第一章 別れ、出会い 『第1話』
僕は夢を見ていた。家族でピクニックをしている夢。僕の右にはお父さん、左にはお母さんがいる。
上を見れば快晴の空、周りを見渡せば広がる草原。あぁ、なんて素敵なんだろう。
「ほら、これをお食べ」
大好きなお父さんが僕にサンドイッチを渡してくれた。あまりお腹は空いてないけれど……。まぁ食べておこうか。
僕はサンドイッチを頬張った。
……とても美味しい。なんだこれ。今までに食べたことない。
中にはハム、チーズ、レタスが入っていた。ただのサンドイッチの筈なのになんでこんなに……美味しいんだ……? 僕は思いっきりサンドイッチを食べ始めた。飲み込むように。
「あら、食べ過ぎると喉につまっちゃうわよ」
サンドイッチがあまりにも美味しすぎて、お母さんの忠告など聞かなかった。
……ん? なんだ、これ。喉が……熱い。痛い。吐き気がする。なんだこれ。僕は両親に助けを求めた。
「おとう……さん、おか……さ、ん……た、すけ……」
体が震え、声も思うように出ず、助けを求められない。どうにかして意思表示でもしようと思い、苦しみながらも両親を見た。
そこには……お父さんでもお母さんでもない……得体の知れないものが座っていた。
お父さんよりも大きく、口しか見えない。体全体が赤く、燃えているようだ。
僕を見て、ニヤニヤ……クスクスと笑っている。
お母さんはどこ? お父さんは? 息が……出来ない。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。
苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい。
あ、もう僕は……死ぬんだ。
お父さん、お母さん、最後に……感謝の言葉も言えなくてごめんね。産んでくれて……ありがとう。
涙も出ず、声も出ないまま僕は息を引き取ろうとしていた……
最後に見たのは……眠そうな顔をしているネズミとニコニコしてるウサギが僕をじっと見つめている姿だった。
……きろ。……ぶか、おい。
「起きろ!」
僕は、目を覚ました。起きた瞬間飛び上がった。
ベッドの横には焦り顔のお父さんと、泣き顔のお母さんがいた。なんか濡れてると思ったら、まだ12月なのに汗がびっしょりだ。
そう言えば、これは夢だったな。夢で良かった。
お父さんが急に僕の肩をがっしり掴んできた。
「良かった……お前、急に苦しみながら暴れだしたから心配したんだぞ!」
「心配かけてごめんなさい……。嫌な夢を見ただけだから。」
「良かった! 本当に良かった! マイクが死ぬのかと……」
お母さんが泣きながら抱きついてきた。
大きな心配をかけてしまったようだ。睡眠時間はいつもと変わらず8時間くらいかな。
安心した顔をしたお母さんが、ハンカチで涙を拭きながら言った。
「じゃあ、マイクも起きたことだし、朝ご飯にしましょうか。今日はフレンチトーストよ」
「やったぁ! フレンチトースト! 早く食べたい!」
僕はとても嬉しかった。甘いものは大好きだ。
「じゃあまず、顔を洗って、私服に着替えなさい。ご飯はその後だからな?」
お父さんは、毎日僕が朝起きたらそう言う。毎日言われてたから、無意識にやってしまうようになった。
「うん!」
僕は笑顔で2人に返事をした。よし、顔を洗ってこよう。