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水無瀬村-(6)

閲覧注意です。

直接的な表現を書き換えました。

 私は山道を駆け上がります。すでに息があがって酸欠気味でしたが気にしません。…早く、急いで行かないと。

「はぁ…はぁ……」山道はあまり道幅がないため、走るたびに枝や草が私の頬を掠ってしまい、小さな傷を作っていきます。また目印がなく同じような道が続いているため、まるで山道に閉じ込められて永遠に走らされているように感じます。ですが、ようやく視線の先に青い空、おそらく終着点と思われる場所が映りました。私は一層、走る脚に力を込めます。そして、その場所を辿り着きました。


――――――キリトリ――――――


 辺りは薄暗く、空は今にも雨が降りそうなほど黒く、ぶ厚い雲に支配されていました。

 目の前では白装束を身に纏い、烏帽子を被った人物が社殿の前に跪いて、何かを唱えています。それは独特な抑揚、中性的な声で私も知っているはずの言葉なのに、耳に届くその音は意味を私はまったく理解する事が出来ませんでした。なのに言葉は幾度となく繰り返されて周辺の空間に響いては消えていきます。ただ漠然と社殿の前で唱えている事から、白装束の人物が唱えるそれは祝詞ではないかと予想はできました。だからと言って、打開策が見つかるわけでもなく、状況は現在進行形で不明のままです。


 私が立っているこの場所は水無瀬村の神社と酷似しています。ですが、社殿の状態が私の記憶するものとは違いました。私の知っている社殿はボロボロで崩れそうだと思うようなものでしたが、目の前のそれは崩れそうには見えません。そう…まるで建築したばかりと言ってしまっても過言ではない程、綺麗な状態の社殿が存在していました。

 ここが本当に同じ場所であれば、他にもおかしい事があります。私は社殿の裏の小道を駆け上がって、その先に辿り着いたはずです。それなのにどうしてまた神社の中に立っているのでしょう?それにヨルの姿がどこにも見当たりません。彼は何処かにいるのでしょうか。


 ヨルを探すために、私は声を出そうとしますが思うように声帯を震わせる事が出来ませんでした。また、手足は何かに縛り付けられているのか、自由に動かせる気配はありません。私の体は小刻みに震えて、自分の意思とは関係なくこの場所に立っているようでした。


 やがて、祝詞は止み、神社に静寂が訪れました。いえ、正確に言うなら私の口から溢れる嗚咽だけが、止まる事なく神社に響いています。

 白装束の人物は立ち上がるとゆっくり私の方を振り向きました。動く事も目を瞑る事も出来ないため、白装束の人物を観察しますが、烏帽子の下にある顔は白い布で覆われていて表情はおろか、性別すら読み取る事ができませんでした。

 その人物が二言三言と言葉を発すると、私は背後から光と熱を感じました。振り向く事は出来ませんでしたが、その正体はすぐにわかりました。背後から松明を持った人達が私を取り囲むように歩いてきます。その人達の装いは明らかに現代ではあまり見かける事のないものでした。まさか私の知らない世界線にでも来てしまったのでしょうか…。遠くの方で誰か呼んだ気がします。一瞬だけ妄想(げんじつとうひ)をしていると、私の口が勝手に「嫌だ…助けて…」と、か細い声を上げていました。


 突然、浮遊感と共に目線が高くなりました。すぐに誰かに持ち上げられたとわかりましたが、それがわかったからと言って何も解決はしません。むしろかなりヤバい気がします。淡々と説明しているせいで伝わっていないかもしれませんが、私は結構混乱した上で動揺しています。どうして私がこんな目に合わないといけないのでしょうか。松明を持った人達に私は強制的に連れて行かれます。社殿の奥に、そして先程私が息を切らして駆け上がった小道に向かっていきます。


 私の口からは「助けて…」と言う言葉と共に嗚咽が溢れ続けていましたが、私を運ぶ人達が歩みを止めてくれる様子はありません。それどころか、雑に運ばれていたため、草や枝が私の顔をまた傷つけていきました。身動きの取れない私にはどうする事も出来ません。せめて枝が目に刺さるのを防ぐために自然と目が閉じられました。

 

 そうしていると、再度の浮遊感と衝撃。カエルが潰れたような声が漏れて、口の中に土の味が広がりました。思わず目を開くと目の前に土があります。どうやら、うつ伏せの体勢で地面に落とされたようです。背後に誰かの気配がすると、鋭い痛みが走ると同時に縛り付けられた手足が解放されました。喜ぶ間もないまま、視界が乱暴に揺れます。私は痛みと恐怖に奥歯をガタガタと震わせました。


 私の手足が縄で縛られて自由が効かなくなりました。今度は縄の先に石が括り付けられています。そうこうしているうちに私は湖に浮かぶ舟に乗せられてしまいます。重苦しく黒い雲を反射した湖はまるで混沌とした大穴のように思えました。その光景がとても恐ろしく、精神を蝕んでいき、私の体に止まる事のない震えを刻んでいきます。

 ……どうやら、もう私は助かりそうにないようです。こんな場所に1人で来てしまったばかりに。浮かぶ舟に揺られながら、後悔が私を包んでいます。

 ヨル、ごめんなさい。もう一緒にいれそうにないです。ヨルの顔が脳裏に浮かびました。


 ゆっくりと沖合に進む舟はやがて、その動きが停めました。私の口から呪文の様に紡がれ続けている命乞いは誰にも意に返される事はなく、また視界が激しく揺れました。浮遊感の後、水飛沫が上がり、心臓がドクンと跳ね上がります。

 やがて水面が頭上を塞いでいくと、冷たい水が全身を締め付けていくように感じました。声は泡となり、何処にも、誰にも、何一つとして届きません。私は必死に手を伸ばしましたが、水はただ暗く、重く沈んでいくばかりでした。次第に視界が滲み、黒い闇に溶ける。

 そして、私は深い湖の底で命を手放しました。

いつも読んでいただきありがとうございます。

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◎続きが気になる。

◎雨とヨルの掛け合いが気になる。


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