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過去

「もう俺がここに来てしばらく経った。昔は今と違って人々は結構古風な生活をしていて、おまけに西洋と東洋の文化が両方ごちゃ混ぜな物ばかりだった。俺はこの国の近くに転生して、かつて存在していた森の中をひたすらに歩き回り、この宮殿を見つけた」


「前からあったんですか?」


「ああ。どうも俺たちより何代か前の転生者の意見で作ったものらしい。だが、当時はこんなんじゃなかった。もっと地味で装飾なんて一つもない状態だった。まあそれでだ、俺はひとまず宮殿に入ることにしたんだが、どういう訳か門番とかは全くいなかったからすんなりと入れた。で、俺は宮殿にいる王らしき人に会い、身振り手振りで自分がどういう人間でどうしてここにいるのかを伝えようとしたがやっぱり通じなかった」


「それで力を使ったんですか?」


「ああ。俺の力は何でも作れる力。俺はそれで翻訳機を作ったが翻訳機を作っただけで意味はなかった」


「意味がない?」


「いくら翻訳機があったって、単語を全く知らないっていうのじゃ意味がないだろ。でだ、俺が言葉を話せないと知ったその人は俺に一冊の本をくれた。それがここの辞書だ」


「辞書ですか?」


「そうだ、ひとまず辞書をあげるから話せるようになったらまた来いっていう意図だと俺は思った。早速辞書を見たが驚いたよ。一つの単語の横にびっしりと色々書いてあるんだがそのうちの一つが昔の日本語、現代でいうとこの古典で書かれていた」


「古典ですか?」


「俺は生前古典を研究していたからすんなりと読むことができた。必死に覚えちょうど、一ヶ月ぐらい経ったあと、また王のとこに行ったんだ。精一杯の拙い現地語で話したが何とか伝わって俺はここにいていいことになり、俺は早速力を王に見せた。すると俺は崇められはじめたんだ」


「神かなんかだと思われたってことすか?」


「俺は何でも作る力で当時なかった様々なものを作り出した。テレビや携帯、ゲーム機に車やバイク、自転車などあらゆるものを作った」


「電気はあったんですか?」


「いやなかった。しかしな、ベストとも言えるタイミングである知らせが入った。俺と同じような奴が他国に来たという知らせがな。俺は急いで他国に向かい俺と同じように転生して来た人間を探し出した。そしてそいつらと協力して自分たちがいる国を発展させようと決めたんだ」


「それで何とかなったってことですか?」


「俺と同じ様に来たあいつらの中の数人はチートで電気も出せたんだ。それで電気を出してもらって俺の作ったものがようやく動くようになった。俺が様々なものを作って他国に流す代わりに電気をもらうという約束を作り俺らは各々の国を発展させて行った」


「チートだったら物くらいいくらでも作れたんじゃないですか?」


「俺もそう思ったんだが彼らは電気を出すのに忙しいから無理だということで俺が作っていた。それによって国はめまぐるしい発展を遂げた。それこそ地球と同じようになっていったよ。インターネットも出来上がっていた。自国でしか使えない程度だったがな」


「あんたの言ってた森林はどうして消えたんだ?」


「俺らが来たときには砂漠しかなった。あんなとこが森林だったなんて信じられない」


「俺はつくづく痛感したよ。力を持つと誰しも愚かになるってことを。最初は良かった。みんなこの国を発展させようって意気込んでいて力に頼りきりだったけど精一杯やってたんだ。でもちょっとずつ変わっていった」


「………」


「俺たちは発展させすぎたんだ。確かに発展させることによっていいことはいくらでもあった。湖に水を汲みに行かなくて済む。作物が安定して取れるとか、人を使わなくても鉱物が取れるとかな」


「戦争でも起きたのか?」


「今まで起きたことがなかった戦争が起きたんだ。俺の国ともう一つの同盟国で相手は四国。いつの間にか銃が作られていて、いつの間にか爆弾が出来ていて。俺たちが急いで止めに入ったが聞き入れてもらえなかったんだ」


「んで?最終的にあんたらがなんかしたのか?」


「俺ともう一人で戦争を終結させた。仕掛けて来たうち二国を滅ぼすという形でな」


「………じゃああの砂漠は」


「爆弾や銃が使われ、そして俺たち転生者が戦ったせいで修復不可能になった森の跡地だ」


「戦争の原因は?」


「分からないんだ。彼らは理由を決して口にはしなかった」


「成る程。で、攻めてきた転生者は全員チートってことですか?」


「二人ほどチートではなかった。ただその二人を俺ともう一人で殺した」


「そうですか」


「次いつ攻めてくるかは分からない。だから頼む。共にこの国を守って欲しい」


「分かりました。その代わりもう二度と先のような事はしないでください」


「次はマジで殺すからな」


「分かった。肝に命じておく」


「じゃあ早速、鍛えてもらおうか」


「………ごめん、私は……ちょっと……無理………。怖い……」


「…………あっし……も……………怖い」


二人は怯え、そして震えていた。汗をかき、しきりに自分の左腕をさすっている。


「………一輝、今日は帰ろう。二人はとてもじゃないが無理だ」


「そうだな」














あれから五日ぐらいがたった。

ようやく二人は落ち着き始め、肉も何とか食べられるようになった。ただやはり量は食えないみたいだ。

こちらの世界の食べ物は基本大丈夫だったが、いくつかは身体に合わず一日中寝込んだ。


「お前ら、大丈夫か?」


「一輝、その質問は相手に大丈夫と言うことしかできないようにしてしまう質問だ。まだ無理だろ?」


「もう平気………ごめん、ちょっときついかな」


「…………あっしも」


「そうか。どうするか」


「ごめんね、私達がこんな風だから………」


「お前らのせいじゃねえよ。人にだって得意不得意はある。俺と亮がむしろおかしいんだよ」


「俺は慣れてるからな」


「何で?」


「俺は生前医学部にいたから解剖の後に食事は普通だった。それで慣れたんだと思う。そう言う一輝はどうなんだ?」


「俺はまあ、見慣れてるからな」


「………そうか」


「俺と亮だけでも行ってくるか?」


「しかし………」


「私たちは気にしなくていいよ。私たちももう少しで大丈夫になると思うから先にやってて」


「あっしも由美に賛成」


「そうか。………じゃあ行くか」


「だな。留守番頼むぜ」


「うん」


「行ってらっしゃい」








再び宮殿に来た。以前の大広間で再び陽介さんと会った。


「で、俺たちだけなんですよ」


「見ればわかる」


「少ないけどやりましょうよ」


「…………そうだな。ではやろうか」


「お願いします」


「お願いします」


「ああ」


「陽介!!」


突然誰かが陽介さんの名前を呼ぶ。見ると少し前に会った絵里さんだった。慌てた様子で俺たちのところへ走ってくる。


「どうした?」


「来たわ!!」


「っ!!早すぎる!!一輝!!亮!!急いで二人を助けに行け!!」


「来たって何が!!?」


「転生者だ!!」










「ついに準備は終わった。反撃を開始する。航平、春。お前たちの頑張りを俺らは無駄にしない。必ずお前たちに平和になったこの世界を見せる」


少し小さい部屋に四人で輪になるように座っている。


「とうとうなんだね」


「俺たちは万が一のためにここで待つ。頼むよ翔、泰晴」


「任せろ、春、航平。また四人で会おう」


「うん」


「うん」


「じゃあ俺はスピーチしてくる」













『ついに準備は整った。長く長く辛い時期だったと思う。だが、もう少しだ。もう少しで全てが終わる。再びこの世界に俺たちの手で平和を作り上げよう!!』


国民全員の歓声が心地よい。

長く苦しい時間を過ごした。

待っていろアバズレ、クソガキ、クソジジイ、陽介。





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