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学校一の美少女はすでに俺が攻略済み!  作者: 宵月しらせ


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第21話 お誘い

 教室に入ると、クリスマスパーティーの話が聞こえてきた。

 一軍のグループからで、やはりそっちの人たちは興味があるらしい。

 それは別にいいのだが、気になるのは、その話をしているのが彩紗のグループだという点だ。


「ねぇ、彩紗も行こうよ〜。去年はインフルで申込期間の間ずっと休んでたでしょ? だから今年こそ。ね?」


 藤巻さんが彩紗を誘っている。


「ごめん、クリスマスは毎年家族で過ごすことになってるんだ」


「あんた、家族大好きだねぇ。まぁそれはいいことだけど」


 彩紗は誘いを断る時、よく「家族と出かける」という理由を使う。本当に家族と出かけることもあるが、俺と一緒にいる時も多い。

 その辺の事情を知らない人から見れば、彩紗は驚くほどの家族好きに思えるだろう。


「でもクリスマスパーティーは夕方の二時間だけだよ。それくらいならなんとか参加できない?」


「う〜ん……まぁ、行く時間がないわけじゃないけど」


「あたしは去年行ったけど、すごい楽しかったよ! 来年はたぶん参加できない、っていうか三年生は基本行かないから今年がラストチャンスだよ。行っとかないともったいないって」


「でも、異性同伴でしょ? 一緒に行ってくれる人なんていないし」


 彩紗はそう言ってやんわり断ろうとしている。

 ならしかたない――となれば良かったのだから……。


「な、オレと行かない?」


 と、一軍男子の一人が名乗り出た。

 この前モールで彩紗を口説こうとしていたやつ。有賀航也だ。


「え、有賀くんと?」


「オレも去年行ったけど、すごいおもしろいパーティーだったぜ。その時の彼女とは別れてて、今年は一緒に行く相手がいなくて半分あきらめてたんだけど、井納が空いてるならちょうどいいからさ」


「え〜、でもこれってカップル限定でしょ? 有賀くんは友達だけど、異性としては見れないって言うか、そういうんじゃないんだよね」


「異性同伴ってだけでカップル限定とは書いてないって。そんな深く考えないで、ただの遊びと思って気軽に行こうぜ」


「でも一緒に行ったらそういう風に見られるんでしょ?」


「まぁそれでもいいじゃん。この前も行ったけど、オレ井納のこと割とガチで狙ってるから」


「数十秒前にも言ったけど、有賀くんはそういう対象として意識できないんだよね」


「そう言ってても、案外見方が変わったりするかもしれないじゃん? いきなり付き合ってくれとか言わないから、とりあえずクリパにお試しついでに一緒に行かない?」


「行かない」


「え〜、そう言わずにさぁ」


 彩紗が断っているのに、有賀はあきらめずに食い下がってくる。

 軽い感じで誘い、断られても不愉快さを態度に出さない辺りは手慣れているなぁ、という印象。

 とはいえ、さすがにしつこい。

 彩紗も途中から面倒くさそう。

 

 助けてあげられたらいいんだけど、俺が割って入ると余計に面倒なことになる。

 一軍二軍関係なく、クラスメイトたちからすれば、俺は部外者だ。

 割って入ると変な空気になる。それは彩紗が最も望まないことだ。


 同じグループの誰かが軽くまとまてくれると一番助かるのだが――そう思っていると、藤巻さんが有賀の頭をぽんと叩いた。

 

「断られたら潔くあきらめなさい。そういうところだよ」


「ちぇっ」


 有賀は軽く舌打ちし、それでこの話は終わった……かに見えたのだが――。


★★★


「はぁ……」


 いつもの俺たちの部屋で、彩紗は盛大にため息を吐いた。


「何かあった? と訊くまでもないか。有賀だな?」


「そう。積極的過ぎてちょっと扱いに困ってる」

 

 ポスターが貼り出され、最初にクリパの話が出たのが月曜日のこと。

 今は木曜日。

 その間、有賀は毎日彩紗にアプローチをかけてきている。


 彩紗はその度になんとか躱しているが、有賀はその場だけは引いてもすぐに次の機会を見つけて、また誘ってくる。

 とんでもないしつこさ、粘り強さだ。


「締切は明日だから、それさえ乗り切れば終わりだろ?」


「そう……なんだけど、それが問題で」


「どんな?」


「藤巻ちゃんとかがさ、だんだん有賀くん寄りになっていってるの。あんだけ誘ってくれてるんだから、一緒に行くくらいいいじゃん、って」


「この前は彩紗の味方だったのに」


「このままだと私だけでなく有賀くんまでいけなくなっちゃう。それはかわいそうだから、一緒に行ってやれ、みたいな感じ」


「他の人たちは?」


「藤巻ちゃんほど露骨じゃないけど、有賀くん寄りかなぁ。私がちゃんとした理由なく友達の誘いを断ってるように見えるみたい。あ〜、時間があるとか言わなきゃよかった。その日は授業が終わったら即帰宅しなきゃいけない、って言っておけばよかったのに〜!」


 彩紗はソファーの上で足をバタバタさせるが、それで何とかできるアイディアが浮かぶことはなかった。


「もしこのまま断って有賀も行けなくなると、グループ内での彩紗の立場は悪くなる?」


「まぁ少しはそうなるだろうね。すぐ冬休みだし、年が明けたらクリスマスのとこなんてみんな忘れてると思うから気にしなくていいと思うけど」


 とはいえ、後にしこりが残ることはあり得る。

 彩紗は中学時代に人間関係でかなり苦労をして、その結果不登校になった過去がある。

 マイナスからスタートしたが、高校では一軍に属し、その中でもさらに上の方の地位にいる。


 一度ドロップアウトした人間がまっとうな道に戻るのは大変だ。彩紗も相応に苦労してきた。

 俺は一歩離れたところからではあるが、それを見てきた。


 ようやく手に入れたその交友関係を、たががクリスマスの行事程度で傷つけていいのだろうか?

 いいとは思えない。

 彩紗の幸せを第一に思う者として、ここは少し心に余裕を持って行動するべきところではないだろうか。


「行ったら、クリパ」


「…………え?」


 俺の提案に、彩紗は目をパチクリとさせた。


「話の流れ的に、理希くんと行くって意味じゃないよね?」


「違う。有賀と行ってきたらって意味」


「そんなことできないよ。浮気みたいじゃん、そんなの」


「いつものグループの他のメンバーたちも行くんだろ? 有賀とセットで申し込むとはいえ、実質的にはグループで遊びに行くのと変わらない、そうだろ?」


「……たぶん」


「ならいいよ。ただの友達付き合い。浮気なんて思わないから行っておいで。友達と雰囲気悪くなるのはイヤだろ?」


「…………ありがと。でも、あんまり寛容なのは、それはそれで傷つくんだけど? 私は理希くんを独占した良し、されたいのよ?」


「じゃあ、クリパの二次会には絶対に参加するな。終わったらすぐにここに来い。そっちに行って遅れた分、二十五日はずっと俺の傍にいろ……こんなんでどうだ?」


「うん、それならいいよ。じゃあ、お許しをもらえたってことで、さくっと行ってくるよ」


 そういうことに決まり、彩紗は有賀の誘いに乗ることを決めたのだが……。

 後から振り返れば、この判断はひどいは間違いだった。

 何もしなければ、あの騒動は起きなかったのに。


 いや、悪かったのは俺の判断ではない。

 有賀のチャラさだ。


 まさか、彩紗をあれだけ熱心に誘いつつも、下級生の女子を保険としてキープしていたなんて、誰が想像できただろう?

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