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一発ネタSFシリーズ

世界図書館

作者: ミミズク

一発ネタです。

 小さい頃から夢見た所くるというのは胸が弾む以上に緊張する。


「ようこそいらっしゃいました。アンドロイドのミキです。よろしくお願いします」


「よ、よろしくお願いします」

 アンドロイド相手に声が震えてしまった。だってしょうがないじゃないか生身の人間以上に可愛いんだから。


「ミキさんが案内人なんでしょうか?」


「はい。本日はサトル様の案内を承っております」

 やった。好みのタイプだ。機械とわかっていても美人に案内してもらえるのは嬉しい。


「で、ほ、ほんとうなんでしょうか。例のものが完成したというのは」


「はい。まだまだ100%の安定を実現できたわけではありませんが、実用には何ら問題がありません」


「じゃあ、僕らはお払い箱ですね」


「いいえ。できるというだけで、先生の作品を検索するわけではありませんので」


「先生なんてよしてください。サトルで結構です」


「なら私もミキとお呼びください」


「すごい!」

 このやりとりだけで、僕の知らない技術がどれだけ使われているのかわかった。


「わかった。ミキと呼ばせてもらいます。ではさっそく、入らせてもらっていいですか?」


「ハイではついてきてください」


「サトル様は世界図書館の歴史についはご存じですか?」


「ある程度は」


「それでは詳しく解説しましょうか?」


「お願いミキ」



「発想自体は紀元前からありましたが、真面目に議論されるようになったのはコンピュータの誕生によるところが大きいでしょう。大枠の理論としては単純な順列並び替えに過ぎません。例えばABCというアルファベットを並び替えCABキャブつまりタクシーという意味のある単語をつくります。これを完全にランダムな文字の並びで長大なスケールで行うというものです。昔は大真面目に1つずつ製本して補完しようという考えもあったのですが、宇宙が素粒子の数だけあっても不可能な体積を要求されますので現在は全く考えられておりません」


「話を聞く限り無茶だとしか思えないな」


「ええ。これを可能にしたのが超高速演算装置と予測変換技術の2本の柱です。これにより意味のある言葉の繋がりを最大限選び出すことが可能になったのです」


「ふぇええ、すごいなあ」


「こちらをご覧ください。この棚には代表的な日本人作家の文学系の図書が並べられていますが、実際に閲覧できるのはここにあるもののおよそ1万倍はあります。また、既に亡くなられた作家の新作も文章と物語構造の特徴から再現可能です」


「本当に僕いらないじゃん!」


「可能というだけで、実際にサトル様の本を予測検索することはありません」


「今はでしょ?僕が死んだらできるわけ?」


「理論上可能とだけ申しておきます」


「しかしこの技術他にもいくらでも転用できそうだね」


「ご慧眼です」


「ということは」


「今一番成功している分野が音楽です。この技術を転用した自動生成プログラムは既にどんな音楽家の耳をも唸らせています。はっきりと申し上げれば本業よりも成功しております」


「たしかに音楽の方がパターンが大事なのかもね」


「・・実は今一番力を入れている分野がありまして」


「本じゃなくて?」


「本といえば本なのですが、サトル様の創作される分野とはいささか違ったものでございます」


「漫画とか?」


「それはまだ不可能ですね。・・こちらにどうぞ」


 奥の部屋に案内された。しかし広いな。蔵書のほとんどはハードディスク内、あるいはその都度予測検索により創造されることを考えると、本当にここは世界図書館だ。人類はアレクサンドリア図書館の再現だって可能になったというわけだ。


「この棚は・・」


「そうです。歴史書です」

1日1つは粗製乱造!

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