九柳侍郎と申します。
私は美しいものが好きなのです。
とりわけ人間が好きなのです。
人体ほど美しい形は他にはいないと思いませんか?
髪の毛も、肌も、眼も、鼻も、唇も、指先も、足の裏も、内臓も……頭の先から爪先に至るその何もかもが私を魅了してやまないのです。
何です、……優しさ? 善良さ? 慎ましさ?
それはもしや感情と言うもののことですか?
くだらないことをおっしゃる方ですね。
私が言っているのは人体の持つ、その造形美。
心だの、個性だの、そんな目に見えない不確かなものの何が美しいのですか? 何処が面白いのですか?
そんなもの、集めたところで何の役に立つのです? 眺めて楽しめますか?
私が欲しいのは人体のパーツなのです。
いえいえ、全部でなくても構いません。
誰しも身体の全てにおいて完璧なパーツをお持ちの方はおられないでしょう?
欲しいのは、その人間のもっとも美しい部位なのです。
髪の毛でも、肌でも、眼でも、唇でも、指先でも、足の裏でも……もしくは、内臓でも構いません。
ただ、内臓の場合は超一級品に限りますよ。
他の部位と違って、保存が難しいものですから。
はい? お前は見返りに何をくれるのかですって? 何とも強欲な……。
いえいえ、失礼……ただでそれらを愛でようとする私の方が欲深かったですね。
分かりました。
貴方のもっとも美しい部分、頂けるのでしたら望みは何なりと。
富ですか? 名誉ですか? それとも、揺るぎない地位が欲しいのですか?
えっ……おやおや、強欲どころか何て無欲なお人だ。
そんな簡単な希望でしたら、いくらでも叶えて差し上げますよ。
嘘を吐くなですって?
嘘なんて吐いていませんよ。
私の手に掛かれば簡単なことです。
だって、私は……。