6/9
嘘。
「……嘘をついたのは、まずかったかもな」
静かに言った川嶋に、河野は沈んだ表情で頷いた。
その時、須賀が予想したとおり、全て調べた、というのは大嘘だった。
でも、と、うつむいたまま続きを口にする。
「灰色って、少なくとも日本じゃ、気分を明るくさせるような、前向きな色じゃないでしょう? そうすると、調べていった場合、連想するのは嫌な気持ちばかりになる気がしたんだ」
「考えすぎだ」
「それなら、いいんだけど──────でも須賀君、ここ数日、学校来てないよ?」
「……体でも壊したんだろう。根詰めていたからな」
「そ、ぅ。うん、そう、だよね──────」
講義でいつもは誰かで埋まっている席を見て、不安げに呟いた。
その空席の隣で、普段なら一番騒いでいる邑井は、二つノートを並べて、黙って講義を受けていた。