出会い
初めての投稿です。つたない文章ですが、頑張ります。よろしくお願いします。
「ねえ。人がいるっぽい場所が全く見当たらないんだけど〜」
「俺に言うんじゃねえよ。黙って歩く」
「もう疲れたよ!一休みと洒落込もうぜ!」
「二人ともうるさいぞ。しかし、疲れたのは確かだ。休むことには賛成しよう」
「あっしも〜」
「賛成派が三、反対派が一。よって休憩します!!」
「ふー」
「よっこいっしょ」
「ぐへー」
彼を除く三人はその場に腰を下ろした。
「しっかしまあ、暑いね」
彼女は呑気にそんなことを言って、空を見上げている。
空は雲一つない青空であった。
「当たり前だ。こんなかんかん照りな上にあたり一面砂で防ぐものは何もないんだ。仕方ないだろ」
「おい〜、このままだと今日もここで過ごすことになるんだぞ」
彼らがここに来ておおよそ二日が経った。
彼を除く三人はもう一歩も動けないと言わんばかりにだらけ始めた。
正直彼も休みたかったが、こんなところで休むよりも一刻も早く村か国でも見つけて、そこにある宿でベットに寝そべりたいという欲求の方が強かった。
なんとしてでも彼らを起こして、もう少し距離を稼ぎたかった彼だが、正直彼もかなり疲れていてその場に寝転んでしまいたかった。
「いいじゃん、君の魔法で色々してくれよー」
「焦ってもいいことはないぞ」
「そうだぜ〜。生き急ぐことはねえって〜」
「ったく」
彼は誘惑に負け、三人と同じように腰を下ろした。
彼らは完全にその場から動かなくなった。
「じゃあ今日はここだね」
「じゃあ、いつものよろしく」
「へいへい」
一度座ってしまったため、もう誰も歩く気力が無くなった。
彼らは仕方ないと思っていた。
二日も何も食べられず、何も飲めない環境でずっと歩き続けてきた。
空腹もさることながら、それ以上に喉の乾きが彼らを苦しめた。
彼らが歩いている間に雨は一滴も降らないうえ辺り一面砂漠だった。
「ええっと〜、俺たちが全員寝転がれるぐらいの大きさの家になれ!」
彼がそう言うと彼らの周りの砂がゆっくりと固まり始めた。
彼自身魔法を使えるという力をもらったため、てっきり水を出したり、一瞬で何処かに飛んだりということができると思っていたが今のところ出来るのは、ただただ周りにある砂を固めて何かを作る程度のことだけだった。
これも立派な魔法の一つだと彼は自身に言い聞かせ、名前をつけようとしたが、あまりかっこよくないということで却下になった。
「上は開けとけかないと光がなくなって暗くなるから開けとくけどいいよな?」
「いいよ!!」
だんだんと固まっていき、さながらかまくらのような形になった。
しかし上には穴が開いている。
単に彼が夜空を見たいという三人からしてみれば非常にどうでもいい理由で穴が開いている。
だが朝になるとその穴に入ってくる光が結果的に彼らの目覚ましになっているため、三人は特に何も言わない。
「家じゃないよね!これ!」
「文句言うなよ」
「そうだぞ。これができるのはこいつくらいなんだ。感謝しないと」
「あっしはなんでもいい〜」
彼はまだ明るい空を見ながら、死んだ日を思い出していた。
「あれ。ここどこ?」
「目が慣れましたか?梶田一輝くん」
声のする方を彼が見るとそこには薄着の女性が立っていた。
「なんで俺の名前知ってんの?あんた誰?てかなんでバスローブ着てんの?」
「バスローブじゃありません!!何度言わせるんですか!」
(いや、俺初めて聞いたんだけど)
「そうでしたね、あなたは知らないですよね」
(あれ?声に出してた?)
「いいえ。声には出てませんわ」
(それならいいや。…いやよくねえよ。考えてること筒抜けってことじゃん)
「気にすることはありませんわ。ここはあなたが何を考えても、すべて私にはわかってしまうのです」
「へえ〜、てかあんた誰よ?」
「申し遅れましたね。私は女神です」
「へ〜そうなんですか。ってなるか。何が女神だ。バスローブ着て杖持っただけだじゃねえか」
「だから!バスローブじゃないって言ってるでしょ!」
目の前の自称女神はそう言って彼に怒る。
身長は彼と同じくらいで髪の毛は腰のあたりまで伸び、色は白。
(…………つるぺただ。俺のイメージだと女神ってもっとこう、なんか、まいいや)
「……………いつかは出るとこ出るんだよ!!!」
「…………まあ頑張ってください」
「…………消してやろうか!!?」
「…確かによく見れば、バスローブより薄いな。何それ?」
「これは神のみが着ることをゆる「てかもう帰っていい?大学に遅刻しちゃうよ」人の話は最後まで聞きなさい!!」
「帰り道どこ?」
「はあ、帰り道なんてものはないわ」
「じゃあ監禁ってこと?」
「なんでそうなるの?あなたみたいな人、監禁するのに値しないわ」
(なんだこのバスローブ野郎は。急に失礼だな)
「会ってすぐに私を見てバスローブって言ったやつに言われたくないわ」
自分が少し失礼だったと思い、下手に出て彼女に改めて要求を言った。
「あの〜、その件については謝るんで、帰してもらえませんか?」
「帰る必要はないし、大学に行く必要もないわ」
「へ?」
「あなたは死んだんだもの」
「え?俺が?死んだ?」
「そうよ」
「いや、そうよじゃなくて。俺が死んだ?嘘でしょ?え?は?」
「落ち着きなさい」
「落ち着いてられっか!なんでだ!」
「それは自分で思い出しなさい」
(ええ〜、死んだとか嘘だろ。ドッキリだろこれ?だとしたら悪質すぎるぜ)
「ドッキリじゃないわ」
(早く『ドッキリでしたー』って言ってくれ、頼む。誰か、お願いだから!)
「残念だけど現実よ。思い出してみなさい」
(ええっと〜たしか今日は・・・朝の7時に起きて、ネットニュース見て、9時になって朝ごはん食って、シャワー浴びて、髪型セットして、着替えて、午後から講義入れてたからお昼頃までネトゲして、そっから大学に自転車で向かってたな。
途中でおばあさんが倒れてて、救急車呼んで、到着するまで一緒にいて、その後信号引っかかって待ってたら、小さい子が道飛び出して…車にはねられそうになったその子をかばって…はねられて吹っ飛んで…)
「どう?思い出した?」
「…そうか。死んだんだ、俺」
「わかったみたいね」
「……………そうするとここは、天国に行くか地獄に行くかの裁定するとこで、あんたは裁定者?」
「切り替えが早いのね」
「くよくよしてたって意味がない」
「そうかしら?」
「まあいいよ。で?あんたは閻魔様的な人?」
「それは違うわ。何度も言ってるじゃない。私は女神よ」
「そうか。じゃあ女神ならなんでも知ってるのか?」
「ええ、勿論」
「じゃあ、俺の前で倒れたおばあちゃんと庇った子はどうなった?」
「二人とも無事よ。おばあちゃんは、入院してるけど元気だし、庇った子も軽症よ」
「それだけ聞ければ十分だ。で、女神さんよ。裁定者はいつ来るんだ?」
「裁定者は来ないし、ここは裁定場所でもないわ」
「じゃあなんだって言うんだよ」
「ここは転生所よ」
「転生所?」
「そう。特定の人間をここに連れてきて、別世界に転生させる場所よ」
「ふーん」
「あら?興味なさそうね」
「いまいちピンとこねえしな」
「そうよね。でも、あなたは選ばれた。ほとんどの人間はこの権利は得られないわ」
「じゃあ俺は選ばれた人間ってことかい?」
「そうね」
「あっそう。そう言われると悪い気はしないね。聞くだけ聞いてみよう」
「通常転生は何百年に一回の頻度なの」
「へえ」
「実はね、今回の転生は特例よ」
「それはなんでまた?」
「これを見てちょうだい」
そう言って女神は杖を彼の目の前にかざす。
すると彼の目に様々な映像が飛び込んできた。
「なんだこれ?」
「これは今回あなたたちが行く世界よ」
「待て、俺は一人だけだ。周りには誰もいねえぞ」
「実は、あなたとほぼ同時刻に死んだ人間がもう三人来てるの。あなたにはその人たちと一緒に行動してもらうわ。ちなみにあなたは最後よ」
「なるほど、俺の前に三人きて、全員からバスローブって言われたから切れてたのか」
「それはそうと見て」
「なんか色々壊れてるな。幾つか綺麗な場所があるけど、何があったんだ?」
「これは全部、つい最近に転生させた人間がやったことよ」
「エグいことすんな。なんでこんなのが転生できたの?」
「転生所に来る人間はランダムで選ばれるわ」
「つまり適当に選んで転生させたらこうなったってわけか?これやったクズと同じぐらいのやつが俺と組む奴らの中にもいるのかね?」
「それは心配ないわ。今回はちゃんと神が全員生前の行為を見て選んだ人間よ」
「じゃあ俺はいい行いした方に入ったんだ」
「そうね」
「神様に認められりゃやってた甲斐があるってもんだね」
「それでね、特例なのはね、あなたたちに彼らを封印してきて欲しいからなの」
「つまり、俺たちはあんたらの転生のミスの尻拭いをするために呼び出されたってことか?」
「…そうね」
「前の三人の返事は?」
「全員やると言っていたわ」
「仲良くなれそうだ」
「で、どうなの?受けてくれるかしら」
「ああ」
「じゃあ今すぐ準備をするわ。彼らを呼んできて!」
彼女がそう叫ぶと、どこからか声がし、その数秒後に彼の仲間になるであろう三人がきた。
「俺は羽島亮だ」
「私は、近衛由美よろしくね」
「あっしは多治見久留美よろしく〜」
「梶田一輝だ。よろしく」
「全員揃ったね。じゃあ今から一人ずつ力を与えていく」
「なんで?」
「転生者は、何かしらの力を我々神からもらっているからよ」
「神は結構バカなのか?」
「…転生係っていうのがあるの。転生係はね、一応転生候補の人間の生前の行為が書かれた本を読んで、転生させるさせないを決めることができるのだけど、前任者は全員を片っ端から転生させたから、この状況が生まれたの。彼はすぐばれて力を奪われて別世界に堕とされたわ」
「まあ、ずさんだったわけだな。では、我々はやる代わりに条件を出す。これを飲まなければ、俺はやらん。君たちはどうだ」
「俺も同じこと考えてた、多分」
「私も」
「あっしも」
「わかったわ」
「一つだけだ。今後、転生はやめろ」
「えっ!」
「当然だ。他の世界に干渉するなんてやっていいことではないだろ」
「………わかりました」
「俺からは以上だ。君たちは何かあるか?」
「「「ないよ」」」
「では、力というものをもらおう。それがないとあいつらを倒せないのだろう?」
「はい。では、多治見さんからどうぞ」
「じゃあね〜、傷とか病気を一瞬で治せる力と…なんでもいいんだっけ?」
「はい」
「じゃあ死者を蘇生できる力」
「………分かりました」
「じゃあ次俺か。じゃあ、魔法使えるようにして。それと死なない体にしてくれ。それでいいや」
「力じゃないじゃ〜ん」
「ダメかい?」
「大丈夫ですよ」
「じゃあ次私か。うーんとじゃあね〜言ったことを現実にできる力でそれだけでいいよ」
「俺か。想像したものになれる力。それだけでいい」
「わかりました」
そう言って女神は杖を上に掲げた。
すると杖から光が幾つか出現し、彼らの体に入っていった。
「これで力の授与は終わりました。では、お願いします」
大きなドアが現れた。
彼はこれから始まるであろう尻拭いに様々な不安があったが、力が使えるかどうかより、この三人と仲良くなれるのかということが彼にとって最も不安なことだった。
「お前が悪いわけじゃないかもしれんが、お前たちのせいで奪われた命があることを覚えておけ」
「はい。私が責任を持ってこれを終わらせます」
「いい顔だ」
「じゃあ行ってくるよ〜。女神ちゃん、ありがとね〜」
「じゃあね、女神ちゃん」
「バスローブちゃん。次会うときは、ちゃんとバスローブ以外のやつ着てねー」
彼らは亮以外彼女に手を振って扉の中へと入った。
「はい!って、バスローブじゃないって何度言えばわかるんですか!」
「一輝君!今日こそ水だして!」
「俺も頼む」
「あっしにも」
「はいはい」
彼は呑気でいいのかという思いばかりが募っていった。
いかがでしたでしょうか?
感想などお待ちしております。ありがとうございました。