゃない。
Fランク大会とは言え、一応指示出しをする。
1回戦のように指示があっても意味が無い状況を作れない。
そして、予想通りと言えば予想通りに7代目ワンコが被弾した。
HPにまだ余裕があるとは言え、これで全部同時クリアは失敗だ。
今回で絶対に手に入れるとまでは考えてなかったが、ワンチャンがあった以上は悲しい。
すぐに切り替えなくては……。
一応、2回戦も勝った。
結局は全員被弾し、HPもそこそこ減っている。
やはり、合流されると数的不利が如実に表れる。
スライムが多い事を祈るゲームとはよく言った物だ。
さて、決勝戦だ。
試合間での定数回復で一応全回復している。
武器や防具も問題無いし、準備は万端と言ったところか。
決勝戦の相手は今までで一番やっかいだった。
コボルトが5体にスライムが1体。
素早く、連携が取れるコボルトがここまで多いとは……。
これは敗北を視野に入れる必要がある。
まずスライムは無視だ。
こいつは全てが遅いから数的不利を少しでも無くす為に放置安定だ。
コボルト5体は……どうするか。
安定を取るなら2体で牽制し、最後の1体が一撃離脱で戦う。
もう1つはダメージ覚悟で速攻を仕掛け、数を減らす。
どちらも一長一短だ。
安定択を選べば時間が掛かる為事故率が高くなる。
速攻択を選べば最初の危険度が高いが、一気に楽になる。
悩ましい問題だが、時間が無い。
時間を掛けて負けた場合の方が精神的ダメージが大きい。
よし、速攻で決めに行こう。
今回は相手運が悪かったし、ダメだったらもう1回だ。
3体のワンコにそれぞれ別のコボルトに突撃指示を出す。
威力重視の特攻であり、当たれば半分くらいの確率で倒せる。
1撃で倒す方も失敗してるし、そこまで祈る必要はない。
結果は、1体死亡の2体瀕死。
最悪の結果は免れたと言ったところか。
こっちも多少の被弾はあるものの、この攻撃は成功と言って良い。
ここからは安定行動だ。
1撃で倒すことに成功した数合わせワンコは満タンな2体を牽制してもらう。
残る2体は素早く倒し、数的有利を作らせる。
スライムの位置はまだ遠く、心配する必要はない。
残っている2体が神個体じゃなければ、このまま押し切れる。
が、事故が発生。
牽制役の数合わせワンコの回避先に敵のコボルトが居た。
真ワンコがすぐに倒したからどちらにもダメージは無いが、完全に隙を晒した。
もう一方の7代目ワンコの方に増援と言う形で逃げられた。
これにより、一時的な3対1が発生、抵抗虚しく7代目ワンコは死亡した。
やはり、被弾覚悟での特攻は損傷が激しいな。
これで4体2になった。
内1体はスライムだから実質3対2だと言って良い。
しかし、こちらは2体軽傷だ。
もしももう一度隙を晒した場合、こちらの負けが決まる。
ここは武器を捨てる。
近距離からの投擲で瀕死個体を排除、これで実質2対2になった。
武器が無くなった真ワンコには牽制役に徹してもらう。
ここからは数合わせワンコがどうにかして敵を倒すしかない。
てか、数合わせ要因でそこまで確り育成してないのに一番活躍してる……。
なんか……ごめんね?
その名前も後で変更してあげるよ。
そして、無事に優勝出来た。
数的不利が無い以上、NPCがプレイヤーに勝てる要素は無い。
モンスターのステータスも低いし指示も遅くて悪い。
同条件であるなら、絶対に勝てる。
なお、Cランク以上の大会だとNPCの指示は的確過ぎてヤバい。
運営が殺しに来てるってレベルだ。
さて、これで一応は同ランク優勝と3匹以内優勝と通常優勝の3つが終わった。
β版の時と比べて多少は成長しているが、まだまだだ。
決勝戦の相手運が悪かったとは言え、事故が起きたのは指示ミスが原因だ。
きちんと相手の位置を把握し、伝えれなかった俺のミスだ。
今回の戦いをきちんと反省し、次に繋げなくては……。
NPCの使うモンスターも全て乱数でやってますし、事故の発生も乱数です。
つまりは私の運がゴミだと言う事です。
なんでこんな悪い方に偏るんだろ……一応勝敗も乱数で決めたので最悪では無いのですがね………