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決意

「知ってるな?」


「答えろ。どうして知ってる」


身体のあちこちの痛みが取れる。

絶えず口から出ていた血は止まり、四肢をはじめとした身体の部位はゆっくりではあるが動かせるようになった。


「答えによってはお前を殺す」


「物騒だなおい。まあいい。答えから言おうか。まず、どうして俺が二人を知っているか?答えは簡単。二人がここにいて俺たちの仲間だからだ」


「……………いる……の………か?」


二人がここにいる?

あり得ない。

いやでも、もしかしたら転生されているかもしれない。

待て、落ち着け、嘘かもしれない。

落ち着け、平常心だ。


「何なら声聞くか?」


「っ!!」


「こっちの世界だって携帯ぐらいはあるぜ」


「お前自分のぶっ壊しただろ」


「やべえそうだった。泰晴、貸せ」


そう言われた彼は不満げにポケットからこの世界での携帯と呼べるものであろう物体を彼に投げつけた。


「壊れたらどうすんだアホ」


「とっととかけろバカ。時間ねえんだよ」


「はいはい」


慣れた手つきで彼は何かをして耳にそれをあてる。


「もしもし、俺だ。翔だ。お前ら梶田一輝って奴について話してたよな?それでな、今目の前にいるんだわ。信じてねえみたいだから声聞かせてやれよ」


彼はそう言ってそれを俺に向かって投げる。

それをキャッチして震える手で耳にあてる。


『もしもし、春か?もしくは航平か?』


『お前は梶田一輝か?俺は航平。鈴木航平だ』


『俺は梶田一輝だ。お前は、航平なのか?』


『ああ。そして隣には春がいる。………………変わるぞ』


『………頼む』


『一輝?』


『…………春か?』


『うん。清水春だよ。貴方は、梶田一輝?』


『………………うん』


『こっちに来たってことは、…………そういうことだよね?』


『…………ああ。でも、正直なところ、………嬉しいんだ。また、お前らの声が聞けたことが……』


『泣かないでよ、一輝。………………駄目だ、航平変わって』


『………………航平か?』


『泣くなよ馬鹿が。俺まで泣きそうだろうが…………』


『声が震えてんぞ』


『お前もだろ』


目からぼろぼろと涙が落ちていく。

もうじき二十歳になるやつが、人目を気にせず号泣している様をこいつらはどう思うかとか、そんなことは一切頭に入ってこなかった。

ただ一つ、また声が聞けた。

それだけが頭を埋め尽くす。


「感動の再会のところ悪いんだが、話を戻そう。お前、俺らのところにこないか?」


「っ!!」


「来れば二人に会えるぜ?」


「行く!!連れて行ってくれ!!二人に会いたいんだ!!頼む!!」


「じゃあ交渉成立だな」


「待て一輝!!よく考えろ!!」


「携帯返せ〜」


俺はすぐに彼にそれを返した。


「というわけだ。今からこいつを連れて行く。よろしくな」


そう言って彼はそれをしまった。


「待て!!させねえぞ!!」


亮………。


「お前らは戦争仕掛けた張本人なんだろ!!?一輝、騙されるな!!こいつらは転生者だ!!きっと何か力を使ったんだ!!」


「そうだよ一輝君!!考え直して!!」


近衛…………。


「さすがに一輝もそこまで馬鹿じゃ無いよね?」


多治見………。


「俺は……」


俺はどうしたいんだ。

どっちを取る?

亮達か、春達か。

………………決めた。


「ごめんな」


俺は亮達に手をかざす。


『眠れ』


亮達は静かにその場に倒れた。


「いいのかい?」


「…………良いんだ。それに万が一騙していたなら、俺はお前を殺すからな」


「任せろ。嘘だったらバッチリ殺されてやるよ」


「行こうか」


『ーーーーーーーーーー!!』


泰晴がそう言うとシェルターから兵士が整列して出てきた。


「帰るぞ。そしてようこそ、我らの元へ」

















「ーーーー!!ーーーーーーーー!!ーい!!おい!!しっかりしろ!!おい!!」


「ん?……………陽介さん」


「大丈夫か?何があった?」


俺たちはいつの間にか宮殿に戻され、そしてその中の一室で寝かされていた。


「二人は?」


「まだ寝ている」


「……………一輝が」


「……………そうか。あいつはあちら側に着いたのか」


「ええ」


「我々の国の被害は甚大だ。準備していた兵器の半分以上が破壊され国の半分が破壊された」


「あのロボット達はどうして俺たちを攻撃したんでしょうか?」


「ん!!?どういうことだ!!……………すまない。とにかくそれは一体どういうことなんだ?」


「ロボット達は俺や一輝、多治見や近衛に向かって銃を撃ってきたんです。俺たちが何もしていなくても」


「……………どういうことなのだ?プログラムには既にお前達を仲間と認識するようにプログラムしておいたはずだ」


「あいつらの仕業ですか?」


「それはあり得ない。あいつらがメインシステムの場所を知るはずがない」


「どういうことですか?」


「毎日メインシステムの場所は変えてあるんだ。事実俺も今日はどこにあるかまだ知らない」


「じゃあ、それを知っている奴がスパイとしてここのいるってことじゃないですか?」


「だとしても無理なんだ。あれは厳重な鍵がしてある。俺にしか開けない鍵がな」


「そうなんですか」


「ひとまず君達には新しい部屋を用意した。彼女達が起き次第、案内しよう」















「ここが新しい住まいか」


少し経った後多治見と近衛が起き、俺たちはここに案内された。


「行こうか」


「……………うん」


「うん」


俺たちは部屋の鍵を開け中に入る。

そして俺たちは直ぐにソファに並んで座った。


「…………一輝くん、どうして行っちゃんたんだろう」


「………分からん。携帯で誰かと話していた時あいつは泣いていたが、おそらく電話の相手と過去に何かがあったはずだ。だが、俺たちは一輝の過去を知らない」


「ねえ、どうせならさ、話そうよ。今まであっしらなんとなく聞かなかったけど、過去のことをこの際全部話しちゃおうよ」


「……………確かにこれから一緒に戦う仲間だ。互いを知るために、互いを解るために、話そう」


「…………うん。じゃあ私から言うね。私は十七で死んじゃった。あの日は午前中から家族で出掛けてたんだ。お父さんとお母さん、私とお姉ちゃんと弟でね。それでね、………刺されたんだ。私だけ」


「通り魔というやつか?」


「分かんない。でも今思うと私でよかったって思うよ」


「…………強がんなくていいよ由美」


「…………本当は………なんで私なのって…今でも思うんだ。………ごめん、ちょっと」


泣いている彼女を多治見が抱きしめる。


「そうだよね。みんな思うよ。なんで自分なんだろうって。泣きたくなったら泣こうよ。我慢しないでいいんだよ」


そう言われた近衛は声をあげて泣いた。


「お前はずいぶん落ち着いてるな」


「あっしはね、十六で死んだ。病死だよ」


「…………」


「小五で発症してね。死んだ日は、今までで一番体調が良かったから久々に家族と遊びに行ったんだ。数日前からだいぶよくなってね、家に戻って過ごしててさ。久々に外に行きたいって言って家族で行ったんだ。それで午前は良かったんだけど、午後に急に苦しくなってね。そのまま」


「…………お前も無理はするな。お前だって泣きたくなったら泣け。何なら俺の胸を貸してやるよ」


「…………借りていい?」


「ああ」


多治見は俺にもたれかかった。

多治見に慰められていた近衛は落ち着いたようで、静かに俺たちを見ている。

俺の胸の辺りの服の生地を多治見は強く握り必死に声を上げないように泣いていた。


「声出してもいいぞ」


「…………ごめんね」


「気にするな」


こういう時はどうしたらいいのかは分からない。

ただ、少なくとも今はこれが最善なのだろう。


「亮君は?」


「俺は二十三で死んだ。休日だったからな、午前はだらけてたよ。で、午後にいきなり知らん奴が部屋に入ってきてな。俺はそいつに刺された。そいつはすぐに逃げようとしていたが、俺は腹に刺さっているナイフを抜いて逆にそいつの胸に突き刺してやった。そいつは泣きながら叫んでいたが俺はナイフを抜いてそいつの口の中に刺した。そいつが死ぬのを見て俺も死んだんだろうな」


「亮君も刺されてたんだ」


「お前と違って俺は刺してきた方を殺しちまったけどな」


「強いね」


「悔しいんだよ。何で自分だけが死なないといけないんだって思ってな」


「……………」


「亮君」


「何だ多治見。あ、すまん、無意識に撫でてた」


「………もうちょっと続けて」


「…………ああ」


















「着いたぜ。ここがお前の新しい拠点だ」


「二人は?」


「焦るな。すぐに会わせる」


「こっちだ」


国の中は至る所がボロボロだった。

だがどういうわけか人は全くいない。

やはりこの世界は何かあるようだ。


「何で誰もいないんだろうって思っただろ?」


「ああ」


「これを見ればすぐに答えがわかるさ」


そう言って翔はボロボロの建物の前に止まりそこへ入って行く。

俺は彼の後に続くとその中には扉があり、それは俺たちが前に立つと同時に開いた。

彼と泰晴は何の抵抗もなく中に入って行き慌てて俺も後に続くと中には階段があった。


「答えはこれだ」


「…………地下にあるのか」


「ああ」


少し降りた先で見たのは、見たことのない人々と街だった。

車が走り、電光掲示板のようなものがあちらこちらにあり、ビルが建っている。


「地上は危ないからな。俺たちは地下を選んだ」


「そうなのか」


「こっちだ」


案内され暫く歩いていると部屋が一つ。


「ここにいるぜ」


俺は震える手で扉に手をかけ、ゆっくりと開けた。中には成長はしたがどこか面影が残っている見知った顔の二人がいた。


「春、航平!!」


「一輝!!」


「一輝!!」


俺たちは三人で抱き合った。

そして抱き合いながら泣いた。

枯れるほど泣いたと思った。

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