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学校一の美少女はすでに俺が攻略済み!  作者: 宵月しらせ


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第12話 計画

「彩紗がダイエットをするなら、俺も本気で協力する」


 そう言うと、彩紗は目を輝かせた。


「本当に⁉」


「本当だよ。どうして疑うんだ?」


「ダイエットについていろいろ調べようと思って友達に訊いたら、その子が彼氏から『少しくらいぽっちゃりしてる方がかわいい』って言われたって話を聞かされたから。その子はそれで彼氏とケンカになったらしくて」


「そんなことでケンカか」


「たしかにそんなこと。でも気持ちはわかるよ。やる気になってるのに水を差されるのはムカつくもん」


 言われてみれば、やる気が出ている時に止めろって言われるのは腹が立つな。


「で、友達に訊いたって話だけど、その結果が半身浴だったんだな?」


「うん。美容にも良いから一石二鳥だって言われて……まさか意味がなかったとは」


 まぁゆっくり風呂に入ることは美容にいいだろうから、全否定するようなことでもないのだろうけど。


「あ、体育の時にがんばって走ってたのも?」


「見てたの? まぁ、うん、そう。なるべく運動で消費しようと思って。今日の体育と半身浴で、一キロくらい落とせると思ったのに」


 それは期待しすぎだろう。

 たかが一時間の体育の時間にがんばって運動したところで、ダイエット効果はたかがしれている。

 もし人類が、その程度の運動で一キロも痩せてしまう燃費の悪い動物なら、はるか大昔に餓死で絶滅してしまっていたはずだ。

 そう、痩せないのは人間が生物として優秀な証拠だ。恥じることではない。


「具体的に何キロ増えたの?」


「…………そんなデリカシーのないこと訊く?」


「あ、ごめん」


 さすがにこれは訊いてはいけないことだったな。


「二キロ……と少し」


「教えてくれるのか」


 というか、二キロで自己ベスト大幅更新ってことは、もともと最高値付近をうろうろしてたな?

 

「できるだけ早く元の体重に戻したい。これから冬で体重が増えやすいから、この機会に三キロは落としておきたい。来年は受験で座って勉強する時間が増えて体重が増えそうだから、いっそ四キロ……五キロは落としておきたい。そうすれば、スリムな体型のまま大学生活をスタートできる――」


「待て待て、目標が大きすぎる。まずは元の体重に戻すところを目標にしよう。それで余力があれば、さらに減らすってことにしよう。そうじゃないと、二キロ落として今まで通りになったのに、半分も来てないって絶望することになるぞ」


「た、たしかに」


「勉強だって、E判定からA判定まで一気にレベルアップするのはムリだろ? D判定、C判定とコツコツ上げていく方がモチベーションを保てる」


「うん、そうだね……って、誰がE判定の体型だって? そこまで太ってないもん!」


「いや、そういう意味じゃなくて……ごめん、今のは言い方が悪かった」


 目標が決まったところで、スマホを取り出し、ダイエットについていろいろ調べる。

 彩紗の一軍友達はたしかにスリムな人が多いが、それよりもネットでデータに基づいた方法論を探す方がいいはずだ。


「検索ワードは……【ダイエット 最速 簡単】」


「おい、いきなりそういう路線に行くな」


 まじめに探そうとする俺の横で、彩紗がヤバい検索ワードを入力し始めた。


「なんで? なるべく楽に早く痩せたいじゃん」


「そういう気持ちに付け込んだとんでも理論が出て来るぞ」


「わかんないよ? 最新の科学に基づいた最強のダイエット方法が開発されてて、誰でも楽に理想に体型に………………水抜き? 断食? なんか見るだけで大変そう」


「良かったな、この食品を食べるだけでガンガン体重が落ちるなんて物が出て来なくて」


「そういうのを期待してたのに」


「冷静になってくれ。食べるだけでどんどん痩せるって、それ毒だぞ?」


「……………………言われてみれば」


 言わなくてもわかってほしかった。

 追い詰められると人間はこうも弱く、安易に見える茨の道に自ら突き進んでしまうものなのか。


 ともあれ、楽に流されず、コツコツとやる覚悟を持ってくれたようなので、今度こそ本格的に方法を探す。

 と言っても、やはりというか、最終的にたどり着いた痩せる方法論は非常に単純だった。

 

 ――食べた以上に消費しろ。消費できる以上は食うな。

 

 収入以上に金を使えば貯金が減り、収入未満に消費を抑えれば貯金が増える。それと同じ理屈だ。


「っていうか、運動って思ったほど消費しないんだな。基本は食べ過ぎないことがほぼすべて……か」


「激しい運動しなきゃダメって思ってたけど、しなくてもなんとかなる。すればなおよし、って感じなら案外気楽だね」


 彩紗が「これなら楽勝」と胸を張る。

 たんじゅ……素直だな。


「ではそれを踏まえて、お菓子を食べず、毎日少しずつ運動して……こんな感じの計画を立ててみた」


 彩紗は紙に、毎日食べていたお菓子を全カットした場合のカロリーと、そこそこの負荷の運動で消費できるカロリーを計算し、計画票を作った。

 まぁ見た目はちゃんとしている。実行できるかは別だが。


「問題はこれを実行できるかだね」


 彩紗もそのことに疑問を持っていたらしい。

 まぁそうだよな。

 計画通りに行動できる人なら、そもそも自己最高体重を大幅に更新することもないはずだから……。


「お、いい情報が出て来たよ」


 彩紗はスマホをスクロールしながら、にやっと悪い笑みを浮かべた。


「ダイエットで一番ツラいのは、空腹感ではなく、孤独。自分が耐えている時に、それを共有できる人がいないこと。一緒にダイエットをする仲間がいると精神的に楽になります。……だって」


 なるほど。たしかにそうだろう。

 自分ががんばってる横に、遊んでる人がいたらモチベーションダダ下がりするもんな。

 ……って、彩紗が言いたいのは、まさか?


「一軍の女友達と一緒にやったら?」


「みんなつい最近ダイエット期間を終えたばかりらしいんだよね。ってことで、理希くん、一緒にダイエットしよ。理希くんは私より体が大きいから、三キロ目標に落としてね」


 やっぱりそう来たか。


「俺は別に体重が大きく増えたわけじゃないんだけど」


「腹筋バキバキの理希くん見たいなぁ! そんな理希くん見たら、もっともっと、も~っと惚れなおしちゃう」


「…………わかりました、やりますよ。三キロでも四キロでも落としてやりましょう」


 こんな簡単に説得されてしまうとは……我ながら、彩紗のことが好きすぎるだろ。

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