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生命魔法使いに転生したので、聖者の皮を被って気ままに生きようと思います  作者: aramakid
プロローグ

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第11話 聖都ルミナエル

 季節はいつの間にか初夏になっていた。


 丘を登りきると、眼下に広大な湖が姿を表す。

 その水面は振り注ぐ日差しを受け止めキラキラと輝いている。

 湖畔には、高い城壁に守られた真っ白な街並みが広がっている。


 教会の総本山――聖都ルミナエルだ。


 街へと続く街道を下っていくと、やがて聖都の正門へとたどり着いた。


 目の前にそびえる巨大な門を見上げる。

 その門には、天使や聖人を表した見事な彫刻がびっしりと刻まれていた。


 真っ白なマントを羽織った門番たちが、槍を手に門の両脇に立っている。

 その姿は厳めしいが、巨大な門扉は大きく開け放たれていた。

 聖都は、訪れる者を拒む様子はない。


 クリスは門を通り過ぎると馬を寄せて、ロイ達を振り返った。


「ここまでの護衛ご苦労だった。依頼は完了だ」


 そう言って、ロイに木札を差し出した。


「また、機会があれば声をかけてください」


 ロイがそう言うと、クリスは小さくうなずいた。


「ノアも元気でな」


「はい。皆さんもお元気で」


 僕はぺこりと頭を下げた。

 手を振るアガサとジェイクに見送られながら、クリスは馬を進める。

 僕たちはそのまま、聖都の目抜き通りへと入っていった。


 馬の背に揺られながら街並みを眺める。

 通りの喧騒――行商の呼び声、子どもたちの笑い声、鐘の音が入り混じり、聖都は思ったよりずっと活気に満ちていることに気づいた。


 いくつか角を曲がると、白い壁の建物の向こうに、重厚な石造りの神殿が見えてきた。


「私の神殿だ。しばらくはここに滞在する」


 背後からクリスの声が届く。

 僕は馬の背で少し身を乗り出し、神殿を観察する。


 大きくて古い建物だ。神殿の前には手入れの行き届いた庭が広がり、静かな祈りの気配が漂っている。

 神官たちが、庭や参道を静かに行き交ってい、それぞれの務めを淡々と果たしている。

 こうした光景ひとつで、神殿の秩序や規律の高さがわかる。訪れる信者への配慮も、隅々まで行き届いているようだった。


 クリスの古巣にしては、管理者はずいぶん立派な聖職者らしい。

 この手の人物は、欲で動く者よりも扱いが面倒だ。だが、やりようはある。


 ——理想像を演じてやればよい。


 そうして一度懐に入り込んでしまえば、あとはどうとでもなる。


 神殿の、裏手にまわり馬を降りると、クリスは迷わず裏口へ向かった。

 僕も黙ってその後を追う。


 やがて扉の前に立つと、クリスが軽くノックする。


「はい、どうぞ」


 中から穏やかな声が返ってきた。


「失礼します」


 クリス続いて、僕もそっと部屋に入る。


 部屋は質素だが、すっきりと整えられていた。

 木の床はきちんと磨かれ、装飾は最小限。

 棚には必要な書物がきちんと並び、机の上には羊皮紙とインク壺が置かれているだけだった。


 書き物をしていた司祭が手を止めて、クリスに目を向けると、柔らかく微笑んだ。


「クリスか。よくぞ無事に帰ってきた」


 その表情は穏やかで、純粋にクリスの無事を喜んでいるように見える。


「はい、聖務を終え戻ってまいりました」


 クリスが、僕の背中を軽く押す。


「ノアです。よろしくお願いします」


 きちんと頭を下げ、司祭に挨拶する。

 顔を少し上げて、確実に目を合わせた。


「こちらこそよろしく。よく挨拶できたな」


 司祭は少し微笑みを深め、うなずいた。


 僕はその瞬間、そっと鑑定する。


【名 前】エドワード

【位 階】Ⅲ

【魔 力】B

【スキル】神聖魔法

【魔 法】ヒール サンクチュアリ ブレス


 ――神聖魔法

 光魔法だけじゃないのか。なら僕の生命魔法も異端扱いはされないか?


「ノアはこの歳でヒールを使えます」


 クリスが続ける。


「それは素晴らしい。神の加護を受けている証だ」


 その言葉には打算が感じられない。

 ――やはり、クリスとは違うタイプだな。


「司教にお目通りが叶うまで、ここに置かせてください」


 クリスの言葉に、司祭は静かにうなずいた。


「では、見習いとしてここでの日課に慣れてもらおうか」


 司祭は机の脇に置かれた小さなベルを鳴らした。


 すぐに長身の男がやってきた。

 灰色の法衣は、クリスや司祭のそれとは少し異なっていた。


「この子はノアだ。しばらく預かる」


 司祭が僕の方を見て言った。


「見習いとして、面倒を見てやってくれ」


 ヨハンはその言葉にうなずき、穏やかな笑みを浮かべた。


「まずは、君の部屋に案内しよう」


 僕は軽くうなずき、廊下を歩く。足音が石畳に響く。

 ヨハンは無言で隣を歩き、廊下の先で扉を指さした。 


「今空いているのは、この部屋だ」


 扉を開けると、二段ベッドが二つ並んだ、簡素な部屋だった。

 足元に蓋のついた木箱が置いてある。

 

「彼が君の同室だ」


 ベッドに腰かけていた少年が、顔を上げる。

 僕よりすこし年上だ。

 目が合うと、少年は軽く会釈した。


 僕も軽く頭を下げる。


「はじめまして、ノアです」


 上目遣いで微笑む。


「フィリップだよ。よろしくね」


 幼い子供に語りかけるような口調。

 自分より年下の見習いができた喜びが滲んでいる。

 ——ならば、その気持ちをくすぐる。


「いろいろわからないことが多いと思うので、頼りにさせてください」 


 すこし、弱々しく言う

 

「もちろん。困ったことがあったら言ってね」

  

 フィリップは満足そうに微笑み返した。


「よし、自己紹介は済んだな」


「荷物はそこの木箱に入れるといい」


 ヨハンは手早く説明をする。


「それから、ここでの一日の流れだ」


「朝は祈りで始まる。掃除や修道院内の手伝い、その後に昼食。午後も作業や学びをして、夕方に再び祈り。夜は就寝だ」


「それぞれ、合図の鐘がなるがから聞き逃さないように。なにか困ったらフィリップに聞きなさい」


 それだけ言うと、ヨハンは部屋を出ていった。


 ここにどれくらい滞在することになるのかはわからない。

 まずは読み書きを覚えよう。

 それから、教義を調べる。


 幸い、日課をこなせば自然と学べそうだ。

 

 焦らずに、この環境を最大限に活用する。


 ――そう心の中で計画を立てた。


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