戦闘訓練前の秘密会議
正直、既に心が折れそうだが、俺は正式に隊員となったのだ。それに、同期が隣にいるのに震えている姿を晒すのが、ちょっと嫌だ。
なので、目の前の男のから目を話さない。
するとイカツイ顔をしていた5人全員が少し笑った。
こちらが驚いて固まっていたら、イカツイ返事をくれやがった男が「すまない、戦闘訓練を始める前に精神力を試させてもらった。
正直、我々の軽い威圧に耐えられない程度では、実戦用の訓練にも入れない。実戦ではまず使い物にならないし、実戦で精神力を成長させてやれるほどの余裕がこの大隊にはないからな。場合によっては、後衛部隊も検討してもらうが、君たち2人は合格だ。
私はこの第3分隊隊長、十元曹長だ、よろしく。」
俺はビビらせてくれやがった借りに、訓練で一発入れてやろうと心に誓う。
宇田は、いつものような元気さで「よろしくお願いします」と敬礼する。
俺も続いて敬礼した。
隊長の反対側にいた、165cm黒髪で童顔の男性がフランクに声を掛けてくる。
実施部隊では小柄な方だ。
「黒田軍曹です。
必要な事ではあったが、少し意地悪な試験を超えてもらって嬉しい。次は実際に武器を使用した我々の誰かと戦闘だ。
専用ロッカーと武器庫を案内するからついて来て。」
専用ロッカーと武器庫は本部基地に縦に隣接している。
敷地外からの視覚遮断がされており、さらに許可された隊員にしか入室できないよう結界が張ってある。
黒田軍曹から、「既に君たちの情報は登録してあるから、結界は素通りできるよ。私は武器庫で待つから急ぎで訓練着に着替えてきてね。」
その発言に違わず、結界に素通りしロッカー室に入る。
着替えながら俺は宇田に「あの5人についてどう思う?」という質問する。
宇田は「間違いなく強い。俺たちが2人で誰か一人と戦ったとしても、一本取れるか分からない。」と戦闘において珍しく、自信のない返事をする。
教官相手にもダメージを入れたことがある、宇田が言うのだからその判断は正しいと考えた方がいいだろう。
宇田はさらにと、「大佐と中尉はさらに強い、多分一歩も動けず、息の根が止まる。
とりあえず、あの5人全員の目には、揺らぎのない意思を感じた。力の不安定なところをつくのは間違いなく無理。やるなら、防御を捨てての一点突破。それで、一発爪の先が触れる程度かもな」
実戦用の軍服と訓練用着の両方には、差はあるが印が施され、チャージ式による常時防御が発揮されるが、防御を捨てての攻撃は、相当の覚悟がいるし、絶対死ぬほど痛いだろう。
「なら、相応の覚悟がいるな」そう言った俺に宇田はだな、行こうと言うと先に武器庫に入る。
俺も息を吐き、覚悟を決める。揺らぎのない意思には届かないと思うが、ないよりましだと考えた方が良さそうだ。
宇田に続き俺も武器庫に入る。
武器庫に入ると黒田軍曹に、遅いと小言を言われたが、何をしてたかは想像できるからこれ以上は言わないけどねと直ぐに許してくれた。
俺と宇田はすみませんと軽く謝罪し、武器を選ぶ。
俺は直ぐに刃物が並ぶフロアへ行く。
ただの剣や槍だけでなくハルバートなんて物もあった。種類は豊富なようだ。
今回の相手は隙なのどなく、俺たちががわざと隙を作って誘ったとしても、より大きな隙など作って攻撃はしてこないだろう。
なら、使い慣れている片刃の洋剣メッサーを手に取る。
訓練生時代から選んでいたが、理由は武器の特性ではない。ただ手に馴染んだそれだけだ。
訓練所で色々試したが、やはりこれが1番馴染む。
鞘の状態も確認し、帯刀する。ついでに手甲もはめる。防具の類は、相当のサイズ違いがなければ、自動調整される。
黒田軍曹の元へ戻ると宇田はまだ、選び終わっていなかった。
180cmある俺が近くで見てしまうと見下すような気がするため、少し見た後直ぐに、ほかの武器を眺める。
その視線を黒田軍曹は感じ取ったのか、質問してくる。
「私の体格だと実施部隊は難しいと思うかい?」
体格は重要だ。宇田の巨体を超える魔獣も珍しくない。筋力差だけでみたらやはり、戦闘において体格差は無視できない。
だが、「黒田軍曹は確実につい良いと考えています。我々と比較すべきでないと考えるほどに。」
黒田軍曹はふふ、と笑った。
好感度が上がったようだ。ありがとう宇田、お前の判断はおそらく正しいよ。
黒田軍曹と軽く話をしている間に宇田が帰ってきた。
俺のとは二回りほどサイズの大きい手甲と足甲を付けて。




