1話目 修練坂
初投稿となります。登山競技に興味を持ってくださると嬉しいです
俺は何時もの乗り慣れた自転車に乗って何時もの夕暮れの坂道を登っている。
すれ違うのは何時もの近所のおっさんと犬と自販機。
何時もと違うのは飲み慣れないピンク色した炭酸飲料を自転車のカゴの中に2つぶち込んでることぐらいか。
英語の書いた炭酸飲料の缶ががらがらと耳について坂道への登る力を無くさせる。
家へはもう少しで到着する。しかしやはり炭酸飲料の缶がうるさくて、今日は自転車を降りてみよう。坂道を歩いてみようなんて気分になった。
「珍しいもんだな。」独り言ちた。
◎ ◉ ◎ ◉
「ちょっと待って。なにその謎な語り口。」
「ニヒルだろう?かっこいいだろう?」
俺は汗で引っ付いたワイシャツの気持ち悪さを感じながら、旧い付き合いである七海に向かってニヤリと言う。
「アンタが体力無いから歩いてるだけでしょーが!」
ひどい。事実だけど。
「だってこの坂くそなげーんだもんよー…」
ざっと300mほどのこの坂は幾多の高校生(主に俺)の心臓を破っているため修練坂と呼ばれている。というか勝手に呼んでいる。
「隼人はさー。体力なさすぎなのよ、ホントにさー…部活をやれよ部活を!」
旧い付き合いだからなのか。俺にだけはずけずけと、キツくモノを言う。
「……だってよー。走るのってかったるいじゃん?七海は小学校から陸上部だから分からんと思うけどよ。」
「分かりたくも無いわー体力が無いって。」
女子中学陸上競技全国大会常連という俺とは違う輝かしい成績を持ってらっしゃる七海さんは俺という底辺の気持ちが分からないらしい。
「…全く。小学校のバスケ部だったアンタといまじゃ、雲泥の差ね!」
いや、月とスッポン!アリと太陽!原子と宇宙!七海は自分の家の玄関へ向かっている間俺を罵倒し続ける。
「何故そんなにボロクソに言われにゃならんのじゃ…」
◎ ◉ ◎ ◉
修練坂を登り終えたその先にあるのが愛すべき我が家だ。
家族5人暮らし。なんの変哲も無い…と言うのには語弊があるが。特に姉。
「あ?んだこら。何が浅香家の変哲だこら。異端児だぁ!?」言ってねえよ。
「姉ちゃん玄関先で何やってんの?」
言っちゃ悪いが……今姉は趣味がよろしく無いぴったぴたの服を着ている。似合わん。
「あ?これからカレシとでえとだよでえと」
「姉ちゃん彼氏いたのか。」
「昨日できた」
「あっそ。んじゃ。」
姉は22才、社会人にして初彼氏で舞い上がってるんだろう。
「はっ、初じゃねえよ!学生時代もいたよ!」
「申し訳ないが学生時代の邪気眼持ち不良風味にいたとは思えません。」
「うっ、うるせええええ」
はいはい。俺は自転車を車庫に入れ、憤慨する姉といつの間にか家に着いていたらしい姉の彼氏(以外と小さい)を横目に家の扉を開け、リビングのソファへと向かう。
「騒がしいわねえお姉ちゃんったら。初彼氏だからかしら?」初じゃねえよ!と玄関の外から聞こえてきた。地獄耳かよ。
「母さん。たっだいま。」
「隼人。おっかえり。」
◎ ◉ ◎ ◉
「高校生活は慣れたの?」
母さんが家族(姉除く)全員揃った夕食でそんな事を聞いてきた。
「何言ってんの母さん。もう半年になるんだぜ?慣れたに決まってるよ。」
「七海姉もいるしな!」
うりうりと弟の智則がはやし立てる。うるせえよ全く。
「そんな事を言うんじゃ無い智則。」
父さん今回ばかりはナイス。
「しかしだな。やはり部活も入らんで半年もフラフラしとるお前を見ると、なんだか心配でな…」
父さんナイス取り下げるわ。
「でもそうだぜ?兄ちゃんやっぱり中学の頃からバスケやっときゃよかったのによ…」
智則が心配そうに俺のに対して知った風な口のきき方をする。
「……うるせえよ。」
俺にだって理由はあんだよ。
「兄ちゃ「ごちそうさま。」………」
「俺もう寝るわ。」
居ても立っても居られなくなって、二階の自室へと上がる階段へ足を向けた。しかしその時。
「待ちなさい隼人!」
いつもおっとりとした風な母が珍しく声を荒げた。
「……なんだよ…」
「お風呂沸いてるから入りなさい!」
「………うっす」
母は強し。
「いや兄ちゃんなんか違う」
◎ ◉ ◎ ◉
部活………かぁ…………