新薬師寺のステンドグラス
奈良春日大社にほど近い新薬師寺は、天平19年(747)に、光明皇后が聖武天皇の病気快癒を願い、創建した由緒深い古刹。
当時は壮大な寺院だったけれど、現在は本堂(国宝の薬師如来坐像を囲むように、同じく十二神将像が立ち並ぶ)と、鐘楼、地蔵堂、庫裡等を残す。
さて、その新薬師寺の本堂東側に、ステンドグラスがはめ込まれた一画がある。
当時の住職がステンドグラスの美しさに感銘を受け、「心豊かな世紀」への願いを込めて設置されたとか。
天気の良い午前中には、ガラス越しに陽光が入り、ほの暗い本堂の雰囲気は、ステンドグラスから瑠璃光によって、幻想的な世界に変わる。
しかし、このステンドグラスを気にいならない人があるとのこと。
「ステンドグラスなど西洋の物であり、御仏の世界に似つかわしくない」
「遠く天平時代からの古刹の伝統を破った」
「薬師如来様も、十二神将様もお怒りに違いない」
ただ、私は思う。
薬師如来様や十二神将様の御心に、東洋も西洋も、実は時代の差別も、ない。
素直に見て、美しいと思うものを、東洋とか西洋とか、伝統などに執着して否定するのは、仏法の精神ではない。
頑迷な人たちに理解してもらえるとは思えないのが、また残念ではあるけれど。