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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編シリーズ

豚。

作者: 一狼

凌辱・残酷描写があります。苦手な方はご注意を

この作品は直接的な性描写はありませんが、ノクターンレベルではないかと思われます。

もしかしたら運営から注意を受けることになるかもしれません。

 豚鬼(オーク)


 ファンタジー物では女性を犯す性欲の権化として有名な豚の化け物だ。

 どうも俺はその豚鬼(オーク)に転生したらしい。


 え? 豚鬼(オーク)は想像上の生き物だって?

 んな事言ったって目の前に居るんだもの、納得するしかないじゃないか。


 洞窟と思われる岩肌に繋がれた数十人の裸の女性を豚鬼(オーク)がひたすら犯してる光景が目に飛び込んでくる。

 女性は抵抗して叫んでいる者、生きることをあきらめて目が死んでいる者、壊れてしまってブツブツ呟いている者、中には妊娠していると思われる女性もいるがそれすらも豚鬼(オーク)は嬉々として犯している。


 そんでもって俺の目の前には大股を開いた裸の女性が居るのだが、体に残る凌辱の痕跡を見るといやらしいとか言った感情も湧いてこない。

 多分この女性が俺を生んだのだろう。


 傍には俺の他にも子豚が2・3匹いた。

 俺と同様に生まれたてみたいだ。


 見た感じは小さなコロコロとした可愛い子豚だが、これが大きくなると目の前で女性を犯している醜悪な豚鬼(オーク)になるんだよなぁ。

 なんて残酷な世の中なのだろう。


 ぷにぷにした両手で顔を触ると、明らかに人間と違う造りをしていた。

 どうやら間違いなく俺は豚鬼(オーク)として生まれ変わったみたいだ。






◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 豚鬼(オーク)に転生してから1週間が経った。


 たった1週間で俺の体は大人豚鬼(オーク)まで大きくなった。

 これがファンタジー仕様なのだろうか。

 地球ではありえない成長速度だ。


 俺が武器庫で狩りの準備をしていると、先輩豚鬼(オーク)が1人の女性を引きずりながら俺の前に放り投げる。


「おい、こいつを『処理』しておけ」


 女性は既に絶命しており、虚ろな目で俺を見ている。

 先輩豚鬼(オーク)は用が済んだとばかりに再び女性を捉えている凌辱部屋へと足を運ぶ。

 流石性欲の権化。どこまでも欲望に忠実だ。


 俺は丁寧に死んでしまった女性を抱えて調理室?へと運ぶ。

 死んでしまった後にも食肉用として『処理』するのだ。


 性行為でもてあそんだ後も食用として最後まで活用する・・・無駄が無くていいね!


 ・・・言ってて気分が悪くなってきた。

 だが俺の精神は今はこれくらいじゃ揺るがない。


 こうして『処理』を任されるのは1度や2度じゃない。

 この1週間何度も『処理』をしている。


 最初のうちは拒否していたが、先輩豚鬼(オーク)に暴力と言う名の強要をされゲロを吐きながら『処理』をした。

 今思えば意地でも逆らってこのまま死んでしまった方が楽だったのかもしれない。


 そうして何度も『処理』をしているうちに慣れてしまったのだ。

 それとも精神が肉体の豚鬼(オーク)に引っ張られているのかもしれない。

 そんなことを考えながら俺は平然と女性の『処理』を進める。


 まずは凌辱された体を洗い血抜きをし、それから皮を剥ぎ内臓を取出し肉を切り分ける。

 後は氷魔法で冷やされた部屋で保存する。


 作業が終わった後は、再び狩りをするための準備をする。

 俺は生前人間だった最後の矜持(プライド)を守るため人を食う事だけは避けていた。

 その為、食糧確保に俺は1人で狩りをしている。


 その所為か他の同期の豚鬼(オーク)よりも体は丈夫になり、他の先輩豚鬼(オーク)よりも強くなっていた。

 もっとも他の先輩豚鬼(オーク)は俺が強いことを知らない。

 豚の化け物の所為かそこまで頭が回っていないのだ。

 だからこそ平然と俺に『処理』を頼む。

 まぁ、俺が人食をせず狩りで野生動物ばかり食っているから見下しているのもあるが。

 俺はいざという時の為に今は力を隠している。

 いざという時と言うのがどれになるのかはまだ分からないが。






◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 あれから1か月が経った。

 俺の体は先輩豚鬼(オーク)と変わらないくらい立派になり、狩り部隊の1つへと組みこまれていた。

 狩り部隊と言うのはその名前の通り、主に食料や女性(・・)の狩りをする部隊だ。

 人間の村・町を襲って食料又は女性を攫う。

 当然男はその場で殺し、余裕があれば食肉用として処理をする。

 女性は子供だろうと老人だろうと関係なく攫ってくる。(もっともこの寿命の短い異世界では老婆は殆んどいないが)


 俺は他の豚鬼(オーク)同様に人間を殺しまくっている。

 人間を殺しているくせに人食だけは避けているとかどこか矛盾しているが、このちっぽけな矜持(プライド)が俺を俺として存在させている。

 このちっぽけな矜持(プライド)が無ければ今頃俺はとっくに心の底まで豚鬼(オーク)に成り果てているだろう。


 だが最近そんなちっぽけな矜持(プライド)を保つ必要があるのか疑問に思ってきている。


 攫ってきた女性を何時もの凌辱部屋へと放り込んでおく。

 1か月も経てば豚鬼(オーク)の体として立派に成長しているので、当然性欲も湧き出てくる。

 最初の頃は何とか我慢をして1人で処理をしていたのだが、最早我慢の限界だった。


 豚鬼(オーク)の本能に従って女を犯すと世界が変わって見えた。

 人間だったころとは比べ物にはならない快楽が俺を包み込む。


 以前の俺はどれ程損をしていたのやら・・・

 言える者なら以前の俺へ言いたい。犯さない豚はただの豚だと。


 そこからは最早猿の如く女を犯しまくっていた。

 豚なのに猿とはこれ如何に。


 そこからは積極的に狩り部隊へと参加していた。

 大勢の豚鬼(オーク)で女を犯すため消耗が激しいのだ。

 攫ってきた傍から女を犯す。犯して犯して犯しまくる。


 そうして狩り部隊が女を攫ってくる中にはエルフなんかもいたりした。

 だがエルフはこの凌辱部屋へは回されない。


 まずはこの群れを率いるオークキングへと献上し、残ったエルフは狩ってきた部隊が保有するのだ。

 今回攫ってきたのは俺の居る狩り部隊じゃないので残念ながらエルフは犯すことが出来ない。


「と言うかオークキングなんているんだな」


「馬鹿野郎。俺達ごときがボスにお目に掛かれると思うなよ」


 俺の呟きを部隊仲間の豚鬼(オーク)が窘める。

 話によればオークキングの他にも全狩り部隊を統括するオークジェネラルもいるらしい。

 見たことないけどね。


 今の話から推測するにこのオークの群れはかなりの規模だと言う事だ。

 いつか勇者とかの討伐隊が来るんじゃないのか?


 因みにオークキングに献上したのはエルフの王女様だそうだ。

 残りの2人も王女の侍女でかなり美人らしい。

 羨ましい限りだ。






◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 そうして半年が経つ頃には俺は一角の戦士となって他の豚鬼(オーク)の注目も集めていた。

 魔法部隊にオークメイジに魔法を教えてもらってからは殆んど無双と言っていい活躍をしている。

 オークジェネラルにもそれなりに目を掛けてもらえるようになった。


 オークジェネラル――通称将軍様の性行為は過激だ。

 嫌がる女を無理やり犯すのは勿論、殴る蹴るは当たり前。酷いのになると手足を捥いで達磨状態で犯すのだ。


 そうして今目の前にいる女もその内の一人だ。


「ち、無反応になったな。

 ジン、その女を『処理』に回しておけ」


 俺の目の前には目が虚ろになった両足の無い女が横たわっている。

 まだ辛うじて生きてはいるが、将軍様の言う通り全くの無反応だ。

 そりゃああれだけ過激な行為をしていれば心が壊れるだろうよ。


 そこで俺はふと気まぐれを起こすことにした。

 こうして性欲を発散させるため凌辱部屋に毎度足を運ぶが、凌辱まみれになった女を抱くのもいい加減嫌になってきたのだ。

 最初のうちは猿の如く性欲を発散させてきたが、元人間だったせいかこうも汚辱されたままの女を犯すのは段々と気が引けてきたのだ。

 だったら俺専用の雌奴隷を作ってしまった方がいいのではと思ったのだ。


「将軍様、もしよかったらこの女俺にくれませんか?」


「ん、お前こんなボロボロになったのが欲しいのか? 変わっているな」


「変わっているのは生まれた時からですよ」


 俺は未だに人食をしていないので他の豚鬼(オーク)からも未だに変わり者扱いされている。


「ふん、そんなんで良ければ好きにしろ」


 俺は将軍様の許可を貰い目が虚ろになっている女を運び出す。


 豚鬼(オーク)の群れは巨大な洞窟にあるが、俺だけは洞窟の外に家を建ててそこに住んでいる。

 最初のうちは気にしていなかったが、前世の人間の影響か段々と体に付いた汚れが気になり始めた。

 他の豚鬼(オーク)はそんなことを気にしないので平然としているが、俺はとても我慢できる状態じゃなくなったので自分でログハウスを建ててそこに風呂を設置して汚れを落としていた。

 まぁ、これが変わり者扱いされる要因の1つでもあるのだが。


 取り敢えず体に付いた体液等を落とすために女を風呂場へと連れて行く。

 風呂の準備は魔法を使えば簡単にできる。

 魔法で水を出して火魔法を調節して温めるだけだ。


 汚れを落とした女をベットへ連れて行く。

 取り敢えず清潔にしてみたものの、今のこの女の状態は生きることを諦めている。

 精神カウンセラーなんて出来ないのでなるようになるだろうと、取り敢えず生きるための気力の1つとして飯を食わせてやった。


 今までの扱いからじゃいきなり飯は食えないのでおかゆっぽいものを作って口に運んでやる。

 ・・・なんかやってることが障碍者介護になってるな。


 生きる気力を失ってるから飯すら食わないかと思ったが、そんなことは無く辛うじてだがおかゆを飲み込んでいく。

 そうして1週間も経つ頃には青白かった肌に血色が戻ってきてポツポツながら会話をするまでに回復した。


「・・・なんで、こんなことするの?」


「あん? そりゃあ俺専用の雌奴隷にする為だよ」


「・・・そう、やっぱりあんたも豚鬼(オーク)なんだね」


「まぁな。豚鬼(オーク)の本能は性欲そのものだからな。

 とは言っても俺は豚鬼(オーク)の中では相当な変わり者だ。普通ならこんな面倒な事はしないさ」


「・・・・・・」


 女はそれっきり黙ってしまった。


 確かに面倒な事をしているなと自分でも思う。

 両足が無いから移動もままならず、飯を作るのも風呂に入れるのも俺が運ぶことになるのだ。

 段々それが面倒になってきた俺は前世の記憶を使い簡単な車椅子を作ってやる。

 最初はおっかなびっくりだった女が車椅子に乗ることで行動範囲が増えたことに悦んでいた。


 そんなこんなで世話を焼いていれば多少なりとも打ち解けて?きて名前を教えてもらえるまでに至った。


「コトって言うのか」


「うん、古代アルト文明の言葉で幸せっていうの」


「・・・名前負けしているな。豚鬼(オーク)に捕まって犯されとても幸せとは言えないな」


「・・・そんなことは無いかも。少なくとも1か月前までの事を思えば今は幸せかな」


「お前バカだろう。豚鬼(オーク)に犯されてどこが幸せだってんだよ」


 そう言いながら俺はコトを犯す。

 当初の目的通りコトを雌奴隷として己の欲望をぶちまけている。

 それでもコトは今の状態が幸せだと言うのだ。

 凌辱部屋に居た頃犯され過ぎて狂ってしまったのか?






◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 コトを俺専用の雌奴隷にしてから半年が経った。

 俺が豚鬼(オーク)に転生してから1年が経過したことになる。


 その日俺は自分たちの食料を確保する為、1人で森の中で狩りをしていた。

 狩り部隊での行動ではなく1人で行動をしていた為運が良かったのだろう。

 俺はその場に身を潜めて目の前の集団を観察する。


 今俺の目の前にはエルフが10人ほど武装して森を進んでいた。

 男4女6の割合で、どうやらこの集団のリーダー副リーダーは女らしい。

 エルフらしからぬ剣と盾と鎧を装備した部隊だ。


 前世の人間の知識だとエルフは鉄を嫌い弓と精霊魔法を使う種族だったような気がするが、この世界のエルフは違うのだろうか。

 部隊をよく観察するとそんなに練度が高くないように見えた。

 多分俺1人でもこの部隊を蹴散らすのに何ら問題は無いな。


 そう判断すると俺はエルフの部隊に身を躍らせる。

 ものの数分もしないうちにエルフたちを打ち倒す。

 当然男は殺し女は豚鬼(オーク)の群れへと運ぶことにする。


 確かエルフはオークキングに献上しなければならないんだったけ。

 そうだな。1人は確実に俺の物にしたいからリーダーと適当な1人をオークキングへ献上し、俺の好みの副リーダーを俺の物にするとしよう。

 2人もエルフを差し出せば1人くらいは俺専用にする許可を貰えるはず。

 残った3人も凌辱部屋へ放り込んでおけば下からの文句も出てこないだろう。


 取り敢えず献上するリーダーと俺専用の副リーダーを引っ提げて洞窟へと帰る。

 残ったエルフたちは後で狩り部隊に連れて来てもらおう。


「ご主人様お帰りなさい」


 オークキングへリーダーを献上し残りのエルフを連れてくる指示を出してから俺は副リーダーを家へ連れて帰る。

 家に帰るとコトが満面の笑みで俺を迎えてくれる。

 うむ、確実に調教の成果が出ているな。


「あの、ご主人様そのエルフは・・・?」


「ああ、新たな俺専用の雌奴隷だ。言って見ればお前の後輩だな」


「はい、分かりました。取り敢えず身を清めるためにお風呂へ連れて行きますね」


 身ぐるみを剥いで素っ裸にして魔法封じの紋を肌に刻み込んだ気絶したままのエルフをコトへ任せて俺は新たな雌奴隷の調教準備をする。


 当然エルフは抵抗したが最初は力ずくで犯す。

 時折凌辱部屋へ入れるぞと脅迫しながら抵抗の意識を削っていく。


 1週間もするころには目が虚ろになって抵抗の意識すらなくなっていた。

 うーむ、ちょっとやり過ぎたか?

 と思っていたのだがそれは演技だった。


 事に及んでいる最中にベットの脇に隠していたナイフで胸を刺されたのだ。


「死ね! 汚らわしい豚鬼(オーク)め!!」


「ご主人様!」


 コトが慌てるが俺は平然と胸に刺さったナイフを引き抜く。


「何で・・・死なないんだ・・・確実に心臓を貫いたはずなのに」


 エルフは呆然とした表情で俺を見ていた。


「あっぶねー。本当に死んだかと思った。いざという時のための身代わり魔法(スケープゴート)がまさかベットの上で使う羽目になるとは」


 オークメイジから覚えた魔法には命を失う攻撃を受けた時に別の物を身代わりにする魔法があったのだ。

 俺はいざという時の為人型に模った木の人形に身代わり魔法(スケープゴート)を掛けておいたのが砕けてあるのを見て肝を冷やした。


「さて、手癖の悪い子犬ちゃんにはお仕置きが必要だな。悪さをするのはこの腕か?」


 そう言いながら俺はエルフの両腕を握り潰しながら引きちぎる。


「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」


 エルフは血を撒き散らしながらのたうち回るのを俺は冷静に見下ろしていた。

 このまま血を流して出血死してしまえば元も子もないから傷口だけを魔法で治す。


「これに懲りたらご主人様の命を狙う事なんてしない事だな。

 コト、こいつを風呂場へ連れて行って洗ってやれ。流石に血塗れの状態で抱く気にはなれん」


 俺は血塗れになった床を掃除する。

 ったく、余計な手間を掛けさせやがって。


 それからと言うもの、両腕を失ったエルフは反抗的な態度を見せるものの大人しく俺に犯されている。

 両腕を失った時にコトに甲斐甲斐しく世話をされたからなのか、俺よりもコトと仲が良くなっているのがちと悔しい。

 まぁご主人様と奴隷の関係だ。好感度を得ようとする方がおかしいのか。






◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 それから1か月が過ぎたくらいだろうか。

 事態が急変したのは。


 俺がいつも通りコトとリィン(調教中に無理やり聞き出した)に奉仕をさせていると、洞窟の方から怒号が聞こえてきた。


「なんだ・・・? 勇者でも攻めて来たか?」


 おもむろにリィンは高笑いを始めた。


「は・・・ははははっ! 来た、やっと来た! これでお前らは終わりだ!

 私の仲間が助けに来てくれたのだ!」


「何? リィンの仲間だと? いつの間に・・・」


「魔法を封じられようと連絡手段など幾らでもある! 奴隷にすることばかり目が行って私たちの尋問をしなかったのがお前の失敗だ!」


 そう言えばリィンのエルフ部隊は何で森に居たのか調べてなかったな。

 いや、今はそれどころではない。

 洞窟に行って救援に向かうか、逃げるか・・・

 将軍様や王様が負ける姿は想像できないが、襲ってきたエルフ部隊がどれほどのものなのか・・・


 だが結論が出ないうちに家の方にもエルフ部隊が突入してきた。


「アルハロイド! お前が来てくれたのか!」


 先頭にはやけに身なりがいいエルフが居て、リィンはそのエルフ――アルハロイドに向かって駆け寄る。

 だがアルハロイドはリィンを一瞥すると呪文を唱えてリィンごと俺達を吹き飛ばす。


烈風空波(ウインドブラスト)


 俺は強烈な風により壁へと叩き付けられ目を回す。


「アルハロイド・・・何で・・・」


 リィンは信じられない目でアルハロイドを見つめる。

 アルハロイドはそれに構わずに後ろに控えた部隊へと指示を出す。


「他に豚鬼(オーク)が居ないか捜索しろ」


 指示に従って部下たちは俺の家へずかずかとあがり荒らしていく。


「ふん、汚らわしい豚鬼(オーク)が。

 閃光弾(ルクス)


 アルハロイドから放たれた一条の光が俺の胸を貫く。

 だが身代わり魔法(スケープゴート)のお蔭で傷一つない。


「ほう、身代わり魔法(スケープゴート)とな。豚鬼(オーク)のくせに生意気な。

 ならば死ぬまで殺すまでだ」


 そう言いながら再び呪文を唱える。

 その前にコトが俺の前に両手を広げ立ち塞がる。


「ご主人様を殺させません」


「邪魔をするんだったら貴様ごと殺すぞ。

 閃光連装弾(ルクスファランクス)


 再びアルハロイドの手のひらから閃光が迸る。

 やばい、身代わり魔法(スケープゴート)はさっきので打ち止めだ。


「ご主人様!」


 コトが俺を庇うために覆いかぶさる。

 そのコトを俺ごと幾つもの閃光が貫く。

 俺は魔物だから辛うじて生きてはいるが、人間であるコトには致命傷だ。


「アルハロイド! 何故彼女ごと撃った! 彼女は人間だぞ!」


「何をふざけた事を・・・豚鬼(オーク)と交わったやつは人間じゃない。ただの雌豚だ。お前もこいつと同様に雌豚だ。エルフの恥さらしが」


「なっ・・・!?」


 アルハロイドの突き放した言葉にリィンは絶句している。

 だが俺はそんな事には構ってられなかった。


「コト! しっかりしろ!」


「ご主人様・・・ごめんなさい。ご主人様を命懸けで守るのも奴隷の役目なのに・・・」


「何をふざけた事を。お前たちを守るのがご主人様の役目だろう! お前たちはただ黙って股を開いていればいい雌奴隷だ。戦うのは俺の役目なんだよ!」


「だからこそですよ。ご主人様は私に優しくしてくれました。人間らしい生活をさせてもらえました。

 だからこそご主人様を守りたかった・・・」


「お前何を言っているんだ・・・俺はお前に酷い事をしてきているんだぞ。お前を無理やり犯して性欲の捌け口にしてきたんだぞ!」


「ふふふ・・・酷い事をしてたのは私を犯すときだけですよ。それ以外はご主人様は人間の様に優しくしてくれました・・・」


 俺が人間らしい・・・? 何を馬鹿な・・・俺は豚鬼(オーク)だぞ。


「ご主人様、私ご主人様の奴隷で幸せでした・・・死なないでください・・・」


 コトはそれっきり動かなくなってしまった。

 その時俺の中の何かが目覚めた。






◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 私の名はリィン。エルフ王国にある栄えある琥珀騎士団の副団長だ。


 私たち琥珀騎士団の精鋭10名は特命を受けて森の中を行軍している。

 1年ほど間に行方不明になった第2王女の捜索部隊の先行偵察としてだ。


 1年前第2王女は近衛騎士である紺碧騎士団の数人を連れて人間の王都へと向かったのだが、そのまま行方不明になってしまったのだ。

 世間では第1王女が裏で糸を引いて暗殺したのではないかと噂をされている。

 たが今頃になって第2王女の手掛かりが見つかった為、こうして捜索部隊を編成して森を探索することになった。


「本来なら紺碧騎士団の仕事なのになんで王都守護の俺達が捜索部隊に回されるんですかね」


「文句を言うな。上手くすれば第2王女派に恩を売ることが出来るし、第1王女派を引きずり落とす手がかりが見つかるかもしれん」


 私の言葉に若い騎士は「分かってますよ」と渋々ながら頷いた。

 エルフ王国は今3人の王女の間で王継承の跡目争いをしている。

 私たち琥珀騎士団は第3王女派に属していて、第2王女を心配して止まない第3王女の為に捜索部隊へと組み込まれたのだ。


 私たちは手掛かりを元に森の中を進むが、突如目の前に1匹の豚鬼(オーク)が現れた。

 そしてものの数分で私たち琥珀騎士団精鋭が打ち倒されてしまった。

 私は目の前の光景が信じられなかった。

 その豚鬼(オーク)は戦士でありながら魔法を使ったのだ。

 そんな豚鬼(オーク)は聞いたことない。


 接近戦をこなしながら至近距離で魔法を放ち我々をあっという間に戦闘不能にしていった。

 いや、戦闘不能なのは団長、私、部下4名の女性だけだ。

 男性の騎士4名はあっさり殺されていた。

 ああ、そう言えば豚鬼(オーク)は性欲の怪物だった。

 私はこの後の豚鬼(オーク)に慰み者にされることを考えて恐怖した。


 団長と部下4名は洞窟の中へ入れられ、私だけが外に建てられたログハウスへと連れ込まれた。

 後はそこからはひたすら犯される毎日だった。

 魔法封じの紋――魔法を封じ力を最低限へと落とす所謂奴隷紋を肌に刻まれ抵抗することすら出来ず、処女を奪われ、体の自由を奪われ、せめてもの抵抗は屈服するかと言う意思だけだった。


 この家には私の他にも人間の女性が居た。

 両足が失われているが明るく優しい女性だ。

 犯されて打ち震えている私を何度も慰めてくれた。


だが信じられないことに彼女は豚鬼(オーク)をご主人様と崇め、進んで体を差し出している。

 何故そんなに豚鬼(オーク)に仕えることが出来るのかと尋ねれば、彼女は「私を地獄から救ってくれた」と言うではないか。


「私小さい頃住んでいた村では食べる物もなく毎日が飢えていたの。病気になる人もたくさんいて大勢の人が亡くなっていたわ。

 そんな時、村に豚鬼(オーク)が現れ女の人たちは攫われてしまったわ」


「全然救われていないではないか」


「確かに豚鬼(オーク)に攫われて洞窟で犯され続け更なる地獄を見たわ。両足も捥がれて最早生きていく気力さえ無くなった。

 けどそんな時ご主人様が私を救ってくれた。

 温かい食事とベット。この車椅子だってそう。私が自由に動き回れるように私の為に創ってくれたの」


 これがあの豚鬼(オーク)の手作り!?

 単純な構造でありながら機能的な動きを見せる車椅子を犯すことしか能が無い豚鬼(オーク)が作っただと!?


「確かに私を抱くときは豚鬼(オーク)の本能で酷い有様になるけど、それ以外は人間と変わらない優しい人よ」


「・・・ふん、コト殿は騙されている。奴には何か企みがあってコト殿に優しくしているように見せかけているだけだ。目を覚ますんだ」


「ふふふ、そうかもね」


 彼女はそう微笑んでいた。






◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 1週間くらいが過ぎた頃だろうか。

 私は第2王女がこの豚鬼(オーク)の群れに連れ込まれたと言う情報を手に入れた。

 この群れのボス――オークキングへ第2王女は差し出されて慰み者にされているらしい。


 私はこの事を伝えるべく、精霊にお願いして手紙を届けるように頼んだ。

 魔法は封じられているが、精霊に『お願い』することは出来る。

 巣の場所、群れの規模、オークキングとオークジェネラル、そして第2王女が生きていることを書き記し騎士団に届くようにと精霊にお願いした。


 洞窟の中の団長たちも心配だが、それも救助が来るまでの辛抱だ。

 私もそれまでの間少しでも脱出のためのプランを練る。


 まずは今私を縛っているあの豚鬼(オーク)の抹殺だ。

 抵抗を諦めた振りをして油断を誘う。

 特に事に及んでいる時が一番油断している時だと聞いたことがある。


 私はベットにナイフを隠し、奴が私を犯している隙をついて心臓にナイフを突き刺すことに成功した。


 だが奴は何事もなかったかのようにナイフを引き抜いた

 信じられないことに奴は身代わり魔法(スケープゴート)を使っていたのだ。

 なんなんだ、この豚鬼(オーク)は。規格外にも程がある。


 そして私はお仕置きと称して両腕を奪われた。

 ついでと言わんばかりに洞窟の中の様子も見せられた。


 私はその光景に戦慄し、恐怖し、心が折れてしまった。


 そこには豚鬼(オーク)に犯され壊れてしまった団長たちが居た。

 団長は両手両足を失った状態で狂ったように笑いながら犯されていた。

 部下たちもだらしない顔をして自ら進んで豚鬼(オーク)の上で腰を振っている。


 ああ、私はまだマシな方だったのだ。

 ここへ連れてこられれば私も団長たちの様になっていたのだろう。

 コト殿が言っていたようにこの規格外の豚鬼(オーク)はまだ人らしい生活をさせてくれる。

 私はまだ人でいたいがため矜持(プライド)を捨てて奴に縋り付いた。


 それからと言うもの、私は考えることを止めひたすら奴に媚を売った。

 時折狂いそうになるも、コト殿と話すことによって何とか心を保っていた。


 全てを諦めかけていた時、事態は動いた。

 家の外で怒号が鳴り響く。

 聞けばエルフの救助部隊が豚鬼(オーク)の巣を襲っているのだ。


 私は歓喜した。精霊に託していた手紙が届いたのだ。


「は・・・ははははっ! 来た、やっと来た! これでお前らは終わりだ!

 私の仲間が助けに来てくれたのだ!」


 私は高らかに声を上げた。

 そしてこの家にも救助部隊が着てくれた。


「アルハロイド! お前が来てくれたのか!」


 彼は私と同じ第3王女派の金剛騎士団の団長であり私の婚約者だ。

 思いがけない再開に私は駆け寄ろうとしたが、そんな私に彼は魔法を放ってきた。


烈風空波(ウインドブラスト)


 私は強烈な風を受けて地面へと打ち倒される。


「アルハロイド・・・何で・・・」


 私は目の前で起こったことが信じられずアルハロイドを見るが、彼は何事もなかったかのように部下たちに指示を出していた。

 そしてそのまま豚鬼(オーク)に向かって光魔法を放った。

 身代わり魔法(スケープゴート)で死なないと分かると更なる追撃の魔法を放とうとする。

 そこへコト殿が豚鬼(オーク)の前へと護るように立ち塞がる。


「ご主人様を殺させません」


 以前の私なら何を馬鹿な事をと思っただろう。

 だが今ならわかる。彼女はあの豚鬼(オーク)を愛しているのだ。

 地獄から救ったことは然ることながら、豚鬼(オーク)の優しい心に魅かれたのだ。

 実際、私も団長たちの現状を知って恐怖に怯えながら豚鬼(オーク)に媚を売っていたのだが、そんな私にもこの豚鬼(オーク)は優しく接してくれた。

 もしかしたら私も奴に惚れているのかもしれない。


 そんなコト殿を目の前にして、アルハロイドは汚物を見るような目で容赦なく魔法を放った。

 光の連装弾は容赦なくコト殿と豚鬼(オーク)を貫いていく。

 魔物である豚鬼(オーク)はまだ助かる見込みはあるが、人間であるコト殿には致命傷だ。


「アルハロイド! 何故彼女ごと撃った! 彼女は人間だぞ!」


 私は思わずアルハロイドに食って掛かる。

 魔物を庇う真似は確かに褒められた行為ではないが、何も彼女ごと撃ち抜く必要は無いはずだ。


「何をふざけた事を・・・豚鬼(オーク)と交わったやつは人間じゃない。ただの雌豚だ。お前もこいつと同様に雌豚だ。エルフの恥さらしが」


「なっ・・・!?」


 エルフと言う種族はその血統を守るため多種族との交わりを忌諱している。

 多種族との交わりをした者を穢れ者と呼ばれ、他のエルフから見下されてしまうのだ。

 中でも魔物と交わってしまった者は穢れ落ちと呼ばれ、最早人としての扱いを受けない。


 確かに私も豚鬼(オーク)と交わってしまったが、婚約者であるアルハロイドだけは私をちゃんと見てくれると思っていた。

 だが彼も他のエルフと同じだった。


 私はその時漸く気が付いた。エルフがこれほどまでに傲慢だと言う事に。

 エルフは他者を思いやる気持ちはこれっぽっちも無い、自分の優位性だけを主張する閉ざされた種族なのだと。


「貴様は我々を救出部隊だと思っているようだが、残念だがそれは違う。

 我々は穢れ落ちした薄汚い第2王女や琥珀騎士団団長、貴様をエルフの恥さらしとして処刑しに来たのだ。

 そのついでに豚鬼(オーク)の掃除をしに来た。

 裏を返せば、邪魔な第2王女を抹殺する為、第2王女派と横の繋がりが強い第3王女派の琥珀騎士団を潰すための第1王女派の策略だったりするのだがな。

 そして俺は第1王女派に寝返ったんだよ。いつまでも沈む船に乗ってられないんでな」


 ああ、第2王女の手掛かりも、琥珀騎士団の先行偵察も初めから罠だったのか。

 そして私は初めから彼に捨てられることになっていたのか。

 そんなことも知らずに私はこの場所を記した手紙を届けてしまったのか。


「ご主人様、私ご主人様の奴隷で幸せでした・・・死なないでください・・・」


 そして向こうではコト殿が息の根を引き取った。

 私の仕出かしたことが結果的にコト殿の命を奪ってしまった。

 あんなにも幸せそうに奴の事を語ってたのにもうその笑顔を見ることは無い。


「ふん、下らん。所詮は雌豚だな」


 そう言ってアルハロイドは豚鬼(オーク)に止めを刺そうと呪文を唱える。

 自分の無力感に囚われていた私は黙ってそれを見ているしかでいなかった。


 だが次の瞬間信じられないことが起こった。


 バサッ!


 豚鬼(オーク)の背中から1対2翼の純白の翼が生えたのだ。


「な・・・んだと・・・豚鬼(オーク)の天使化・・・だとっ!?」


 アルハロイドも驚愕の表情で豚鬼(オーク)を見ていた。


 人間は神に愛された種族としてその神の力を身に宿すことが出来る。

 神に認められ神の力を身に宿すとその証として背中から天使の翼が生えてくるのだ。

 これが天使化と呼ばれる現象だ。

 天使化すると膨大な魔力を宿しその肉体は強靭となり朽ちないと言われている。


 天使化は人間にしか起こらず、他の種族では例が無い。無論魔物である豚鬼(オーク)になんて到底あり得ない事だ。

 だがそのあり得ないことが目の前で起きていた。


 バサッ!!


 1対2翼から2対4翼へ―――


 バサッ!!!


 2対4翼から3対6翼へ―――


「ばっ馬鹿なっっ!!! タダでさえ豚鬼(オーク)の天使化なんてあり得ないのにセラフィム級の天使化だとっ!!?」


 天使化はその翼が多ければ多いほど強大な力を誇る。

 3対6翼のセラフィム級なんて人間の歴史を見ても数えるほどしかいない。

 まさに伝説級の現象なのだ。


 バサッバサッバサッ!!!!!!


「・・・ルシファー級・・・」


 私は思わず呟く。

 3対6翼どころじゃなかった。

 6対12翼の天使の翼―――神にも匹敵するとされるルシファー級の天使化・・・

 規格外だと思っていたがここまで規格外だったとは。


 私は奴――いや、ジンが何故天使化したのかはこの光景を見て納得したていた。

 彼の手の中に納まっている彼女を見て哭いていたのだ。

 魔物である豚鬼(オーク)がだ。


「馬鹿な・・・認めない・・・認めないぞ! 豚鬼(オーク)ごときが神に認められただと! 高貴なるエルフを差し置いてそんなことは認めないっっっっ!!!」


 アルハロイドが喚くが、最早私はそんなことは気にもしていなかった。


 ジンはおもむろにコト殿を抱えたまま立ち上がり呪文を唱える。

 天使化された者だけに使える魔法――聖光魔法。


聖光天輪(セイクリッドヒール)


 聖光魔法唯一の治癒魔法にして究極の治癒魔法。

 どんな怪我や病気だろうとたちまち治してしまうと言われている。


 ジンの頭の上に天使の輪が現れその光を以ってたちまち彼の体に空いた傷が塞がっていく。

 抱かれていたコト殿の傷も消えていく。

 たがコト殿が目覚めることは無い。

 究極の治癒魔法とて死者を蘇らせることは出来ない。


 そしてその光は私をも包み込んで失われた両腕を再生させた。


「腕が・・・戻った・・・」


 私は感動のあまりその両腕で体を抱え込んで喜びに打ち震える。

 両腕が戻っただけではない。ジンが私の両腕を治してくれたことが嬉しかったのだ。


「くっ! 総員殲滅戦闘準備!」


 アルハロイドが苦し紛れに彼を倒そうと部下に指示を出す。

 ジンは決して慌てず聖光魔法の唯一の攻撃魔法にして最強の攻撃魔法を放った。


聖光羽弾(セイクリッドフェザー)


 ジンの背中から生えて12枚の翼から部屋を埋め尽くすほどの光の羽が弾丸となってアルハロイドたちの部隊へと突き刺さった。

 一瞬にしてエルフ部隊は全滅する。


「リィン、コトを頼む」


 ジンはそう言って私にコト殿を預けると家の外へと向かう。


「どこへ行くんだ?」


「外の煩い連中を黙らせてくる。このままじゃコトを静かに眠らせることも出来ないからな」


「・・・そう、だな。静かに眠らせてやらないと・・・」


 私は既に同じエルフである救出部隊?の事などは頭の片隅にもなかった。

 あるのはコト殿を弔ってやることと、洞窟内の壊れてしまった団長たちと団長と同じようになってしまっているかもしれない第2王女を安らかに眠らせてやることを考えていた。






◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 俺の名前はガンザック。エルフ王国の第2次魔物討伐部隊を率いる総隊長を務めている。


 かつてはエルフ王国の騎士団の中でも役立たずとして良いように小間使いされていたしがない最弱騎士だった。

 同年代の騎士は勿論の事、後輩騎士にも馬鹿にされ騎士団のお荷物と罵られていた。


 だがそんな俺にも転機が訪れた。

 人間の魔術師が人工的に天使化させる実験を行っていると聞いたのだ。

 人間を人工的に天使化させるだけでなく、人間以外の種族も実験の対象としていると。


 俺はこの底辺を抜け出すためならと藁にもすがる思いで人間の国へと足を運んだ。

 そして俺は見事そのチャンスを掴んだのだ。


 天使化の実験は結果的には失敗だった。

 数多くの実験体が死に絶え暴走し、実験そのものは闇に葬られた。

 だが俺だけは失敗したと思われ捨てられた後に天使化を起こすことに成功したのだ。


 俺は天使化の力を引っ提げエルフ王国に戻り、再び騎士団に所属し登りつめて行った。

 強靭な肉体と膨大な魔力によってかつて俺を見下していた同期や後輩たちを蹴散らし、上役のエルフたちを脅しついには王直属の紅玉騎士団の団長の地位を得るまで至った。

 おまけに第1王女の婚約者として王族に名を連ねる事が約束されたのだ。


 そして第1王女に王位を継承させるべく、王女と色々画策し第2王女を罠にはめ豚鬼(オーク)に放り込み、その関連で第3王女の勢力を削るために琥珀騎士団をその豚鬼(オーク)の巣に向かわせたのだ。


 事前情報ではその豚鬼(オーク)の巣には百数十もの豚鬼(オーク)がおり、オークジェネラルやオークキングまでいると言われている。

 幾ら精鋭とは言え、高々十数の騎士団が第2王女の救出に向かったところで返り討ちに会うのが目に見えている。


 我々の作戦は見事成功し、第2王女は豚鬼(オーク)に捕まり慰み者になり、第3王女派の琥珀騎士団も半壊し女騎士共は捕まってしまった。

 琥珀騎士団の副団長が豚鬼(オーク)の巣から第2王女の生存の報告と救出願いの手紙を届けてきたが、こちらは最初っから見捨てる予定でいるのだ。


 だがそこで第1王女が俺の地位を不動のものとするために大規模部隊を率いて穢れ落ちした第2王女もろとも豚鬼(オーク)の巣を掃討する作戦を立てた。

 普通であればオークキング率いる百数十もの豚鬼(オーク)の群れを全滅させるとなるとそれなりの損害も出るが、天使化した俺にかかればオークキング程度相手にすらならない。

 それ故に第1王女はこの作戦を立てたのだ。


 俺は総隊長として豚鬼(オーク)の巣に向かっている。

 巣に到着するなりそれぞれの部隊長に指示を出し、隊員たちはすぐさま豚鬼(オーク)を蹴散らしていく。


 琥珀騎士団の副団長の手紙に記された特殊な豚鬼(オーク)は巣の外に居ると言う事なので、実力的には紅玉騎士団の2番目にあたる金剛騎士団の団長を向かわせた。


 順調に豚鬼(オーク)を倒していくと、巣から巨大な戦斧を掲げたオークキングが出てきた。

 その隣には大剣を構えたオークジェネラルもいた。


「貴様ら、ここまで俺様の可愛い部下たちを殺しておいて五体満足で帰れると思うなよ!」


 オークキングが怒りに震えた声を上げ、戦斧を振り回しながら俺に向かって来る。

 隊員たちにはオークキングの餌食にならないようすぐさま下がるように指示を出す。


 そして俺は天使化された者にしか使えない聖光魔法の最強の攻撃魔法・聖光羽弾(セイクリッドフェザー)を放った。


 背中から生えた天使の翼が輝き、無数の光の羽が弾丸となってオークキングを含む豚鬼(オーク)たちに降り注ぐ。

 まばゆい光が辺り一面を覆い、光が収まるころには全ての豚鬼(オーク)が息絶えていた。


「ふふふっ、ふはははははははははははははははっっ!! どうだ! 見たか! オークキングも俺様に掛かれば敵ではない!

 俺が最強のエルフ! 神に選ばれた神子だ! 貴様ら俺を褒め称えよ! 俺が居る限りエルフ王国は永遠に不滅だ!!」


 俺の声と共に隊員たちは俺を褒め称える声を上げる。

 俺はその称賛の声に酔いしれて大いに満足していた。


 だがそんな永遠とも思われた栄光はあっさりと覆された。


「なんだ? 向こう側がやけに騒がしいな」


 見れば金剛騎士団が向かった方向から称賛の声とは別の大声が聞こえてくる。

 よく聞けばそれは悲鳴だった。


「総隊長! 総隊長――――!! 大変です! お・豚鬼(オーク)が向かってきます!」


「落ち着け! 確か金剛騎士団が向かった方の豚鬼(オーク)は規格外だと言う話だが、所詮はただの豚鬼(オーク)1匹だろう」


「は・はい、で・ですがその1匹があり得ないことに・・・あああああ、あんなのあり得ない! あり得ない! あり得ないっっっっっ!!!!!!」


 総隊長である俺が目の前にも要るにも拘らずその隊員は取り乱していた。

 何を怯える必要があるんだ。天使化した俺様が居ると言うのに。


 次第に隊員たちの大声が近づいてくる。

 どうやらただの豚鬼(オーク)1匹を止められずここまで接近させたらしい。

 これは後できつい反省会が必要だな。


 そしてその豚鬼(オーク)が俺の目の前に現れた。


 俺はその豚鬼(オーク)を見て絶句した。


 な・・・・・・なんだ、その背中にある物は。


 オ・豚鬼(オーク)ごときが天使化・・・・・・だと・・・!?


 まさかあの時の実験体の中の生き残りか!?

 俺の様に後で天使化の現象が起きたのか!?


 しかも・・・・・・なんだ、その翼の数は・・・・・・!!?


 12枚の光り輝く翼・・・ルシファー級だと・・・・・・!?


 そんな神にも匹敵する天使化が豚鬼(オーク)に何故っっ!!!?


「く、くおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!!

 聖光羽弾(セイクリッドフェザー)!!!」


 俺は目の前のふざけた豚鬼(オーク)に向かって聖光魔法を打ち出す。


聖光羽弾(セイクリッドフェザー)


 天使化豚鬼(オーク)も同じように聖光魔法を放つ。


 ただでさえ翼の数が違うのだ。当然放たれる光の羽の数も桁違いに多い。

 俺の放った光の羽は悉く撃墜され、辺り一面は降り注ぐ光の羽の豪雨が隊員や俺を包み込む。

 そこで俺の意識は途絶え、最高最強だと思われていた俺の人生はそこで終わりを告げた。







◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 あれから3年の月日が流れた。


 俺は目の前の墓に黙祷をささげる。

 小さな小高い丘にぽつんと立っている小さな墓は辺り一面の色とりどりの花に囲まれていた。

 この墓の下にはコトが眠っている。


「パパ~! はい、お花~!」


 俺が祈りを捧げ終わったのを見計らってか、娘が摘んできた花を差し出して来た。


「ありがとう、コト。コトお姉ちゃんも喜んでいるよ」


 そう言いながら俺は娘のコトの頭を撫でてあげる。

 コトは嬉しそうにしてはしゃいでいた。


 この子はあの日全滅したと思われる豚鬼(オーク)の巣の中で見つかった人間の女の子だ。

 但しその頭には人間の耳の他に豚の耳も付いていた。そしてお尻には豚の尻尾。

 見つかった場所はあの凌辱部屋で、人間の女性の傍で大声で泣いていた。

 状況的に見ても豚鬼(オーク)に凌辱され妊娠した女性が生んだのだろう。

 だが豚鬼(オーク)は雄しか生まれない。だから人間の女性を攫い身籠らせるのだ。


 俺と同様に何かの変異なのだろうか。俺には分からなかったが、このまま放って置くことは出来なかった。

 生まれ変わりという訳ではないが、死んでしまったコトの分まで幸せになってもらう意味を込めて名前を俺はコトと付けてこの子を育てることにした。


「毎日墓参りとは・・・少しばかりコト殿に妬けるな」


「あ! ママ~!」


 コトは近づいてきたリィンに抱き付く。

 あの日帰る場所を失ったリィンは俺に付いてくることにした。

 エルフと言う種族に絶望したらしい。

 そしてコトを育てると言う俺を心配して一緒に育てようと言ってくれたのだ。


「コトは毎日元気だな」


「うん、コト元気~!!」


「それにしてもこうも成長が早いとなると、やはり豚鬼(オーク)の血が入っているのが実感するな」


 コトはたった3年で人間の子供の8歳くらいまで成長している。

 確かに人間にしてはあり得ない成長速度だ。

 あっという間に大人になって「お父さん加齢臭臭い」なんて言ったりするんだろうか。

 ・・・今から想像して凹んでしまうな。


「わざわざコトの墓まで来てどうしたんだ」


「ああ、また依頼が来た。今度はシデレン帝国の北にある小さなジャニス村からだ。既に何人か犠牲が出てるらしい」


「分かった。早速向かおう」


 俺は今この天使化の力を使って人間を守っている。

 各地の救助の要請を受けその地までひとっ飛びし、人間に襲い掛かる魔物を倒している。


「・・・なぁ、何も豚鬼(オーク)のお前が人間の為にそこまでする必要は無いんじゃないのか?」


「前にも言っただろ。これはコトの為だよ」


 そう、俺はコトが将来人間に興味を持ち人間と暮らしていきたいとなった時の為に人間を守っているのだ。

 豚鬼(オーク)である俺が人間を守ることによって、半人半獣であるコトを受け入れやすくなるのではないかと思って。

 しかもそれが天使化した豚鬼(オーク)であればそれだけ効果が絶大ではないかと。


「そうか、コトの為にか」


「ああ、このこは死んでしまったコトの分まで幸せになってもらいたいからな」


「パパ~、これからお仕事?」


「ああ、パパはちょこっとお仕事に行くから大人しくママと一緒に待ってな」


「うん!!」


 バサッッ!!


 俺は背中に12枚の翼を生やし空高く飛び上がりシデレン帝国にあるジャニス村へと飛翔する。




 俺の名は(ジン)

 豚鬼(オーク)に転生し人間として生きることを選んだちょっと背中に天使の翼が生えた変わった豚鬼(オーク)だ。








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― 新着の感想 ―
[一言] 文章がまとまっていて、凄く感動する作品でした。 行為の時の凶暴さの裏側にある優しさとか、 私自身見習いたいものです。 こんなオークになりたい!
[良い点] 悪で最低に俗な存在であるオークが、実は天使(化の力を持っていた)だった。 読み進めているうちに、どんどんと爽快になっていくところが良いですね。 しかも単に爽快だけじゃなく、裏に影を秘め…
[一言] 俺が胃乗りを捧げ⇒祈りでは?
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