終結
俺と近衛は巨大なロボの後をつけて行った。
先では何台かの同じ奴らが暴れまわっていた。
しかし、詳しいことは何も分からなかったので、倒れていないビルの壁に背中に手を生やして近衛を掴みつつ登り何があるのかを確認した。
すると二人の人間がロボ相手に戦っていた。
「近衛!!今からあそこまで飛ぶぞ!!」
「分かった!!」
『飛べ』
勢いよく飛んでいき、二人の少し後ろに着地する。
「またか!!?…………一輝か!!」
「お前か!!」
「手伝え!!」
「亮と多治見は!!?」
「後ろのシェルターにいる!!そいつは戦えるのか!!?」
「少し厳しいと思う!!俺がやるからいいだろ!!?」
「早く後ろに行かせろ!!急げ!!」
「分かってるよ!!」
「一輝…………」
「あの中に二人がいるんだ。確認してきてくれ」
「分かった」
近衛は後ろのシェルターに走って行く。
「何すればいいんだよ!!」
「こいつらぶっ壊せ!!」
『あのシェルターを囲め』
シェルターを先程同様に鉄屑で囲う。
『気を付けろよ、一輝。今日だけで既に二割も使っているんだ。消費は一割にしろ』
「どうすりゃいいんだよ」
『まず、刀や銃を取り出すのではなく、爪に纏わせろ』
「爪?どうやって」
『右胸に爪を当てろ。そうして纏わせるイメージだ』
言われた通りにすると左手の親指の爪が黒くなった。
『それでもう力の制限は完全に無くなる。背中の手を増やしてそれで戦え。どうせ剣では勝てない』
「分かったよ!!」
『生えろ』
背中に手を八本生やした。
「準備できたか一輝!!?」
「ああ!!」
戦っている彼等の間を抜けて、一機に登る。
「どこかに繋ぎ目が有るはずだ。…………くそ、揺れるなよ!!手で自分を支えてるからって振り落とされないわけじゃないんだな」
背中に繋ぎ目を見つけ、そこに余っている手を鋭くし刺し込む。
「開け、ばかが!!」
繋ぎ目が切れ少し穴が開いた。
そこに手を再び入れこじ開け、俺は滑り込むようにその穴に入った。
「…………ふう、さて。内部構造を知ることが出来れば、何処を破壊すれば止まるかが分かる。そうすれば最低限の攻撃で破壊が出来る。………しかしなんだ、広いな。さてさて、行くか」
入ったはいいが何処から攻めるかを悩んだ末、上の方から攻めることにした。
「背中の手は便利だな。何もなくても登れちまうから」
所々を破壊しつつ上に行くと扉があった。
「妙だな。見る限りだと梯子も階段も廊下もここにたどり着く為の手段が何も無い。だがまあ、見とかないとだな」
扉に手をかけゆっくりと開ける。
そこにはいかにもな操縦室があり、椅子に誰かが座っていた。
「おいお前、止めろ」
俺は背中の手の内の一本でそいつの頭を掴む。
しかし、怯えた様子もなければ、反応すらない。
「無視とはいい根性だ。もう一回だけ言うぞ、止めろ」
反応は無い。
「そうか、じゃあ、死ね」
頭を握り潰した。
しかし、血も流れなければ肉体が倒れることもなかった。
「なんだ?…………また歩兵かよ!!」
椅子から胴体を蹴り落とす。
そこに座り目の前の様々なスイッチを見る。
「…………字が読めねえからわかんねえなこれ。ん?なんだこれ?」
青く点滅するスイッチを見つけた。
こいつだけ何となく生きてると云うか機能しそうと思った俺はそれを押した。
「……………何も起こらねえか」
俺は部屋から出て、下の方へ向かうことにした。
「さっきから所々壊してるのにどうして倒れたりしないんだ?」
下には何もなかったので、しょうがなく腹をぶち破って外に出た。
既に二人は二機ずつ破壊したようだった。
彼等は倒れている二機の上に立っている。
まだ彼等は何体かを相手取り戦っていた。
「じゃあこの一機ぐらいは俺が!!」
背中の手を集約し巨大化させる。
『巨大化』
ロボットよりも大きくなった拳でロボットを上から殴る。ただ、殴ると云うよりは潰した感じになった。
「ふう」
「まだいるぞ!!気抜くな!!」
「分かってんだよ!!」
「ならいい!!」
「来るぞ!!」
大型は俺たちから少し離れ止まった。
すると身体の至る所が開き中から嫌になる程壊してきたやつらが次々と降りてきた。
「またかよ!!」
「いや、これはチャンスだ。大型の武器はもっぱら中に搭載しているあいつらだ。あいつらを出させちまえば、あいつ自体はただの鉄屑だ」
「ただ出てくる量が出てくる量だから苦戦するんだよな」
「俺が中に入ったやつは中に何も無かったけどな」
「…………部屋があっただろ」
「ああ」
「中に青いスイッチは」
「あったぜ」
「押した………よな?」
「ああもちろん」
「ならいい」
「何かあんのかあれ?」
「あれは自爆スイッチだ」
「自爆か」
「ああ。中に搭載してあるロボットは万が一の時にそのスイッチだけ押すために乗せられている」
「まあそいつもぶっ壊したけどな」
「来るぜ」
俺達に銃口が突きつけられる。
「じゃあ、まあ、健闘を祈るわ」
「おう」
「へいへい」
俺たちは散った。
「やっぱり一人はやりやすいな!!」
歩兵を手で潰し、貫き、破壊する。
先程と同じようにやった。
『おい一輝、そろそろ六割になる』
「じゃあ最後にもう少しだけ手の数増やすわ」
先程生やした腕より更に六本生やした。
「取り敢えずまあ、五本で身体を覆って残りで攻撃をするか」
五本を身体に巻きつけ簡易的な鎧にし、残りで同じように攻撃をした。
歩兵はどうということはなかったが、魔法を使えないせいで三本足や四本足を倒すのは幾分か骨が折れた。
段々と終わりが見えてきた。
「これで!!ラストだ!!」
最後に五本足を背中の手で上から殴りまくりぐしゃぐしゃにしてやった。
正直なところストレス発散として衝動的にやってしまった。
「終わったか一輝!!?」
「終わったよクソ野郎!!」
「こっちも終わったぜ!!」
数機の大型の身体から出てきたあいつらを全て破壊した後に、どうやら二人で残りの大型を破壊したようだ。
「全く疲れるぜ」
「ああ」
俺たちはその場で仰向けに倒れた。
俺の背中の手はいつの間にか全て消えていた。
「やべえなあ、動きたくない」
「チートなんだろあんたら、だったら俺を運んでくれよ」
「バカか。俺たちだって力を使えば疲れるんだよ。ただ、体力がお前らよりはるかに多いだけだ」
「でも、俺と同じくらいの事してバテてんじゃん」
「お前が戦ってる間俺たちはお前の何倍も動いてたんだよ」
「はいはい」
「一輝くん!!」
「一輝!!」
「一輝〜」
あいつらが俺のところに来る。
後に続くようにシェルターの中にいたであろうやつらが二人に駆け寄る。
「大丈夫かお前ら?」
「人のことを心配する前に自分のことを心配しろ」
「大丈夫!!?」
「近衛は大袈裟なんだよ。多治見を見ろ、心配なんかしてねえだろ?」
「だって死なないんでしょ〜?」
「そうだけど、少しは心配してくれよ」
「心配はしてるよ〜」
「はいはいありがと………」
「どうした一輝?」
「あれ?なんかすげえ身体が変だ。なんだろこれ」
起き上がろうとしたところで腕に力が入らないことが分かった。
足にも力が入らない。おまけに口からは何かが滴り始めそれは赤く、鉄臭い液体だった。
「なんだこれ?」
『許容量が超えた。身体に凄まじい負荷がかかった。現在進行でお前の身体は壊れている』
「あらら、でもまあ死なないなら大丈夫だろ?」
『死なないだけで再生は通常の速度だ。死なないが、行動は鈍くなるぞ』
「それは駄目だ。急いで治さないと」
「大丈夫一輝くん!!?」
「多治見、治して」
「はいはい」
「止めろ」
俺に治療を施そうとした多治見の手を掴んで止めたのは、泰晴だった。
「おいおい、何だよ邪魔すんなよ」
「なんで止めるんですか!!?」
「お前達は今日だけで力を使い過ぎだ。これ以上使えば一輝のようになるぞ」
「でも早く治さないと!!」
「これを飲ませろ」
そう言って泰晴は多治見の手を離し懐から緑色の瓶を取り出し近衛に差し出した。
近衛は受け取り俺の口にそれを流し込んだ。
「何ですかこれは?」
「俺が作った超速で再生出来る薬だ。副作用は何も無い」
「クソまずい」
「当たり前だ。もとより飲ませるように作ったわけでは無いからな。だが効果は保証する」
『ーーーーーーーーーー』
もう一人が何かを言うと二人の周りにいた彼等はシェルターに戻っていった。
「よいしょ」
そう言って一人が立ち上がる。
「お前には自己紹介がまだだったな。おれは今己翔だ。そしてこいつが改めて八瀬泰晴。よろしく」
「よろしく」
「さてお前、一つ聞きたいんだが」
「何だよ」
「お前、春と航平って知ってんだろ?梶田一輝」
「……………何でお前がその名前を知ってんだ」