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灰色に満たされて
──道端で倒れていた、儚くなった青年の話が、ある街の一角で一時、話題になった。
彼らの友人は何もおかしな事は無かったと言うが、ある目撃情報によると、その青年は麻薬に手を出していたのだろうとも、何かに熱中し、何日もの間、大学の講義も無断で休み、飲まず食わずで『それ』に没頭していたともささやかれている。
警察が事件と事故の両面で調査中であるが、その事実関係は明らかにされていない。
葬式では「正月に会おうと言っていたのに何故…」と呟く家族達の泣き声が痛ましかった。
棺桶の中に顕花の他、彼が生前好んでいたという空の写真集や、休んでいる間に移していた講義のノートを入れる友人も見られた。
なお、青年を発見した人の証言では、瞳を閉ざされたその肌は血の気を失い、排気で薄汚れた霜に覆われて、灰色になっていたという。