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緋色の眼を持つ少年  作者: カモメ
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緋色の目を持つ少年第二話

話は飛ぶが…

僕はかなり家庭環境が複雑だ…


僕は博多の市内で産まれた。

小笹と言う一軒家がたむろする住宅街で産まれた。


母は、僕が産まれると

『呪われた子が産まれたと育児放棄した。

何でも僕の左目が赤い事がその理由だとかで…

僕は、母方の祖母の家で育てられる事になった。母方の祖母の住まう町は

昭和の時代は産炭で、物凄く栄えたそうだ…

しかし…エネルギー政策の転換により、石油に取って変わられ全ての炭鉱が閉山してからはバブルの波にも乗れず…

目を覆わんばかりの衰退振りに…

今では過疎の名が与えられても何の違和感がない…


そんな町に成り下がった。

祖母は四人の子を産んだ。長男、次男、長女と立て続けに産んだ後

旦那…僕のお祖父ちゃんなのだが炭鉱の事故で亡くしたらしい。幼き三人の子供を抱え、暮らして行くのは、並大抵の事では無かったのだろう。

生活に疲れ…

子育てに疲れた祖母の前に大地主…とは言っても

只の百姓の親父と恋に墜ちた。


恋に墜ちたと言えば聞こえは良いが…

相手には妻子が居たらしく円満には事が運ばない位の事は僕でもわかる。


しかし…祖母は身籠り…

誰にも知られずに男の子を産んだ。


三人目の長女が産まれてから十一年後のことだったらしい。


僕の母…長女の瑞枝や、長男の芳典、次男の光弥等は半分血の繋がった赤ちゃんを忌み嫌った。忌み嫌う理由は色々あったらしい。

物心つくかつかないうちから、仏間で虚空を見上げては…

ニヤニヤと笑ったり…

さも、ソコに人でも居るように話し掛けるのだ…


これは…事情が解らない人たちには…

不気味に映るだろう。

そうして…

長男の芳則や次男の光弥…長女の瑞枝…

僕の母迄が…

彼を虐待するようになった。


彼の唯一の拠り所であった母親…即ち僕の祖母は、彼を男を繋ぎ止める手段として産んだのだ…

戸籍上は何処の馬の骨とも知れない子を身籠る等…

それ事態昭和の時代では…況してや閉鎖的な田舎では決して許されない事だった。


そうして彼は小学校に上がる直前に施設へと移されたらしい。


そんな身勝手な祖母の家に引き取られた僕も似たような扱いを受けた。


祖母の家には長男の芳典とその子供…僕には従兄弟になる保義と敬子が居た。

この二つ違いの兄弟は二人だけの世界を築き上げていた。

何故なら長男の芳典が酒を呑む度に子供に暴力を振るうからだ…


やはり…祖母は長男の芳典に対しては…

『止めなさい』と小声で言うだけで何もしないのと同じことだった。


保義も敬子も…中学を出るとこの家を飛び出し今は何処で暮らしているかも解らない。

多分…今でも二人だけでは連絡を取り合っているのだろう。


僕が小学生になるとき…

あれは…十月の朝だった。

何時もの様に散々酒を呑み暴れまくり…

終いには大いびきをかいて眠りこくっていた芳典の首に何かが食らい付いた。


芳典はもがき苦しみ…

助けを求めた。

祖母が震える手で固定電話のボタンを押して救急車を呼んだ。


救急車が到着するまでも芳典はもがき続けた。





芳典は救急車に乗せられる頃には…



もう…動かなくなっていた。


動かなくなった芳典の喉元には…


首だけの犬が食らい付いていた。首だけの犬は…

芳典の死を確認するように芳典の回りを嗅ぎ回り

芳典の死を確認すると…

何処かへ消えて行ってしまった。


祖母には何も見えなかったらしく。

ただ…こと切れた芳典にしがみつき…

葬儀が終わった後も、呆けた様になっていた。


後で知ることになるのだが…

子に先立たれる事は…

逆縁を切ると言い儒教では大罪に当たると言う。


祖母はそのまま、脱け殻の様に全ての事に無気力になり…

食事も喉を通らない有り様だった。


最愛の長男を亡くした悲しみからか?

祖母は僕の世話など全くしなくなった。


それどころか…

僕の左目が赤いのは…

呪われし子供だと忌み嫌った。そして…

二年後…祖母は長男を亡くした悲しみから立ち直る事なく。


ある朝急に喉をかきむしる様に苦しみだし…

救急車を呼んだが、芳典と同じで救急車が到着する頃には動かなくなった。


やはり…



祖母の喉元には、首だけの犬が食らいついていた。


祖母の葬儀の中で…

母の瑞枝は叔父の光弥と僕の身の振り方を相談していた。


どうあっても、赤い目を持つ呪われた子は引き取れないと…


末の弟に連絡をした。


どういうわけか…

母の末の弟は…

僕を受け入れる事に同意した。


こうして僕は永井の家に引き取られ…

叔父の養子となった。

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