第一話「適正試験」
※この作品は作者の思いつき、または遊びで書いた作品ですので暖かい目で見てください。
あたりは白い景色に包まれている。真ん中には緑髮の少年がいる。
そう、俺だ。エイアだ。今すごーくやばい問題を抱えている。
彼はそう思いながら寝ていた。この白い空間では、エイアを中心に十個の道がある。九つの道には何もないが、一つの道に大きな門があった。ちなみに門は視界に入り切らないほどでかい。
つい先日のことだった。エイアは目の前の門から異世界に行き、遊んでいた。帰ってみると、何故か門は一つだけになっていた。その時ちょうど可愛らしい魔物の尻尾が見えた。……というのだった。
魔物が何をしたかはわからないがこの世界にしか行けなくなってしまった。たぶん魔物のせいだ。まったく面倒なことだ。
「まあ、暇してたしちょうどいいか。」
少しばかり強がりを言ってみる。そんなこと言っても、周りには誰もいない。しばらくの沈黙の後、エイアは門の外に出た。
辺りには芝生が生えている。そして目の前には大きな街があった。この世界には何度も遊びに来ている。そんなわけでほかの世界よりは詳しい。ゲートが唯一繋いでいたこの世界でしか何もできない。わずかながらの情報でさえも探すしかない。しばらくはこの世界にいることになる。
まずは職業をさがさねぇとな……
彼はそう思いながら草原を出、街へと向かった。
この街はすべての建物が白いレンガで出来ている。エイアは街の中心から少し離れた店のような大きな家に入っていった。看板には『職業案内』と書かれていた。ハローワークだ。
中に入ると店内は椅子と机が並んでおり、右端には本棚があり、中には資料らしいのがたくさんあった。エイアは目の前の空いている席に座り机の上にあるベルを鳴らした。すると、店の奥で店員であろう女性がエイアの席の横に立ち
「いらっしゃいませ。お客様本日はどのようなご用件で仕事をお探しですか?」と言い、お辞儀をした。エイアは女性店員に対し、優しく微笑み
「まあ…ちょっと、いろいろとありまして。少し長くなると思いますので座ってお話でもしませんか?」
と言った。
「わかりました。では失礼します。」
店員がエイアの前の席に座った。
「ご希望の職業はございますか?」
「そうですね。簡単に言いますと、旅をしながら働けるような職がいいです。」
店員は少し俯き顎に指を添え考え始めた。
「でしたら、今流行りの冒険者なんてどうでしょうか。旅の間による町で少し仕事をするだけで生きて行きます。あとは派遣ですかね。」
さて、どうしようか。確かに冒険者はかっこいいし、旅をする身としても、とてもいい職業だ。困っている人の依頼、クエストを受けて、それを解決すればいいのだ。しかし問題は安定しないことだ。たとえばお金が欲しくて町に行っても困っている人がいない、もしくはがほとんど解決済みなんてほとんどらしい。あとは派遣か…正直にいうと嫌だ。遠くに行って働いて金貰って帰って帰ってくる。それは旅じゃない。
そのふうにエイアが迷っていると、女性店員が話始めた。
「お客様今日から働くのですか?」
「え…あ、はい。」
「でしたら適性検査受けてみてはいかがですか?」
「適性検査?」
「はい、今すぐ受けることができますよ。」
確かに今どうしようか、悩んでいる人もあまりないな。これはチャンスだ。
「はいでしたら、その適正検査受けさせてください。」
そしてエイアは店の奥へ連れてかれた。真ん中に椅子とテーブルがあり、テーブルの上には紙とペンがあった。
「こちらで髪を気にしながら、お待ちください面接、体力測定、面接という順番で行います。ご質問はありませんか?」
「特に無いです。大丈夫です。」
「それでは失礼しました。」
女性店員はその場から去った。エイアは椅子に座り、紙を見た。その紙は、個人情報、アンケートを記入する紙だった。
さて、個人情報か…参ったな、これは…
エイアには、名字がない。それどころか、住所ですら無い。あの白い空間がエイアにとっての家なのだ。
「とりあえずこれでいいか」
名前のエイアとだけ書いた。そして住所には『白い空間みたいな何か』と書いた。だって俺も分かんないんだもん。
「さて、次は…と」
アンケートを記入し始めた。初めの方は真面目なことばかり書いてあった。当然だが… 裏を見ると心理テストがあった。全五門の五択の選択で答える形式のようだ。紙にはこう書いてあった。
第一問、宝の地図を見つけました。あなたはどうしますか?①宝を見つけに行く②地図を捨てる③売り出す④一応持っておく⑤食べる
第二門…おい、ちょっとまて、なぜ宝の地図を食べようとする。普通食べるか?煮込むのか?などと考えながら第二問へ、
第二問、あなたは冒険者です。状況はとても腹が減っています。あたりは暗く、道に迷っています。どんな行動をしますか?
①虫を食べる②川の水で腹を満たす③動物を探して食べる④一か八かで町を探す⑤花を食べる
…まあ、まともな感じだな。しかしこれはこれで難しい、とりあえず⑤でいいか。
そんな事で数十分の時がたち、要約紙の記入が終わった。
「ん~、終わった~」
背を伸ばしながらのんきに言う。
しかし…一体いつになったら面接が始まるのだろう。
と思っていると暗くてよく見えなかった奥に机があり、そこから靴の音が聞こえそこを見ると先ほどとは違う女性店員がいた。彼女はいかにも面接官らしい黒い服を着ていた。そうだ、よく考えたらここからじゃないか。この後の面接からがスタートなんだ。
エイアは先ほどとは違い全力で行った。これからの職で重要なのだ。
そしてすべての項目が終わった。後は結果を待つだけだ。エイアは店の中の椅子に座って待っていた。カウンターからエイアの名前を呼ばれた。元気よく返事をし、店員の所へ行った。そしてエイアは渡された紙を見た——————。
あたりはもう暗い。夜道の中、エイアは紙を握ったまま、歩いていた。昼よりも弱弱しく感じられる。
「なんで、なんで…適正が営業なんだ…」
紙には、『個人情報をしっかり書く』とか『体を鍛えなさい』などと書いてあった。
…なきそうだ。
ふと冷静になって気づいた。いつの間にか森にいる。ここはどこだ。
一気に血の気が引いた。そしてさらに腹が減っているのに気づいた。や、やばい、とりあえずなんとかしなくては…。しかし考えても街への道は思いつかなかった。瞬間、エイアの脳にあることを思い出した。それは心理テストの第二問だった。もしあの時の答えがすべて正しいなら…いやちょっとまて、まず食べ物よりも街を探そう。ここは森なのだ、草や花はそこらへんに咲いている。しかし一時間歩き続けて一向に街が見つからない。そろそろ腹も限界にちかい。
エイアは花をつかんだ。そこら辺の雑草よりも花のほうがおいしそうに見えたからだ。食べてみる。味はおいしくなかった。というより不味い。まずいを超えてきて…エイアは吐いた。花、そして胃液…人はここまで吐くのか?と思うほどに吐いた。
ひとまず水だ。水が必要だ。
エイアはふらふら歩きながら森をさまよっていた。
数十分の時が過ぎた。エイアはずっと歩いていた。
月明かりが顔にあたった。近くに池があり、それが反射していた。そこそこおおきな池だった。しかしよく見るとそこが深そうな…そんなことはおかまいなしにエイアは池に顔をつけ、水を飲んだ。数秒の後、息継ぎをし、また顔を池につけ水を飲み始めた。いきかえるようなきぶんだった。
「た…助かった~…」
エイアはしばらく月を見ていた。今日はいらいろあったな、というようなことを思っていた。
池の水が動いた。池の底に何かいる。エイアの勘が逃げろと命令し、素早く木の陰にかくれた。勢いよく水を飛ばしながら出てきたのは巨大なヘビだった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。初めて書いた作品です。一応異世界の作品ですが魔法はあまりでてきません。基本超能力で戦います。
タイトルの『Gate Of The Hero』はエイアの能力をもとにしました。一話では出てこなかったエイアの能力ですが、たぶん次くらいに出てくると思います。
それではまた会う日までさようなら