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日本国中、恐ろしきものは
「日本国中、恐ろしきものは、山中にては山犬(狼)、芝原にてはまむし、村中においては日蓮宗と、この三つは恐るべし、恐るべし」
この文を書いたのは、江戸時代、日向の国(宮崎県)佐土原の山伏寺、安宮寺の住職であり、高齢の修験である泉光院という人物である。
文化九年九月(太陽暦1811年10月)から六年半の回国修行、日本のほとんどの地方を托鉢等をして行脚したそうである。
その日記の中に上にあげた一文が書かれている。
つまり、当時の日蓮宗は、他宗に対して全く非寛容であった。
他宗の托鉢には「汚れる」といい、全く応じない。
他宗の人の借宿などは、もっての外である。
その排他性ゆえ、無念のうちに行き倒れ、命を落とされた旅人も多いとか。
宗祖日蓮の他宗否定を守り(重んじ)、人としての大切なことを壊している。
いずれにせよ、一つのことに拘泥すると、周りも見えなくなる。
人の命を軽んじることは、御仏のご意思に沿うことなのだろうか。
泉光院の嘆きも、当たり前である。




