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3話目 不本意

「一緒に登山部をやってくれないかっっ!」



もう少しで定期テストと文化祭を迎えんとする門間工校(かどまこうこう)を見下ろす燃えるような秋空。

思いもしなかった一言が発せられた。





「登山部ねー…。」

「あれ?即答の隼人にしては考えちゃってるじゃん?」

一旦岳斗には「保留」と言う扱いにしてもらい、隼人と七海は家路である修練坂を登っていた。勿論自転車を降り、歩きで。


「なんか……登山部って、他の部活動と違う気がする。うん、なんか違う。っていうか想像が全くつかない。」

と、七海が難しい顔をして言う。

「登山部……登山ね……」

「あー。あんたの叔父さん登山家だもんね」

「そう。」


なんという巡り合わせか、俺の叔父さんは日本でも名のある登山家だ。世界の素晴らしい登山家に贈られる……何とか賞を貰っていたと記憶している。

数年ほど見ていない叔父を思い出そうとする。どんな顔だったか……

「こんな顔じゃないかな?」

そう。この30代後半には見えない若く何故か日焼けのしていない白い顔に無精髭。飄々(ひょうひょう)とした感じ………


「ベタか!登場ベタすぎるだろ!」


驚く暇もなくツッコんでしまった。なんでこんな所にいやがるんだよ。

「いやー。サガルマータ(エベレスト)無酸素登山がようやく終わってね。家族への生存報告で、兄さんの家による途中で君たちを見つけたってわけ。」

にかっ。と、白く、揃った歯を見せて笑う。妙に明るい。サングラスで目は見えないが。

「お久しぶりです、おじさん。」

七海がうやうやしく挨拶する。

「お、七海ちゃん久しぶりー。元気してた?陸上頑張ってる?」

「はい!この間の全県大会では2位を取りました!」

ニコニコとスポーツマンな会話を繰り広げられても俺には全く縁のない話だ。と、隼人は修練坂のキツさを改めて感じながら三つの影は進んで行く。



◎ ◉ ◎ ◉


七海とは別れ、修練坂の先にある我が家(マイホーム)浅香家リビングにて。


「どうだー。高校生活は。部活動は!」

ぐさっ。

「……部活動、入ってない。」

叔父は飲んでいたコーヒーをテーブルに置き、


「山岳部に入ろう」


「言うと思ったよ!」

どこかのアニメの総司令官のように手を組み、サングラス越しでもわかる真剣な視線を俺に送る。

「俺の母校である門間工業高校山岳部に入ろう」


「えぇ……」



「一度山に登ろう。登ろうぜ。登るよ」

明日休みだし。と言いながら俺を引きずる。


「……えぇ!?今から!?」


「あら?どうしたの修斗(しゅうと)さん?……え?隼人と山?帰りは明後日の日曜日?良いわよ、行ってらっしゃい」母上ぇぇぇえ!?


「まぁ、定期テストの気分転換としていってくるがいい」父上ぇぇぇえ!!??


「いいなぁ兄ちゃん。おれも|バスケ(部活)無かったら行きたかったわー」うるせぇ



「よし!決定だ!山だ!日本の秋山はいいぞぉ!」

「アンタが登りたいだけだろ!!」


かくして、不本意ながら山へ登る事になった。



〜柏岳編〜


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