8/42
次元転送(その8)
「ところで、ぱいせんの旦那はどこにいるのかな。鉢合わせはまずい」
ミツオはぱいせんに聞く。ぱいせんは猫の仕草の練習なのか、前足でしきりに顔をこすっている。普段やり慣れていないせいか、人が両手で顔を洗い流す仕草になっている。猫は片手づつなのではと思いながらもそっとしておく。
「空港の奥にいる機体の操縦席にいるから大丈夫」
「宇宙船も操縦できるのか」
驚くミツオに、当然のようにぱいせんが言う。
「言わなかったかしら。うちの旦那のハイヤーは宇宙船専門の運転手よ。あの機体も私が購入いたしました」「ぱいせんって、すごくお金持ちなのですね」
ミツオはあらためて度肝を抜かれる。
ミツオ達の乗るプライベートジェットは垂直に上昇したのち機首を徐々に上げ、成層圏を離脱する。
宇宙に広がる漆黒の闇に一同驚嘆の声を上げる。
前方に巨大なリングが見えてくる。あのリングを抜けると、一瞬で惑星スルメに到着する。
次元転送がない時には、人工冬眠を用いて片道50年の時間がかかった話だ。




