【第二話 初めての戦闘と食事】
【第二話 初めての戦闘と食事】
ふぅ…。
この手触りはやばい……。
新しい性癖を開拓する所だったぜ。
気を取り直して、まずは食事だ。
テイマー……つまりはプレイヤーは食べなくても良い。
一応食べれるけど、お金の無駄遣いでしか無い。
何のメリットも無いけど、他のプレイヤーと語る時にあるとつい頼んでしまう。
序盤のカツカツな時に喫茶店で語ったのは痛い思い出だ。
スライムの食事は草だ。
5束100Gで購入可能であり、1束で空腹ゲージが20%回復する。
これを3つ購入し、合計15束を手に入れる。
そこそこ長い時間手触りを楽しんでいた為、残り空腹ゲージが5%を下回っている。
地味に危険だったな…。
一応、空腹ゲージが0%になっても即死はしない。
しかし、0%の状態で一定時間が経過すると死亡する。
死んだモンスターはリアルマネーを消費する以外に復活させる方法が無いので、きちんと管理しないと悲しいことになる。
どこが口かよく分からないが、適当に近付けると食べてくれる。
少しずつ取り込まれていくのはほっこりするが、身体の中に入ったそばから消滅していくのはちょっと怖い。
手とか入れたら一緒に消化されるのか……?
ゲーム内とは言え、試すのは怖い。
さて、スィムの食事は終わった。
ギルドの依頼を適当に受け、草原でレベル上げだ。
理想は10レベルだが人が多いだろうし5レベルまで上げれればいい方だろう。
ソロで動いている以上、奥の方の高レベルを無理して相手出来ない。
近場でリポップ狩りしか選択肢が無い。
街の外に出る。
予想通り人が多い。
スィムの歩く?速度に合わせていたら日が暮れる所か戦闘が発生しないだろう。
やはり、スライムは手で持って移動するのが正解だ。
決して、そう、決して手触りを楽しんでいる訳ではない。
これは効率よく狩りをする為の方法なのだ。
……………誰に言い訳してるんだ?
ちょっと虚しくなってきた……。
適当に歩きながらリポップを待つ。
これだけ人が多ければほぼノータイムで湧くだろう。
てか、湧いてくれなきゃプレイヤーが困る。
βテスト版でも似たようなことがあったんだから対策はされてるはず。
狙い目は同じFランクのゴブリンとコボルト。
スライムだとスキルの関係で倒せない可能性がある。
お互いダメージを受けず、延々と戦闘になるなんて時間の無駄だ。
10分程うろついて敵を決定。
VRになってからリアルになった分、接敵に時間が掛かる。
ここら辺はブラウザ系のゲームに比べて悪くなった部分だな。
まぁ、MMO形式ならリポップや接敵関連は何かしらの問題が発生するからしょうがない。
初めての敵はゴブリン。
ファンタジー系の小説だと定番だな。
本来は群れるモンスターだが、街のすぐ近くじゃぼっちで出る。
現実的に考えるとおかしいが、ゲーム的には正しいので何も言わない。
さて、戦闘開始だ。
序盤におけるスライムの戦闘方法はいくつかある。
普通に戦う方法や窒息死を狙う外道な方法にプレイヤーが持ち運んで回避する方法。
今回使用するのは最も早く戦闘が終わる方法だ。
スライムをゴブリンの顔面に投げる。
すぐさまゴブリンに蹴りを入れ、スライムを回収。
そして、また投げる。
これでゴブリンは死亡、いい経験値だった。
何故かは知らないが、プレイヤーの攻撃でダメージを与えられない。
モンスターが主役だからしょうがないとは言え、攻撃の邪魔をしたり、突き飛ばすことは可能だ。
それを応用したのがこの戦闘方法。
プレイヤーの攻撃とは言え、実際にぶつかるのはモンスターだ。
なら、ダメージが通らないとおかしい。
よって、体当りと同じ計算が行われる。
攻撃力と速度、そして当たり所でダメージが決まる。
通常の体当りよりもプレイヤーの投擲の方が速度が出る為、スライムの事を考えなければ最もダメージを稼げる。
この戦闘方法を考えた奴は絶対に賢い。
俺だと多分1ヶ月くらい掛けて漸く思い付くかどうかだと思う。
スィムのレベルが上がった。
上昇量はお察しレベルだが、一応全部上がっている。
運が悪いと上昇無しだからな……Fランクは辛い。
スライムを投げ続け、約1時間。
クソみたいな量の経験値を稼ぎ、10レベルになった。
5レベルまで上がった時に撤退を考えたが、人が少し減ったので続行した。
先に食料を買っておいたからな、途中で帰る必要が無いのだよ。
【種族】スライム
【名前】スィム(E)
【レベル】10/100
【HP】12/18(F)
【MP】16/16(F)
【ATK】15(F)
【DEF】16(F)
【INT】19(F)
【MND】17(F)
【AGI】15(F)
【スキル】
・物理無効(F)
自身のDEF以下のATKを持つ敵の攻撃を完全に無効化する
見て分かる通り、スィムはEランクになった。
全ステータスの合計が100以上になればランクアップする。
Eランクはすぐになれるため、特に何も思わない。
これがSランクとかだと結構感慨深くなる。
まぁ、後半はインフレで簡単に作れるんだけどね。
戦闘は一度区切りをつけ、再度食事を与える。
空腹ゲージはHPが満タン時10分で1%減少していく。
HPが減っている場合は、回復量1%に付き2%減る。
だから、HPが6回復するのに空腹ゲージが12%減るのだ。
因みに、この減少速度はログイン時のみであり、ログアウト中は約1/10の速度になる。
なので、満タンにしてからログアウトすれば、約16時間持つ。
寝て起きて会社行って帰ってログインすればほぼ空になってることになる。
一応、ランクが上がればこの減少速度を遅くするアイテムだったり、サポートキャラに代理で餌やりをさせたりすることが可能だ。
ランクが低い間は色々と大変なのだ。
とは言え、ランクが上がっても自分で餌やりをやりたいと言う人は一定数居る。
やっぱり自分の手で餌をあげて食べさせるのは楽しいからね。
戦闘だけがこのゲームの面白さじゃないよ。
さて、街に戻って来た。
スィムのHPも満タンだし、ギルドで受けた細々とした依頼も終わった。
次は闘技場だ。
Fランクの大会を制し、金を貰う。
さぁ、スィム。
初戦闘じゃないけど初戦闘だ。
気合い入れて行けよ。
柔らかいクッションでも顔面に当たると痛いからね。