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四話 魔力ゼロの行方

ブックマーク登録ありがとうございます!

頑張って更新していこうと思いますので、お読みいただけると幸いです。

「大丈夫ですよ! 例え、魔力がなかったとしても、カズヤさんをエイドス魔法学園に入れたいという私の考えは変わりませんから!」


 カズヤがアイリスの言葉によって呆然としていた様子をラシェルはカズヤが自分に魔力がないとわかり、呆然としていると考えたらしい。

 慌てたようにラシェルは更に言葉を続けた。


「それに魔力がないにもかかわらず、召喚魔法によって召喚されたということは、魔力がある人達よりも魔法抵抗力が高いということに違いありません! ……いえ、そもそも魔力がないなんてありえないはず……。そうです! 水晶が壊れていたに違いありません! また後日魔力を計ってみましょう!」


 随分と慌てているラシェルがおかしかったのか、アイリスが小さく笑い声を漏らす。


ぬしに魔力がないのは当然であるというのに、こやつは何を言っておるのじゃろうなあ』


 どうやらアイリスは魔力がカズヤにないことを全く気にしていないらしい。むしろ、魔力がないことを誇っているようですらある。


(ラシェルは俺に魔力がないことを信じられないみたいだけど、何か理由でもあるのか?)


『そうだな、理由ならあるぞ。まず大前提だが、我ら神も人も根源は同じ力を必ず持っておるのだ。もちろんのこと、その絶対量には大きな差が生じるが、今は気にする必要はあるまい』


(人が神と同じ力を持っている……?)


『ああ、そうじゃ。しかし、人とは我ら神とは異なり、穢れを持っておる。それが根源の力と結びつき、魔力へと変質しておるのだ。逆に言えば、魔力を持っていないということは穢れがないということだ。人である以上、穢れを持っていないはずがない。そんな思考からラシェルとやらはぬしに魔力がないことを信じられないのだろうよ』


 穢れに満ちた力である魔力。カズヤはアイリスが前に魔力のことをそう言っていたことを思い出した。


『そこの水晶は近くにいた存在の魔力に反応する物だろう。それが故にぬしに反応しないのは当然だ』


(そういえば俺にはアイリスの影響で魔力がないんだって言っていたよな)


 アイリスが宿るせいで神気がカズヤの内に存在し、魔力が溜まることがない。アイリスの言葉を思い出しながら、カズヤは考える。


(……もしかして、神気って魔力と反発するのか……?)


 魔力が溜まらないというアイリスの言葉からカズヤはそう考えた。


『いや、ぬしの言葉は違っているぞ。そもそも魔力が生成されるためには穢れが必要なのだ。しかし、我ら神が持つ神気は穢れを浄化する力だ。そんな力がぬしの中に存在している以上、穢れが溜まることなどありえない。つまりは魔力も溜まることがないというわけだ』


(なるほど。つまりは魔力になる材料がないから、魔力が俺に存在しないってわけか)


『そうだ。感謝するがよいぞ? 妾のお陰で穢れに満ちた魔力がぬしの中に溜まらないのだからな』


 アイリスは随分と自慢げだ。

 そんなアイリスにカズヤは苦笑した。


「――ですので、カズヤさんにはエキドナクラスに入っていただきたいのです」


 カズヤがアイリスと会話している間にもずっと話し続けていたラシェルがそう告げた。


「エキドナクラスですか?」


 聞き返したカズヤにラシェルは首肯をすると説明を始めた。

 ラシェルの話をまとめると、このような内容だ。

 まず、エイドス魔法学園には三学年に分かれており、一つの学年につき、三つのクラスがあるらしい。

 クラスは担任の名前を冠しており、生徒の魔力によって三段階に分けられているとのことだ。


 ラシェルが言っていたエキドナクラスは一学年の最も魔力が低いクラスに当たるらしい。現時点での魔力が分からない――ラシェルは未だに水晶が壊れていたと考えているらしい――ため、ひとまずはエキドナクラスで様子見をしてほしいとのことだ。


 学年が一学年な理由は記憶が混濁しているカズヤがもう一度魔力の扱い方を学ぶことで、記憶を取り戻すかもしれないとの理由からということだ。

 幸いにも昨日は一学年が入学する日であったため、時期的にも都合がよかったらしい。


「カズヤさん、エキドナクラスで構いませんでしょうか?」


 説明を終えたラシェルが改めてカズヤに問う。

 正直なことを言えば、カズヤは自身に魔力がないことは分かり切っていたために、ラシェルの提案はありがたかった。周りの生徒の魔力が少ないのであれば、カズヤに全く魔力がなかったとしても誤魔化しやすいと考えたためだ。


「はい。エキドナクラスでお願いします。魔力がない俺には魔力が高いクラスは荷が重すぎますので」

「あら。魔力がないなんてことあり得ないんですよ? カズヤさんが心配なさらずとも水晶の間違いに決まっていますわ」


(本当に魔力はないんだけどな……)


『まあ、良いではないか。こやつが勝手に勘違いをしているだけだ。ぬしが気にすることではあるまいて』


 ラシェルとアイリスの言葉にカズヤは乾いた笑みを浮かべるのだった。



         ◇



「……これはすごいことを聞いちまったな」


 カズヤ達が話をしていた魔力測定の部屋の外。扉を一枚隔てたそこで一人の男子生徒がカズヤ達の会話を盗み聞いていた。


「魔力がない、ね」


 男子生徒は小さく言葉を口にし、あり得ないと首を振った。

 しかし、男子生徒は今までに水晶が壊れたということは聞いたことがなかった。そのため、魔力がない、ということはあり得るのかもしれないとも考えた。


――それでは、早速、教室の方へ行きましょうか。

――え。もう行くんですか?


 部屋の中からカズヤ達の声が男子生徒の耳に入った。

 どうやらもう部屋から出るらしい。男子生徒は二人の声からそう判断するとそそくさとその場を走り去って行くのだった。


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