日本の中世寺院の特徴
(参考文献)日本印刷文化史より
伊藤正敏の「日本の中世寺院」によれば、
「かりに寺院の特徴を一言でのべよと言われれば、『職種と人数の多さにおいて他に比類のない商工業技術者の集住地』である」とし、例として高野山にいた商人・職人をあげている。
少しだけ紹介すると、建築関係では屋根葺、檜皮方、大鋸引、木引、材木屋、金工では鋳物師大工、胴細工、金物師、刀鍛冶(軍需産業)、学問では山上算師、文書師、筆師、図師識、金融では、質屋、蔵元である。
しかも、俗人職人ではなく、戦国時代までは、法体(仏門に入り髪を剃り、法衣を着た出家姿)が多かったようだ。
続けて伊藤は、中世寺院を「中世テクノポリス」だとして、下記のように述べている。
中世寺院は、学問にすぐれた僧侶を多く輩出しており、教学以外の俗学のほうが、仏教よりずっとさかんであった。
さらに寺院では高度な手工業技術の研究もなされ、実際に工業製品の大量生産が行われた。
(中略)
寺院は最高の先生が集まる教育の場であり、多数の人材を輩出した。どんな分野をとっても例外なく、武術でさえも、公家・武家をはるかに上回るスーパーテクノクラート、最高の技術者の集合が寺院だった。
「目から鱗」の記述なので、紹介したくなりました。